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元カノとヨリを戻せる確率は50%以上? ~「さよならバス」とバイアスのはなし

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 山形でも暑かった夏も終わり、急に秋がやってきました。この時期テレビは、番組改編期です。最近、もう、終わってしまったんですが、面白い番組を見ました。

(2010年10月、【山大GCOEコホート通信】vol.5 コラムとして配信)

成松宏人 山形大学グローバルCOEプログラム 先端分子疫学研究所 准教授

「恋するTVすごキュン」(フジテレビ)です。

 人気若手芸人が司会をする、恋愛バラエティです。くだらなさが(もちろん、出演者は大まじめでしょうが)週末の夜という独特な環境と相まって面白さを増幅しています。

 その中に、「さよならバス」というコーナーがあります。以前つきあっていたけれども、事情があって分かれてしまった元交際相手に、もう一度ヨリを戻したい一般の参加者が主人公です。大きな道路を挟んで向こう側にいる元交際相手に、ヨリを戻したいとアピールします。アピールの後、「さよならバス」という名の大型バスが、元交際相手の立っているバス停のところへやってきて、ヨリを戻すことを受け入れなければ、元交際相手はそのバスに乗り込んで永遠のサヨナラとなりますが、受け入れる場合はバスには乗らずに、ヨリを戻して晴れてハッピーエンドです。

 私が見た放送では、ヨリを戻したカップルは半分ぐらい(!)ありました。世の中のカップルはそんなにヨリを戻せるのでしょうか?たとえば、自分の昔つきあっていた相手に声をかけてヨリを戻してもらえる確率は50%もあるのでしょうか?

 自分の実体験(?)からしても、この確率はいかにも高いようにみえます。実は、この結果を解釈するには注意が必要です。この場合ですと以下のようなことを考える必要があります。

1) まったく元交際相手がヨリを戻す気がない場合は、時間と労力をさいて撮影にわざわざ来ない。だから、ある程度もと交際相手もヨリを戻す気があるカップルだけが撮影になる。
2) 参加者も、ヨリを戻せないとカッコわるいので、ヨリを戻せる自身がある人だけが集まる。

 このような要因から(考えればもっとあります)、本当のヨリを戻せる確率より、番組では高く結果が出ていることが推測されます。ですので、いまこのコラムを読んでいるあなたが、昔のカノジョやカレシに連絡をかけてもヨリを戻せる確率は50%よりもずっとずっと少ないと思われます。このように、一部分の現象だけ取り出してみたときに、本当の結果より偏りが出てしまうことをバイアスがかかるといいます。実は、私たちがこのようなバイアスのかかった情報に接する機会は少なくありません。

 例えば、健康食品の宣伝です。テレビや雑誌などで使用者の感想を何人もの人が話している広告をよく目にします。そこに搭乗した人々は口々に言います。「この食品は素晴らしかった!」と。しかし、実際に注文する前には、「さよならバス」の時と同様に結果を解釈する必要があります。

 具体的には、効果のある人だけ登場させているというバイアスが考えられます。そのため、効果がある確率が実際よりも多く見えてしまいます(多くは100%でしょう)。もし、使用者にアンケートを取っていた場合は、効果のあった人の方がアンケートの回収率がいいと予想され、本来の結果より多めに効果の割合が出るというバイアスがかかる可能性もあります。

 「さよならバス」の場合は、テレビをみて思い立ってアクションを起こしたとしても、フラれるぐらいなら大した実害がないかもしれません。しかし、自分の健康に関するものだったら結果はかなり重大です。特に、健康食品が非常に高価だったら・・。

 今の時代には、情報があふれています。その情報を解釈し使いこなす力を「情報リテラシー」と言います。昔でいう「読み書きソロバン」です。学校教育ではあまり重視されていないのが現状ですが、現代社会で生きていくのには必要不可欠なものになりつつあることを私たち一人ひとりが気づかねばいけない時代になってきてしまったことは、私がよく実感することです。

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