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実行認知機能の高い子は、よく活動し酒タバコに誘惑されない

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 米国南カリフォルニアで、小学校4年生を対象に、実行認知機能・身体活動・有害物質(タバコとアルコール)使用・親の影響に関する調査をしたところ、実行認知機能が高いことが身体活動増加に関連し、有害物質使用とは負の方向に関係することが確認されました。

Longitudinal Relationships of Executive Cognitive Function and Parent Influence to Child Substance Use and Physical Activity
Mary Ann Pentz, Nathaniel R. Riggs
Prevention Science DOI 10.1007/s11121-012-0312-3

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 両親や身体活動が与える他の保護的影響との関係における役割は知られていないが、神経認知機能を考慮すると、実行認知機能は、子どもが有害物質使用を始めることから守るための役割を果たすかもしれない。有害物質使用および肥満予防に対する大規模多様性健康リスク行動試験の一部として、本研究Pathwaysは、4年生の集団における6カ月にわたる生涯有害物質利用(タバコとアルコール)および身体活動に対する、実行認知機能の相対的影響を評価した。標本は1,005人で、51%が女児、25%は無料/減額給食受給者、60%はヒスパニック/ラテン系ないしはヒスパニック系多民族で、28の小学校を対象とした。自己報告調査は、実行認知機能測定、生涯でのタバコおよびアルコール使用、学校外での身体活動、親と一緒の運動、食べ物/座りがちな行動に関する親の規則・親の監督・親子の言い争いが含まれ、子ども用に改作された。パス解析は、実行認知機能が、より低い有害物質使用、より高い身体活動および親との運動の主たる予測因子であることを証明した。身体活動と親との運動は、相互の肯定的関係を示した。この若年群における有害物質使用に対する身体活動と親との運動の潜在的予防効果はまだ明らかではないが、研究結果は、実行認知機能を向上させることが、子どもの健康促進および有害物質使用予防プログラムの主要焦点になるべきであることを提唱している。

●方法

(1)背景
 発達しよく生育するための子どもの能力における鍵となる因子としての実行認知機能の卓越を考慮し、本研究における主要仮説は、実行認知機能が、有害物質使用に対する親の影響とは独立して、有害物質使用と有意に負の関係にあり保護的効果を示し、身体活動と有意に正の関係にあり健康促進効果を示すだろうというものである。本研究は、子どもにおける有害物質使用および肥満予防のための無作為対照試験であるPathways to Health(以下、Pathwaysと言う。)における、ベースライン時および6カ月間の追跡調査測定からのデータを用いた。Pathwaysの目的は、暴力と有害物質使用予防に対する二つの科学的根拠に基づくプログラムを、子どもに対する有害物質使用と肥満予防へと適用することである。ヒスパニック/ラテン系の美徳と低社会経済的地位によって、肥満に対するより高いリスクを示すかもしれない学校を標的としている。政府交付金を受けている学校やヒスパニック/ラテン系生徒割合が高い学校を含め、南カリフォルニアの28の小学校が、成績・規模・民族性(ヒスパニック/ラテン系生徒割合)・社会経済的地位(無料/減額給食受給者割合)での人口統計学的特徴による学校水準によってペアに組まれ、その後無作為にペア内において、学校と親に基づくプログラムまたは対照群に振り分けられた。ペア組み合わせと無作為化は、それぞれの学区内で実施された。

(2)参加者
 参加者は、十分に活動的な親がいて、研究における調査と人体計測の両方に自己同意し、経時的に追跡調査される集団を構成する、28の学校の85すべての教室からの4年生1,005人となった。同意率は68.1%、学区外への転出が予定されているか正規授業への在籍不足によって適応外である生徒を除いての参加割合は66.7%となった。参加者の平均年齢は、9.27歳で、30%が白人、28%がヒスパニック/ラテン系、さらに32%はヒスパニック系多民族またはその他、8%がアジア系、3%がアフリカ系アメリカ人となった。男児が49%、61%は介入グループ、25%が無料/減額給食受給者となった。

