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"異性化糖"が2型糖尿病を引き起こす

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「2型糖尿病の発症という点では、砂糖より『異性化糖』(天然甘味料)の方が厄介」という研究結果が報告されたようです。なお、一時期話題になった「ペットボトル症候群」は、清涼飲料水の飲み過ぎによって急性の糖尿病を発症し、ひどいと意識を失うこともある怖いものですが、今回の研究からするとその元凶も「異性化糖」ではないかと思えてきます・・・。

大西睦子の健康論文ピックアップ19

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

皆さん、高フルクトース・コーンシロップってご存じですか? 異性化糖とも呼ばれる天然甘味料です。「そんな糖聞いたことがない」という方は是非、清涼飲料水※1の成分表示を見てみてください。その多くに「ブドウ糖果糖液糖」「果糖ブドウ糖液糖」と表示があるはずです。清涼飲料水以外にも、多くの食品に添加されています。天然甘味料にも注意が必要ということは、『ロハス・メディカル』誌上(2012年11月号)と、このロバスト・ヘルスでも以前お示ししました(図はこちら)。

今回はさらに、Global Public Healthに新しく報告された研究で、「高フルクトース・コーンシロップを多く消費する国は、2型糖尿病の発症が高い」という結果が示されましたので、ご紹介したいと思います。

Michael I. Gorana*, Stanley J. Ulijaszekb & Emily E. Venturaa
High fructose corn syrup and diabetes prevalence: A global perspective
Global Public Health: An International Journal for Research, Policy and Practice
DOI:10.1080/17441692.2012.736257
Received: 01 May 2012
Version of record first published: 27 Nov 2012

まず、「高フルクトース・コーンシロップって何?」という疑問に改めてお答えします。高フルクトース・コーンシロップは、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の混合液で、トウモロコシなどのでん粉を酵素処理し生産されます。名称からも「果糖」を多く含むこと、トウモロコシが原料であることが伺えますね(ブドウ糖と果糖については後ほどまたご説明します)。実は、日本で開発されたもの。それが1970年代に米国に導入されると、米国における砂糖の使用、ひいては食文化そのものに、歴史的な変化をもたらしました。というのも米国では、供給地であるキューバでの革命以降、砂糖が不足していたのです。そこで米国政府は高フルクトース・コーンシロップを砂糖の代わりとすべく、農家に膨大な助成金を支払ってトウモロコシをたくさん生産し始めました。最近では遺伝子組み換え技術※2が用られ、トウモロコシはさらに安く、大量に生産できるようになっています。

高フルクトース・コーンシロップは現在、炭酸飲料、果実飲料、スポーツドリンク、シリアル、ジャム、パン、ヨーグルト、ケチャップなど、米国人が普通に食べるあらゆる食品に使われています。例えば、多くの米国人の好きなマクドナルドの食事は、コーンで育った牛肉のハンバーガー、コーン油で揚げたポテト、コーンシロップ入りのコーラ、といった具合です。言ってみれば、米国人の食事のほとんどはトウモロコシからできていて、毎食、体内に大量にその成分を摂り入れていることになります。さらには、歯磨き粉からスーパーの袋、Tシャツ、バイオ燃料、家畜の飼料に至るまで、様々な工業製品がトウモロコシから作られています。もはやトウモロコシは単なる穀物ではないのです。

ところが最近の研究で、高フルクトース・コーンシロップが、肥満や高血圧、糖尿病などの原因と分かり、大問題となっています。米国プリンストン大学の研究者たちは、動物実験で、グラニュー糖を摂取したマウスより同量の高フルクトース・コーンシロップ を摂取したマウスの方が、顕著な体重増加を認めたと報告しています。その他、多くの研究者たちが動物実験やヒトの研究から、肥満、糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリック症候群など、高フルクトース・コーンシロップの健康への害を報告しています。

ところで、なぜ高フルクトース・コーンシロップは、肥満、高血圧や糖尿病などの原因となるのでしょうか。まずは天然甘味料を理解するために、糖の最小単位であるブドウ糖と果糖の違いから説明します。

ブドウ糖はごはんやパン、麺類、イモ類などに多く含まれ、脳の唯一のエネルギー源であり、全身の細胞を活性化するエネルギーとなります。果糖は果物や蜂蜜に含まれており、もともと甘みが強いのが特徴ですが、冷やすと甘みがさらに増します(果物を冷やして食べる習慣があるのはそのためなんですね)。

