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食物アレルギー知って命を救おう

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

大人が受けたい今どきの保健理科24

吉田のりまき

薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰

 アレルギーの原因となるアレルゲンは様々です。花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎などでお困りの方が多いため、今の時代、何が原因で、症状やどういう対策をすればよいのかを知っている人が増えました。しかし、同じアレルギーでも、食べ物がアレルゲンになるアレルギーのことは、意外と知られていません。自分が実際に困ったことがなければ、知る必要もなく、知らなくても生きていけるからでしょう。

 自分でコントロールできるアレルギーを持っている人は、アレルギーのことを軽く考えがちです。しかし、食物エネルギーは、自分で何らかのコントロールができるものではなく、アナフィラキシーショックなどのような命に関わる過剰反応が起こります。その命を守ってあげられるのは、その人ではなく周りの人です。ですから、社会全体で健康を考えた時、知らないでは済まされません。

理解しづらい免疫

 アレルギーが免疫の過剰反応で起きることはよく知られています。そのため、まずは免疫について勉強をし始める人がいますが、どうも長続きしないようです。免役の仕組みが想像を超えるほど難しすぎて嫌になるそうです。今の大人たちは、免疫について学習する機会が全くなかったわけですから、仕方がありません。

 現在のカリキュラムでも、高校の生物でやっと学習する内容です。中学理科では、白血球の登場の際に「異物を分解する」という程度の書き方があるだけです。中学保健では、健康な生活と疾病の予防のところで免疫という言葉は出てきます。義務教育の理科でも保健でも、アレルギー反応や免疫の仕組みということを学習する機会はないので、難しいと感じているのは、今の大人だけでなく、若い人たちも同じです。

 免疫は生命維持のための素晴らしい仕組みです。体内に入ってきた異物をあの手この手で除去しようとし、何段階も防御体制があります。簡単に理解できないくらい複雑で巧みな仕組みだからこそ、異物から生命を守ることができます。

 免疫を全部知ろうと思わず、どの段階でどんな異常を起こすのかを知って健康に役立てていくのがよいのではないかと思います。

 免疫には記憶システムがあります。同じ異物が再侵入した時、すぐに対処できるよう準備をしています。この記憶システムを利用したのが予防接種です。抗原(病気を起こさないように処理した病原体の目印)を入れて、体に抗体を作らせ、病気を起こす本物の抗原がやってきたときに抗体に活躍させているのです。

 しかし、この記憶システムが一度間違った解釈をしてしまうと、なかなか修正されません。この頑固さが命を守り続けてくれるのですが、異物でないのに毎度過剰に大騒ぎをするのがアレルギー反応です。花粉症の場合、鼻水、くしゃみや涙などは自分でケアをすれば何とか済みますが、食物アレルギーの場合は、命に関わるほどの過剰反応を起こしてしまいます。

 食物アレルギーのアレルゲンは特定されているので、一般の人たちからすれば簡単に避けられると思っているようです。ですが、そうではありません。口にしなくても症状が出ることがあります。また、知らないうちに口にしてしまうことがあります。

ガイドラインを読もう

 厚生労働省や文部科学省では、食物アレルギーを持つ子どもたちが安心して園や学校生活を送れるよう、ガイドライン(指針)の制定を進めてきました。ようやく平成20年に日本学校保健会から「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が、平成23年には厚生労働省にから「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が出されました。ご存じですか? よかったらぜひ目を通してみてください。ネットで検索すれば出てきます。

 いざという時のガイドになるものですから、かなり詳しいです。この中身を読んで、十分に理解できるのは医療関係者と患者(お子さん)のご家族くらいでしょう。園、学校や保育所の先生方は、実体験がないと理解しづらい内容だと思います。しかし、現場に居合わせる立場として、知らないでは済まされません。そのため、全く知らない先生方でも読んで分かるように、知っていてほしい要点がまとめられています。

 私たちも、いざというときに活用できるようにガイドラインの存在を知っておくことが、とても重要なことです。周りにアレルギーの人がいようがいまいが、読んで概略を知っておけば、後悔しないで済みます。

 健康意識が高まっている現代において、とかく自分の健康だけを考えがちですが、自分とは無縁の疾患に対しても目を向けることの大切さを意識したいと思います。それが今どきの大人の保健理科ではないかと考えます。

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