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両目で気づかない疾患 時々片目つぶって防ぐ
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大人が受けたい今どきの保健理科5
吉田のりまき
薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
目の構造はカメラにたとえられることが多いのですが、カメラと違ってレンズは二つあることに留意して目の不調を見逃さないようにしましょう。
カメラとPCの関係
小学校では目の仕組みについて学習しませんが、視力検査を毎年行っているので、近くを見る時と遠くを見る時とで水晶体の厚みが変わってピントを合わせていることはよく知られています。厚みを調節する機能が落ちないようにするために、近くばかりを見ないで時には遠くを見ましょうという指導も行き渡っています。
中学理科では、外界から受ける刺激に対して動物がどのように反応するかを学ぶことになっています。刺激を受け取る感覚器官の一つとして目のつくりを学習するのですが、主に出てくるのは「水晶体」「虹彩」「網膜」「視神経」で、中にはレンズの厚みを変える働きをする筋肉を図示している教科書もあります。
目の仕組みはカメラの構造に例えやすく、レンズ=水晶体、フィルム=網膜、絞り=虹彩として説明されてきました。ところが今はオートフォーカスのデジカメが主流となり、絞りやフィルムを知らない子どもたちが増え、かつての説明だけでは理解しづらいこともあるようです。
その一方で、網膜に映った像はデータに過ぎず、視神経を通って脳に送られ、脳が画像処理をして初めて「見た」という状態になることは理解しやすいようです。撮影したSDカードのデータをパソコンに取り込み、パソコン上で画像処理をする作業と似ているからです。
水晶体を通った光は一つの点に集まります。この点を焦点といい、ピントが合ってよく見えるというのは、焦点がきちんと網膜上に来る時です。中学理科では、レンズを通過した光の進み方も学習します。焦点でない場所にスクリーンを置くと像がぼやけることを実験で確かめるので関連付けしやすいです。
保健では、理科で言うところの「外界の刺激」によって健康が損なわれないように必要な明るさが示されています。
眼疾患の構図
カメラのレンズが汚れると良い写真を撮れないように、ヒトの水晶体が白く濁ってくると物を見づらくなります。これが白内障といわれるものです。
眼の病気には、水晶体以外の部分に不具合が生じるものがあります。進行を食い止めずに放置するとやがて失明してしまいます。
緑内障というのは、視神経に損傷が生じる病気です。網膜に映し出されたデータを脳に送ることができなくなるので、網膜では見えているのに脳では見えない状態になります。原因の一つとして眼内の圧力が高くなって視神経を圧迫することが挙げられますが、視神経は取り換えることができないので、早期に発見し進行を食い止める必要があります。
加齢黄斑変性症というのは、黄斑の部分が加齢により変性する病気です。黄斑は学校では出てこない用語なのであまり知られていませんが、網膜の中心部で最も感度が良く文字通り黄色っぽい部分です。網膜上で一番良いデータを得られる大事な部分なだけに、ダメージがあると影響が大きくなります。損傷があると視野が欠損し、凸凹になっているとデータが歪んで見えます。進行すると失明につながります。
黄斑と視神経の場所はとても近いのですが少しだけ離れています。視神経から脳にデータが送られるので、一番良いデータが視神経のところで得られると誤解している人がいますが、神経細胞ではデータを読み取れず、その部分のデータは脳に届いていません。いわゆる「盲点」になっています。
二つあって気づかない
顔の前に人差し指を1本立て、交互に片目をつぶってみてください。指も体も動いていないのに、指の位置がずれて見えます。これは、それぞれの目で見ている景色がわずかに異なっているからです。そして、このずれが脳で処理されることにより、私たちは景色を立体的に見て、物との距離を正確に把握することができます。
最近では3D写真を簡単に撮影できるカメラが発売されていますが、ヒトの目のように少し離れた位置にレンズが二つ付いています。
脳は、このように視神経から送られてくる二つのデータを処理する能力を持っていますので、片方の目に不具合があったとしても、不具合のない方の目から送られてきたデータを使って補正してしまいます。そのため異常に全く気づかないまま暮らしてしまい、気がついた時にはかなり進行して手遅れになることがあります。
目が二つあるからこそ発見が遅れるというデメリットにも留意し、時には片目だけで物を見て目に異常がないかチェックする習慣を持つようにしてください。
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