以前の記事でも言及しましたが、重要なのは、ブドウ糖と果糖は代謝経路が全く違うことです。ブドウ糖は小腸から吸収された後、血液中に入り、全身の細胞に運ばれエネルギーとして利用され、余った分が中性脂肪となって貯蓄されます。一方の果糖はほとんどが肝臓で代謝されるため直接は血糖を上げませんが、肝臓で中性脂肪などに変換され、余分なものが脂肪として貯蓄される他、脂質異常症※3を引き起こしたりします。

ただ、私たちが果物や野菜から果糖を摂取(リンゴ1個あたり果糖約16g)しても、同時に含まれる食物繊維やビタミン、ミネラルなど生命に重要な栄養素によって、吸収が緩やかになるなど果糖のネガティブな効果は緩和されます。しかし、異性化糖が多く使われているコーラなどの炭酸飲料水やスポーツドリンクでは、一気に大量の果糖を摂取することになります。

さて、ここからようやく本題です。肥満と2型糖尿病は、世界中に広がっています。最近の報告では、世界人口の6.4%が糖尿病に罹患しており、2030年には7.7%まで増加すると予想されています。糖尿病の増加率は先進国で20%、発展途上国ではなんと69%と言われています。肥満と2型糖尿病の原因としては、欧米型の食事スタイルである高炭水化物食、特に糖質の過剰摂取が問題視されており、中でも最大の元凶として高フルクトース・コーンシロップ(主として清涼飲料水から)が疑われているのです。

最大生産国である米国は最近、メキシコなど様々な国に大量輸出を開始し、高フルクトース・コーンシロップの使用は世界中に広がっています。しかしながら、多くのヨーロッパ諸国のように、使用していない国もたくさんあります。そこで今回の調査では、国ごとの高フルクトース・コーンシロップの使用の有無と、2型糖尿病の有病率に関係があるかが解析されました。

具体的には、今までに43カ国で公開された糖質、高フルクトース・コーンシロップ、総カロリー摂取、肥満、糖尿病の有病率※4、耐糖能異常※5および空腹時血糖※6のデータを用いて、高フルクトース・コーンシロップと2型糖尿病の関係が評価されました。

国別BMI値※7の解析には、2011年にFinucane博士らによって報告された199カ国の20歳以上の成人のデータや、Global Burden of Metabolic Risk Factors (GBMRF) Collaborating Group(医学・公衆衛生の研究者・開業医の世界的ネットワーク)によるデータなどが用いられました。糖尿病の有病率に関しては、国際糖尿病連合(IDF)とGBMRF Collaborating Groupによる2つのデータが用いられました。食品に関するデータは、FAOSTAT (国連食糧農業機関統計データベース)http:// faostat.fao.org/が用いられました。高フルクトース・コーンシロップの摂取に関するデータは、F.O. Licht's International Sugar & Sweetener Report(砂糖産業の世界的ニュースレター)とCAP monitor(欧州連合共同農業政策モニター)の2つのデータが用いられました。

その結果、高フルクトース・コーンシロップ消費量の少ない国と多い国で糖尿病有病率を比べると、IDFとGBMRFのデータではそれぞれ6.4%対7.7%、6.9%対8.2%で、どちらのデータも有意に後者の糖尿病有病率が高くなりました。さらに、後者の国では、肥満、全カロリー摂取量、全糖質摂取量や他の甘い物の摂取については前者の国とほぼ同じであるのに、2型糖尿病の有病率が高いことが示されたのです。

43カ国中、最も高フルクトース・コーンシロップの消費が多い国は、やはり米国です。日本は、ハンガリー、スロバキア、カナダなどに続き9番目です。特に驚いたことは、日本は砂糖の総摂取量は他の国に比べて低いのに、高フルクトース・コーンシロップの消費量は高い点です。ちなみに日本人の平均年間砂糖摂取量は29.49kgで、高フルクトース・コーンシロップの平均年間摂取量は6.19kgです。米国人の平均年間砂糖摂取量は68.59kgで、高フルクトース・コーンシロップの平均年間摂取量は24.78kgです。これに対し、フランス人の平均年間砂糖摂取量は39.58kgで、高フルクトース・コーンシロップの平均年間摂取量は0.15kgです。

国によって摂取する糖の種類・量がいかに違うか、本当に驚きます。これからは、糖分を選択するときに、糖分の種類にも注意が必要ですね。

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