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アルツハイマーを通して人間の本質が見える

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(すずかんの医療改革の今を知る 特別編  難病に挑む医師たちに聴く①)

アルツハイマー病
岩坪威・東京大学大学院医学系研究科教授  その5

(その1『アルツハイマー病、治療対象はどんどん早期に』は、こちら)
(その2『認知症の経済損失は既に5兆円。さらに迫る高齢化』は、こちら)
(その3『米国と同じ土俵に乗った多施設共同研究』は、こちら)
(その4『アルツハイマーが向こうからやって来た』は、こちら)

鈴木 私は情報科学の周辺にいた人間なわけですけれども、釈迦に説法ながら情報の定義というのが色々あって、情報学者みな、微妙に違うんですけれども、物質とエネルギー以外すべて価値あるもので、特に情報というのはパターンというものと密接に関連しています。記憶機能が崩れるという話でしたけれども、そういう意味で情報科学を含め改めてパラダイムを深堀りしたですね、認知科学も含めて何が情報なんだという所に突き当たるかなと思います。

 認知というのは情報を認知しているわけですから、もう一つコンセプチュアルなパラダイムシフト、深堀りということで言うと、何の機能を回復するのかという話でありまして、本当に学問の概念が変わってしまうようなことへのチャレンジなんだなあということを感じましたね。

岩坪 私、臨床医から病理学を研究するようになった者ですが、病理というのはものとしての臓器を顕微鏡で見たり生化学で分析したりして極めるという学問です。アルツハイマー病というのは、認知機能という人間のもつ最も高次の機能が低下するという点に本質がありますので、これを評価するとなると、今鈴木先生が言われた通り、人間の認知機能とは何なのかが問題になるわけです。アルツハイマーで落ちるのは記憶機能が主体ですけれども、その他の様々な認知機能を客観的に分析して、例えば薬の効果を治験で評価するにしても、それをできるだけ厳密に定量するということが必要になります。アルツハイマーの科学というのは、本当の意味の総合科学と申せます。心理、社会的な側面から、病理組織学、さらに物質、タンパク質のレベルから原子レベルの構造科学まで、ライフサイエンス、社会的科学まで糾合したものだと感じます。その奥行に慄くところもあるという実感です。

 今我々のアルツハイマー病の臨床研究では、画像も含めて大変な量の情報が集まっています。これをいかに整理し解析し活用するかということが、喫緊の課題となっているのですけれども、この点で情報科学者の先生方に非常に力強く支援いただいています。鈴木先生の先輩にもあたられる日本の情報科学の泰斗、東大生産研の喜連川優先生には、以前から大変お世話になっています。今回IT融合というテーマ設定のもとで、どういうことを考え、何を実践していけばよいのだろうと考え、お教えを乞いに何度か駒場にうかがいました。色々一緒に考えてくださって出てきたのが、先ほどの議論にもありましたような、オープンなITプラットホームを、できるだけ最新の、皆が使いやすい形で立ち上げること、そこへ新しい技術、新しいソフトウェア、新しい考え方をどんどん盛り込んでいって、それが発展していくような、オープンプラットホームというものが実現するといいんじゃないかということでした。

 ところが一方では、臨床研究で蓄積される情報は、患者さんあるいはボランティアの個人情報が様々に盛り込まれたものですので、セキュリティというのも重要ですし、データの信頼性も問題になります。画像を含めて非常に大量なデータを臨床研究のシステムの中で扱っていく、これは社会実験的な側面すらある大きなチャレンジですので、経産省IT融合のヘルスケアという、とてもいい枠組みを与えていただいたと思います。出てきたデータ自体をその後どう扱っていくかというのも重要です。

 それから、今日本では様々な研究分野で色々な重要なデータが蓄積されているんですけれども、これがあるプロジェクトが終わってしまうとお蔵入りになるとか、あるいは先ほど出てきたように他の研究者に徹底的に活用していただいて初めて価値が出るのに、なかなかそれを推奨する場がないというのが問題になってきました。今、文科省JSTに統合化データベース(NBDC)が立ち上がりました。我々の脳画像研究もその仲間に加えていただいているんですけれども、国として、様々な研究分野で生産された、半永久的に保持し、活用していくべきデータを各分野から選んで、データベースの維持公開を図るという非常に重要なプロジェクトです。しかし、このような重要な活動も、5年単位のグラントを取って、つなぎつなぎでやっていかなければならない面がある。勧進元のNBDCでさえもそういう非常に厳しい状況に悩みながらサポートくださってるんで、データベースの維持公開という点でも、長期的視野でご支援いただく必要があると思います。

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