(3)測定
 本研究測定は、子どもたちに実施された145項目の自己報告調査で構成された。調査は、熟練データ収集者によって声に出して実施され、もう1人のデータ収集者が生徒個人の理解に関する質問に答えるために配置された。多くの学校ベースの研究と共通して、データ収集は、約45分の授業1コマに限定された。時間の制約および4年生に可能な理解力と注意力の束縛により、以前に青年向けに開発され有効とされたより時間の長い測定を短縮し、4年生の読解力に適応させ、再確証された。短縮版を用いることに対する心理測定法文献の支持が存在し、学校ベースの予防調査の実用的真実性は、評価手段が学校ベース評価に対する時間制約内に実施されなければならないことにある。

①実行認知機能
 実行認知機能項目評価には、「実行機能に関する行動評価尺度-自己報告版」の八つの下位尺度のうち以下四つが用いられた。感情コントロール(私は、理由なく怒鳴る、叫び声をあげる、泣く)、抑制コントロール(私は、先に考えずに物事をする)、ワーキングメモリ(私は、物事をしている途中で何をしているのか忘れる)、道具の整理(私の机はちらかっている)の四つである。項目に対する回答選択は、1=全くない、2=時々ある、3=しばしばある、の3段階になっている。得点は、高いほどより実行認知機能熟達度が高くなるように計算される。

②親の影響変数
 親の影響因子の三つに対する項目は、有害物質使用予防試験であるMidwestern Prevention Projectの生徒調査から改変された。親の規則(あなたの親または他の大切な大人は、学校からの帰宅後にあなたが食べるものについての規則を定めていますか、1日のうちテレビを見ること、音楽を聴くこと、コンピュータに向かうことにどのくらいの時間を使ってもよいかについての規則を定めていますか? {0=いいえ、1=はい})、親との口論(通常1週間に、あなたは、親または他の大切な大人と、あなたが何を食べるかについてどのくらい口論しますか? あなたがどの程度運動をするかについて、どのくらい口論しますか? {0~4または5回/週})、親の監督(出かける前に、あなたは、親または他の大切な大人に、いつ帰ってくるかを伝えたり、書き置きを残したりしますか? 授業が終わった後で、あなたがどこにいるかを親または保護者は正確に知っていますか? {0=いいえ、全く知らない~3=はい、いつも知っている})。

 親との運動項目は、Midwestern Prevention Project 、Youth Risk Behavior Survey、School Physical Activity and Nutrition Surveyから改変された。(あなたは、これらの大人のいずれかと一緒に、どのくらい運動をしますか? あなたの生活において、どのくらい大人と散歩したり、スポーツをしたりしますか? {0=全くない~4=ほぼ毎日})

③人生における有害物質使用
 自己報告による生涯での有害物質使用が、タバコとアルコール使用について質問された2項目の平均をとって計算された。(あなたは、今までの人生でタバコを吸ったことがありますか? あなたは、今までに宗教目的ではなくビール・ワイン・蒸留酒を試したことがありますか?)生涯でのタバコ使用は、0=いいえ、1服もありません~2=はい、1服より多くタバコの一部または1本全部を吸いました、にコード化された。アルコール使用項目に対する回答選択は、0=いいえ、一口もありません~2=はい、一口より多くグラスまたは缶の一部または全部を飲みました、だった。

④身体活動
 自己報告による活動様式全般評価のために、Physical Activity Questionnaire for Older Children(PAQ-C:子ども用身体活動調査票)の改変版が用いられた。PAQ-Cは、8歳相当3年生の身体活動評価に用いられてきており、内部整合性及び妥当性が確立されている。外部妥当性も、教員の観察・動き・7日想起・余暇活動との比較によって確立されてきている。元の9項目 PAQ-Cは、身体活動を様々な状況において評価する。本研究に対しては、特定の設定と時間における活動レベルを評価する6項目を含めた。すなわち、体育の授業・昼食時間・休憩時間・放課後すぐ・夕方から就寝まで・週末の6項目である。項目の質問は、過去7日間に(体育の授業中・休憩時間中・等に)、どのくらいの頻度でとても活動的でしたか? となっており、回答選択は、1=全然活動的ではなかった、体育の授業はなかった、休憩時間はなかった、等~5=6回以上までとなっていた。身体活動因子を、学校外時間での3項目と、学校内時間での3項目により2因子にまとめ、尺度信頼度を調べたところ、学校内時間での信頼度が低いことから、以降の分析からは除外した。

⑤共変数
 年齢・性別・民族性・社会経済的地位によって有害物質使用および肥満リスクにおけるいくらかの差異を示した先行複数研究に基づき、性別・民族性・社会経済的地位(無料給食を代用)が、潜在的共変数として含まれた。肥満予防プログラムが主要研究変数レベルに影響を与えてきているかもしれないため、介入状態が潜在的共変数として含まれた。

