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量が質へ転化するということ

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 男子テニスの錦織圭選手の快進撃がとまりません。最近のロンドンオリンピックではベスト8に入りましたし、世界ランキングも18位です。小柄な日本人は男子テニスでは世界に太刀打ちできないと長らくいわれていましたが、身長178cmとテニス選手としては小柄な錦織選手の活躍、素晴らしい一言です。夢のトップ10入りも遠くはないでしょう。錦織選手の未来は明るいと思いますが、私は錦織選手個人だけでなく、これからの日本のテニス界の将来も明るいのではと思っています。

(2012年9月、【山大GCOEコホート通信】vol.25 コラムとして配信)

成松宏人 山形大学グローバルCOEプログラム 先端分子疫学研究所 准教授

 それは、テニスの裾野が広がっているように感じるからです。キッズのテニススクールをのぞいてみると山形でもたくさんのこどもたちが小学校低学年、あるいは幼稚園児の時からテニスに親しんでいます。驚くべきは、その指導法の進歩です。私は中学生から硬式テニスを始めましたが、その時とは比べものにならないぐらい進歩していることには本当に目をみはります。小さい子でも飽きさせないような、遊びの要素を入れた楽しいプログラム構成やテニスに必要な身体感覚やバランス感覚を無理せず身に着けられる練習方法。そして、用具も進歩しました。小さな子どもでも無理せず扱えるラケット。テニスの感覚を練習するに十分な子ども用の練習ボール。私が子どもの時はテニスは大人のスポーツで、これを「習い事」としてやるなんて考えもしませんでしたが、今や習い事の選択肢として市民権を得たといってもいいでしょう。

 裾野が広がることは将来のテニスのトップ選手を輩出するために非常に重要なことです。まず、直接には、子どものうちにテニスに接することにより、今まではサッカーや野球など他のスポーツに進んでいた、プロ予備軍の運動能力の高い子どもたちがテニス選手になってくれる確率が高くなります。多くの運動応力の高い選手が集まれば、自然に競争が激しくなり、その中で、さらにテニスが磨かれ、それが世界レベルで活躍する選手を輩出できる確率を高くします。

 いや、本当の価値は将来テニスのプロにならない子どもたちにあります。一度でもテニスをやったことがあれば、一旦やめたとしても何かのきっかけで再開して将来は趣味のテニスプレーヤーになる確率が上がります。それらの人たちが増えれば、需要が高まってテニスコートが増えるでしょう。また、自分の子どもにもテニスをやらせたいと思う親も増えるでしょうから、子ども向けのテニススクールも充実するはずです。そして、これらが子どものテニス環境をさらに良くするという好循環です。もちろん、テニス人口が増えれば、テニスの試合のテレビ中継の視聴率も上がるでしょう。それらの収入がまた、テニスの振興に使われるという好循環も期待できます。まさに、量の質へ転化です。

 ちなみに、選手強化のもう一つの方法は、旧社会主義国のように、運動能力のいい子どもたちを早いうちから選抜し、ありとあらゆる国家的リソースをつぎ込んでトップアスリートを養成するという方法です。ただ、残念ながら、国家財政の厳しい多くの先進諸国ではこのモデルは持続性がありません。だからこそ、この「キッズテニスモデル」で発展すればこの業界の未来が明るいと私は思えるのです。

 このテニスの事例は医療業界にとってもヒントにもなるのではないかと思います。地方で内科医として診療をしていると、地方の医療が厳しいことは身にしみて感じます。その解決法としていろいろ議論はされていますが、裾野を広げることが地道ではありますが、大事だと私は思うのです。その中でも、医療従事者になりたい学生さん、生徒さんを増やすことは、よりいい人材が医療に集まることが期待されます。もちろん、医療従事者になるための競争が激しくなり、そこからいい人材がさらに磨かれる効果も期待できます。医療従事者にならなくとも、医学医療に興味をもつ人が増えれば、それが医療の底上げをすることを期待できます。

 この秋、私は山形県の酒田西高校と鶴岡南高校で医学・医療の出張授業をする予定にしています。医療の発展に必ずつながると信じて、このような地道な活動も引き続き行っていきたいと考えています。

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