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この症状 ひょっとして病気?

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(番外編)このページの記事は、ロハス・メディカルブログ2009年6月16日付掲載の『病的なむくみ こんな病気があります②』(筆者・堀米香奈子専任編集委員)です。久住英二医師の監修は受けておりません。
病的なむくみ こんな病気があります②
 体の特定の疾患によりむくみが引き起こされている場合の2回です。以下について、簡単な解説と参考サイトをご紹介します。

●夕方に足のむくみが強くなる。しばらく続くと尿量が減り、腹水も。胸の上部に圧迫感や痛み、腹部膨満感、食欲不振、吐き気が出ることも。
 ⇒ 「右心不全」? 

●下肢にむくみが出るほか、腹痛、嘔吐、黄疸、手のひらに紅斑、お腹に水がたまる、血が止まりにくい、上半身の血管がクモ形に浮き出る、などの症状
 ⇒ 「肝硬変」?

●眼のまわり・顔・手足などに、押してもなかなか戻らないむくみが出る。無力感、汗が出にくい、低体温、便秘、体重増加などがある。(とくに女性)
 ⇒ 「甲状腺機能低下症」?

 上の症状に心当たりのある方は、以下を参考にしてみてください。

 それ以外の病的なむくみについての症状チェックはこちらへ。

※なお、むくみは、医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれます。

【右心不全】
《症状》
 むくみが特徴です。とくに夕方、足のむくみがひどくなります。胸の上部に圧迫感や痛みを覚え、腹部膨満感、食欲不振、吐き気なども出てきます。しばらく続くと尿量は減り、腹水がたまることもあります。

《原因》
 自分から見て心臓の右側(右心房・右心室)は、全身から戻ってきた血液を受け取り、肺に送り出していますが、このポンプ機能が低下して肺に血液をあまり送り出すことができなくなるのが原因です。その分、全身からの血液受け取りも滞り、血液は重力に従って下半身に停滞してしまいます。すると静脈内の圧が高まって血管から水分が組織に押し出され、むくみや腹水が起こるのです。これが一つの原因。さらに、全身の血流量低下は腎臓への血流量の減少でもあります。これを腎臓ではナトリウムや水分が足りていないと認識し、体外に尿として出さないようにします。それらが体の組織にたまり、むくみとなるのです。また同時に、血液が循環しないために肝臓に血液が停滞して、肝臓が腫れることもあります。右心房と肝静脈が近いために肝静脈が右心房の圧の変化を受けやすいのです。

《対処法》
 心不全の原因疾患として虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症の既往など)、弁膜症、高血圧疾患、心筋疾患(心筋症や心筋の感染である心筋炎)などが多いとされ、それぞれの疾患を治療することが必要になります。もちろん心不全そのものの治療も行われ、薬物治療、なかでも静脈血液の流れを改善するには利尿薬が使われます。心不全を悪くしている因子を取り除くのも大事で、生活習慣・食生活を見直すことが基本となります。塩分・脂肪分・コレステロール摂取の制限、運動の軽減(過度な制限もダメ)、過労をさける、ストレスを減らす、入浴回数制限などが行われます。

《参考サイト》
○心不全 ウェブ・ドクター
右心不全の仕組みから検査・治療までがイラスト入りでまとまっています。

○心不全 医学・健康情報サイト J-Medical症状や治療のほか、日ごろからの対策までざっと把握したい方に。

○心不全-その症状と治し方- (国立循環器病センター)
「右心不全」という言葉は使っていませんが、心臓の役割から治療、日常生活まで、大変詳しくわかりやすいです。

【肝硬変】
《症状》
 だるい(全身倦怠感)、疲れやすい、食欲不振、吐き気・嘔吐などが起こってきます。当初は症状を感じないため、これらの自覚できる症状が出てきた頃には状況は深刻ですが、肝硬変に特徴的な症状ではないために見逃されすいようです。更に重症になると、黄疸、むくみ、腹水、吐血などが出てきます。この段階では皮膚に特徴的な症状が出やすく、黄疸のほかに、クモの形に上半身の血管が赤く浮き出たり、手のひらが赤くなったり、皮膚がどす黒くなる、血が止まりにくい、皮下出血、爪が白くなる、などが認められることが多いようです。昏睡状態に陥ることも。