(4)分析計画
 共変数と主要研究変数との関係探究のため、一般線形モデルがつくられた。信頼度の低い尺度、および有害物質使用・身体活動・親との運動というアウトカムのいずれとも関係しない尺度や共変数は、縦断的分析に対して最も簡潔で安定したモデルを検証するために、以降の分析からは取り除かれた。

 親の変数に関する因子を、親の座りがちな行動や食物摂取に関する規則2項目、親との口論2項目、親の監督2項目、親との運動2項目による4因子にまとめ、尺度信頼度を調べたところ、信頼度が低いこと、および身体活動・親との運動・有害物質使用との関係欠如によって、親との口論および親の監督は、以降の分析からは除かれた。

 学校レベル級内相関は、身体活動・親との運動・有害物質使用のアウトカムに対して算出された。級内相関は、身体活動に対して0.001、親との運動に対して0.001、タバコ使用に対して0.002、アルコール使用に対して0.001となり、すべてにおいて相関が低かったので、以降の分析は、学校の文脈的効果を含めなかった。さらなる分析を維持するための有意な共変数を決定するために、一般線形モデルが実行された。性別・民族性・減額/無料給食は共変数として、親の規則は親の影響共変数として、実行認知機能は主要独立変数として、親との運動・学校外での身体活動・生涯での有害物質使用は健康行動アウトカムとして維持された。欠測値割合は、個人変数に対して0~0.9%と大変に低く、全体の欠測値割合が0.02%となったため、1,005人すべてが分析に含まれた。構造方程式モデリングを用いたパスモデルを用いて、仮説検証が実行された。欠測値は、完全報知最尤を用いて処理された。パスモデルの利用は、多従属変数の単一モデル内での分析、および独立変数と従属変数間の共分散モデル化を可能にした。すべてのパスは交差遅延となった。モデルは、生涯の有害物質使用を、実験を代表する複合変数として用い実行された。

●結果

(1)記述的分析
 研究変数のいずれにおいても、プログラムを適用したか否かの振り分けペア内で差異は存在しなかった。ベースライン時において、より大きな実行認知機能熟達度が、身体活動および親との運動と正方向に相関し、有害物質使用および無料給食状況とは負方向に相関した。さらに、学校外での身体活動は、親との運動と正方向の関連があった。有害物質使用は、学校外での身体活動、および親との運動両方とも、有意な相関にはならなかった。一般線形モデルは、研究共変数のいずれもが、介入状態は例外として、少なくとも一つの主要研究変数と有意に関係あることを証明した。したがって、プログラムを適用したか否かに関しては以降の分析から除外された。

(2)モデル検証
 パスモデルを検証すると、モデルにおけるすべての変数が、潜在的構成概念というよりは指標であると認められるため、パスモデルは、観察されたデータとの完全飽和適合を示した。青年に関する先行研究に一致して、男児であることが、より高い身体活動および有害物質使用と関連し、無料/減額給食は、より高い有害物質使用と関連した。しかしながら、人種/民族は、身体活動・親との運動・有害物質使用と関連なかった。

 身体活動・親との運動・有害物質使用は、6カ月間の追跡調査期間を通じて、適度に安定していたが、高いということはなく、試験-再試験相関係数は、実行認知機能に対してはr=0.67、有害物質使用に対しては0.54、親との運動に対しては0.43、学校外での身体活動に対しては0.41となり、おそらく、限られた項目数に基づく得点信頼度レベルと、子どもにおける正常な発達変化を反映すると予測されたであろう行動における変化の両方を反映している。

 予想通り、身体活動は、横断的にも縦断的にも、親との運動と関係があった。同様に、親の規則は、身体活動および親との運動と関係あったが、有害物質使用とは関係なかった。ベースライン時での身体活動も親との運動も、追跡調査6カ月での有害物質使用を予測することはなかったが、追跡調査時において横断的には、親との運動が、予期しない正の相関を有害物質使用との間で示した。実行認知機能は、横断的にも縦断的にも、身体活動および親との運動と正の関係を、有害物質使用とは有意に負の関係を示した。さらに、実行認知機能は、親の規則と正の関係があった。このように、結果は、研究の主要仮説を支持することとなった。

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