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ヘルシー食 VS 不健康食:わずか150円/日の違い

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ダイエットや健康に興味はあるけれど、レストランで生野菜サラダを頼むと家で作るよりぐんと高くつくイメージがありませんか?確かに商品管理や流通等の仕組み上、そうなる理由もあります。そのせいか、「ヘルシー食はインスタント食品やファーストフードと比べて高い」などと考えがちですよね。でも本当に健康を考えて、健康的な食材を選んで調理するなら、長期的に見れば、不健康な食事とのコスト差は思ったほど大きくはないようです。

大西睦子の健康論文ピックアップ69

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

ファーストフードや加工食品など、いわゆる不健康な食事と、新鮮な素材を使ったヘルシー(健康的)な食事、どちらが経済的だと思いますか?ヘルシーな食品は、かなり高価なイメージがありますが、実は、1日1.5ドル(約150円)の違いであることが、ハーバード大学公衆衛生の研究者によって報告されましたので、今回ご紹介させて頂きます。

Rao M, Afshin A, Singh G, et al.
Do healthier foods and diet patterns cost more than less healthy options? A systematic review and meta-analysis.
BMJ Open 2013;3:e004277.
doi:10.1136/bmjopen-2013-004277


研究者らは、高所得の10ヶ国から報告された27の研究結果(~2011年12月)についてメタアナリシス※を行いました。これらの報告では、ヘルシーな食事と不健康な食事の価格差や、一食分当たりの価格差、200キロカロリーおよび2,000カロリー(米国成人一日平均の推奨摂取カロリー)あたりの価格差などを比較しています。また、27の研究のうち14が米国、6がヨーロッパ、2がカナダ、そして残りは南アフリカ、ニュージーランド、日本、ブラジルを含むその他の国からの報告です。


食品の価格差は、①肉/タンパク質、②穀物、③乳製品、④スナック類/菓子、⑤脂肪/油、⑥ソーダ/ジュースをそれぞれ含む6つの大きな食品グループごとに検討されました。その結果、食品群の中でも、肉/タンパク質が最大の価格差がありました。ヘルシーな食事は、0.29ドル/1食分、0.47ドル/200キロカロリー、不健康な食事よりも高価でした。ところが、穀物(0.03ドル)、乳製品( - 0.004ドル)、スナック/甘いお菓子(0.12ドル)と、脂肪/油(0.02ドル)とソーダ/ジュース(0.11ドル)は、有意な差はありませんでした。


また、20の研究では食事パターンの価格差を評価しています。そのうち14の研究では、食品ベースで食事パターンを検討し、7の研究では栄養素ベースで食事パターンを検討しています(両方のアプローチで検討している研究が1つありました)。その結果ヘルシーな食事は不健康な食事に比べ、食品ベースの食事パターンでは、1.48ドル/日、 1.54ドル/2000キロカロリー、より高価でした。栄養素ベースの食事パターンで比較すると、2000キロカロリー当たりの価格は1.56ドルだけヘルシー食が高価であったのに対して、一日あたりの価格に有意差はありませんでした。


以上のように、結果は、果物、野菜、魚のようなヘルシーな食品は、加工食品やスナック類、精製された穀物のような不健康な食品よりも一日あたり約1.50ドル高価になりました。なぜなら、現在の食糧政策は、安価で容易に大量生産できる加工食品などの食品業界が、より多くの利益を得ることができるよう、サポートしているからです。


ハーバード大学のDariush Mozaffarian教授は、以下のように述べています。

「ヘルシーな食事は不健康な食品より高価でしたが、その差は、多くの人々が予想したよりも少なかったのです。つまり健康的な食事をするためには、1人あたり1.50ドル/日、高くつくだけです。そもそも1.50ドル/日というのは、人や社会が一生のうちに負担する、食生活に関連した慢性疾患がらみの費用に比べれば、大した額とは言えません。ただ、それでも1年間には約550ドル増加します。家庭の負担になり、低所得者には追加の費用を支払うことができない可能性もあります。この差をなくす政策が今後必要とされると考えます」


例えば不健康な食品には課税し、ヘルシーな食品には補助を出せば、価格差を埋めるためのエビデンスに基づく施策になるでしょう。このようにして食品の生産・流通に関する経済システムを改善すれば、よりヘルシーな食品がより身近になり、貧しい食生活に関連した慢性疾患に投入される医療費も低下するでしょう。


※複数のランダム化比較試験(データの偏りを軽減するため、被験者を無作為(ランダム)に「処置グループ」と「比較対照グループ」(プラセボ群など)に割り付けて実施・評価を行う試験)の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のこと。メタ分析、メタ解析とも言う。根拠に基づいた医療において、最も質の高い根拠とすることができるとされる。

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