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運動不足 なぜ悪い?

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

55-1-1.JPG これまで個別の疾病を取り扱った特集で、最後に必ずといっていい程、「適度な運動を」という文言が出てきたのを覚えていらっしゃるでしょうか。
今回は、その運動に着目してみます。
監修/久住英二 ナビタスクリニック立川院長

再構築には刺激が必要

 WHO(世界保健機関)によれば、世界の成人の6割以上が運動不足に分類されるそうです。先進国である我が国はもっと大変かもしれません。
 適度な運動が病気の予防に役立ち、逆に運動不足だと病気を招くというのは、今や常識と言っても過言でないと思います。その効用をくだくだ説明せずとも、運動した時の爽快感や身の周りの元気な人の様子を思い出していただくだけで納得がいく所はあるでしょう。
 ただ、「運動」と聞いた時にスポーツを連想していないでしょうか。もちろんスポーツも素晴らしいのですが、対象をスポーツだけに限定してしまうと、心理的な障壁が上がってしまい、やらなきゃと思いつつ三日坊主になりがちです。
 また、続けた時にどういうご利益があるのか、明瞭にイメージを描けないと、やる気も失せますよね。
 そこで今回は実践につながるよう、あえて根本のところから科学的根拠を再確認することにしました。
 まず大前提の1。私たちは外から飲食物を取り込みながら、また逆に老廃物を排出しながら、体の組織の分解と再構築を繰り返しています。再構築後は分解前と全く同じ状態になるのではなく、取りこんだ物質(摂取した栄養)の質・量・バランスや刺激の質・量・バランス、体の状態に応じて、少しずつですが大きくなったり小さくなったり(あるいは強くなったり弱くなったり)することがあります。刺激や栄養、休養などが不足すると、分解前より組織が小さく弱くなります。刺激をもたらす行為の最たるものが運動です。
 次に大前提の2。人類は過去からずっと、栄養不足の中で自らの体を使いながら生きてきたという歴史があります。つまり、もっと生存競争の厳しい時、それなりに運動の刺激がある状態で勝ち抜いた人々の子孫です。私たちの体やその機能を司っている遺伝子は、自分の体をそれなりに使う状態に適合していると思われます。
 脳は後天的に柔軟に環境順応をするので、現代社会を異常と感じることはないようです。むしろネコ科の動物を見ているとよく分かるように、基本的に動かなくて済むなら動かない「省エネ」に快感を覚えるのが脳の本質なのかもしれません。本能だけに任せていると、健全な組織の再構築に、刺激が足りなくなる可能性は大いにあります。
 と、ここまでの大枠をご納得いただけましたら、いよいよ運動不足がなぜ健康に悪いのかという各論に入りましょう。

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