《原因》
 さまざまな肝障害のために、肝臓が何度も繰り返してダメージを受けることが直接の原因。一部の肝細胞が死んでも肝臓は細胞の再生機能を持っていますが、それが長期間繰り返されると、傷の跡が硬くひきつれるように線維状になってきます。一度そうなると元には戻らず、その部分の肝機能は失われます。これが肝臓全体に広がると、肝臓の表面がでこぼこと変貌してしまいます。この状態を肝硬変といい、肝臓病の終末期の姿ともいわれます。肝硬変を引き起こす疾患は多岐にわたりますが、多いのはウイルス性の慢性肝炎、次にアルコール性の肝障害です。そうした肝硬変から肝臓がんが発生することも多くあります。

《対処法》
 症状が出てきた頃にはかなり重症であり、段階によっても対応は異なります。総じて、現在の状態を悪化させることなく生活の質(QOL)と日常生活動作の維持・改善を図りながら、予測される合併症に早期に対応していくことが大切。過労を避け、禁酒、バランスのよい食事、規則正しい生活をするよう指導を受けます。しかし症状が重く、黄疸、むくみ、腹水、意識障害などが現れているような場合は入院が必要になります。肝硬変そのものに対する治療薬はなく、肝障害の重症度と症状に応じて薬を組み合わせていきます。

《参考サイト》
○肝硬変 病気の知識"肝臓/胆のう"ポイントがわかりやすく簡潔にまとまっています。

○肝硬変 
文字がかなり細かいですが、仕組みから症状までが詳しいです。

○肝硬変 (gooヘルスケア)
少し難しいところもありますが、詳しい症状から治療まで広く網羅しています。

【甲状腺機能低下症】
《症状》
 女性患者数は男性の10倍といわれます。疲れやすく、脱力感が続きます。原因は思い当たらないのに寒がりになり(低体温)、体重増加、食欲低下、便秘などがあります。記憶力・集中力も低下し、動作は緩慢になります。汗が減り、皮膚は乾燥します。眼のまわり・顔・手足などに、押しても戻らないむくみがでます。顔が腫れぼったいだけでなく、舌や唇が肥大します。髪は白髪が増え,抜けやすくなります。眉は外側1/3が薄くなります。声が低くなったり、しわがれたり、月経過多になったりすることも。

《原因》
 甲状腺から出るの甲状腺ホルモンが不足したためにおこる病気です。甲状腺は、通常は外見には分かりませんが、首の下の方にある小さなハート型の臓器です。甲状腺ホルモンは常に一定の濃度に保たれ、いろいろな臓器を調節して生命を維持しています。ところが何らかの原因で、体の異物を排除するべき免疫反応に異常がおき、「抗甲状腺抗体」というものができて甲状腺を攻撃することがあります(自己免疫疾患)。それによる慢性の甲状腺炎を「橋本(氏)病」と呼び、甲状腺機能低下症の原因として最もよく見られるケースです。 脳の腫瘍や炎症により、脳から出る甲状腺ホルモンを刺激する物質が分泌されないことが原因の場合もあります。

《対処法》
 甲状腺機能低下症を放置していると、コレステロールが増え、動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳梗塞などにつながりかねません。また、身体のむくみがひどくなると、心臓のまわりに水が溜まり、心不全になることもあります。そこで治療としては、不足している甲状腺のホルモン剤を内服します。多くの場合、一生薬を続けなければなりません。ちなみに、海草に多く含まれるヨードは甲状腺ホルモンの原料なのですが、慢性甲状腺炎の人の一部にこのヨードをとり過ぎると、かえって自分で甲状腺ホルモンが作れなくなる人がいるので注意が必要です。

《参考サイト》
○甲状腺の病気 甲状腺機能低下症 (田尻クリニック)
○質問と回答集 甲状腺機能低下症 (田尻クリニック)
甲状腺の働きから症状、治療まで詳しく載っています。

○甲状腺機能低下症 女性の健康.NET甲状腺の部位など図解入り。橋本病について簡潔にまとまっています。

○甲状腺機能低下症(橋本氏病)の簡単な解説 (まえだ循環器内科)
左側のメニューから入れます。症状と診断が詳しく載っていて、オンライン検診もあります。

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