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この症状 ひょっとして病気?

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(番外編)このページの記事は、ロハス・メディカルブログ2009年6月23日付掲載の『病的なむくみ こんな病気があります④』(筆者・堀米香奈子専任編集委員)です。久住英二医師の監修は受けておりません。
病的なむくみ こんな病気があります④
 「病気なむくみ」の第4回。以下のようなむくみの症状について、原因疾患を見ていきます。それらの原因疾患は誰もが容易にかかるものとはいえませんが、症状の現れ方は顕著なことが多いようです。

●顔がむくんだように丸く膨らんだ顔になる。筋力が低下して手足が細くなる一方、胴体は太る。疲れやすく、あざや傷が治りにくい。骨粗しょう症や精神障害も。
 ⇒ 【 クッシング症候群 】

●頭・まぶた・腕のむくみや腫れ、場合によって頭痛がする。とくに、肺がんなどの腫瘍を抱えている人。
 ⇒ 【 上大静脈症候群 】

●脚・かかと・手のむくみ、こわばり、だるさ。とくに、子宮がん・乳がん・前立腺がんの手術や放射線治療を受けた人。
 ⇒ 【 リンパ浮腫 】

 それ以外の病的なむくみについての症状チェックはこちらへ。

【クッシング症候群】
《症状》
 顔がむくんだように丸く膨らんだ顔になります。肩や太もも、お尻などの筋力が低下して手足が細くなり、疲れやすくなる一方、胴体は脂肪がついて太ります。皮膚が薄くなってちょっとしたことでも青あざができやすく、傷が治りにくくなります。骨粗しょう症や精神障害も。ニキビが多くなったりすることもあります。骨が薄くなって背骨の圧迫骨折を起こし、身長が低くなったり、背中が痛くなることも。お腹には引き伸ばしたような紫の筋が現れることがあります。高血圧や腎結石、糖尿病のリスクが増え、うつ病や幻覚を含む精神障害が起こることがあります。女性は月経周期が不規則になり、顔の毛や体毛が濃く、頭髪は薄くなります。子どもの場合は成長が遅くなり、身長は低いまま大きくなりません。

《原因》
 人は、腎臓のとなりにある副腎という臓器から、様々な種類の「副腎皮質ホルモン」(ステロイドホルモン)を分泌しています。その中の一つ「コルチゾール」は、炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝を制御し、生体にとって必須のホルモンです。しかし何らかの原因でコルチゾールが過剰に分泌されてしまうと、上記のような症状が出てきます。最も多いケースは、間脳にある下垂体という部分に良性の腫瘍(下垂体腺腫)があるために、そこから副腎皮質刺激ホルモンが過剰に出て、副腎に働き、結果としてコルチゾールが過剰に分泌される場合です。あるいは副腎に腫瘍があって、コルチゾールが過剰に分泌される場合もあります。その他、肺や膵臓、消化管にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが多量に分泌され、副腎に働いてコルチゾールが過剰に分泌される場合もあります。

《対処法》
 心当たりがある場合は、病院で精密検査を受けてください。過剰なホルモンを作っている腫瘍が発見されたなら、それをとることが治療法の第一です。例えば下垂体腺腫の場合は、鼻の穴を通して切除でき、以前に比べ患者さんにとっても負担が軽くなっています。手術でとりきれない場合や、体力的に手術が困難な場合は、注射や内服薬による治療、放射線療法などが行われます。一方、副腎の腫瘍の場合は、体に負担の少ない内視鏡手術が数多く行われています。内視鏡手術に適さないときは、通常の手術(お腹や背中を開く方法)で副腎をとります。体力的に手術が困難な場合などは、コルチゾールを作る副腎の働きをおさえる薬を飲みます。これらの治療法で効果がなかったり、腫瘍がない場合は両方の副腎を摘出しなければなりません。副腎を両方摘出したり部分的に切除した人は、一生ステロイド薬を服用する必要があります。

《参考サイト》
○クッシング症候群の概説 (東大病院 腎臓・内分泌内科)
言葉も平易で、ポイントが見やすく分かりやすくまとまっています。

○クッシング症候群 メルクマニュアル医学百科 家庭版 (万有製薬)
ちょっと難しい部分もありますが、症状や検査についても詳しいです。

【上大静脈症候群】
《症状》
 腕など上半身の各部のむくみ・腫れからはじまり、まぶたや顔面、頭部の全体的なむくみが見られるようになります。数日~数週間で徐々に症状が進み、呼吸困難、チアノーゼ(呼吸機能が低下して血液中の酸素濃度が下がるために皮膚や唇が紫色になること)などの全身症状が出現するようになることもあります。

《原因》
 体の上半身を流れる血液は、各臓器で使われたあと静脈血となって上大静脈に集まり、心臓へ帰ってきます。この上大静脈が何らかの原因で狭まるか完全に閉じると、上半身に静脈血がたまり、むくみを生じます。このような状態を総称して上大静脈症候群といいます。原因には、リンパ腫や肺がんなどの腫瘍による圧迫、その他の疾患、ホルモン剤などのクスリ、先天的な抗凝固因子の欠損等があります。特に日本では肺がんの増加とともに増えていると見られ、肺がんの2~3%にこの症状が現れるといわれています。

《対処法》
 まずはX線検査等を行い、原因となっている疾患を明らかにして、その治療を優先します。たとえば、良性腫瘍であれば手術による摘出(ただし、肺がんが原因で上大静脈症候群が起こった場合には手術ができない例がほとんどです)、悪性リンパ腫ならば放射線治療を行うことになります。切除不能な場合は、抗がん剤や放射線療法を考慮します。血栓が原因の場合は、血栓溶解剤で治療します。血栓が完全に溶けなくても側副路がかなり早い時期に生じるため、顔のむくみなどは比較的早期に改善します。

《参考サイト》
○上大静脈症候群 (gooヘルスケア)
原因等については大まかですが、表現がやさしく読みやすいです。仕組みはよく分かります。

【リンパ浮腫】
こちらをご参照ください。

≪参考サイト≫
リンパ浮腫(メルクマニュアル医学大百科 家庭版)" target="_blank"
・・・世界最大規模の製薬会社メルク社がつくる歴史ある医学辞典の日本語訳ウェブ版(万有製薬提供)。1ページでリンパ浮腫の概要がわかります。

むくみのページ ~リンパ浮腫の治療~" target="_blank"
・・・リンパ循環を専門としている内科医によるサイト。図解が多く、ページも適量で読みやすいです。

リンパ浮腫 (徳島県医師会公式HP)" target="_blank"
・・・医療現場での対応や方針そのものがわかります。

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