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ナッツを食べて、ヘルシーになろう!
ナッツ類、日本ではお菓子の脇役やお酒のおつまみ程度に思っている人も少なくないでしょうか。でも実は、もっともっと見直されなければいけない存在のようです。
大西睦子の健康論文ピックアップ51
大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。
ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。
皆さんは「ナッツ」にどのようなイメージを持っていますか?「美味しいけど、太りそうだから食べない」と敬遠されている方も多いかもしれません。確かに油脂分が多く、食べ過ぎたら翌日にニキビができた、なんて経験をされた方もいるでしょうか。でも、ナッツは同時にダイエット時にも必要な栄養にも富み、実はとてもヘルシーなのです。その理由と、実際、どれだけ食べればいいのか、最新の2つの報告を参考にしながら、考えてみましょう!
ところでまず、あなたの一番好きなナッツは何ですか?「ピーナッツ」、とお答えになった方はいらっしゃいませんか?実は、ピーナッツ=落花生は、豆科ラッカセイ属の一年草。つまり大豆などと同じ「豆」で、正式な分類上は「ナッツ」ではありません。一方の「ナッツ」はアーモンド、ピスタチオやクルミなど、堅い殻や皮に入ったいわゆる食用の「木の実」を乾燥させたもので、正しくは種実類(果実や種)、あるいは堅果とも呼ばれます。ただ、今回はピーナッツも含めて「ナッツ類」ということで話をしていきますね。と言うのも、ピーナッツはナッツと同じような栄養価だからです。
では本題です。雑誌『BMC Medicine』に、55歳から80歳までの7,216人を対象としたスペインでの心血管疾患予防の調査「PREDIMED」において、ナッツ類、とくにクルミを食べる人は長生きをすることが報告されました。もともと地中海地域では、他の国と比べてナッツの消費量が比較的多いのですが、この調査では、地中海ダイエットにランダムにエキストラバージンオリーブオイルもしくはナッツ類を補ってグループ分けし、比較対象群の低脂肪ダイエットのグループと比較しました。参加者の最も多くが4.8年間ほど調査に協力しました。
この結果、ナッツを食べている人はBMI※1が低く、ウェストが小さい傾向にありました。さらにナッツ類を食べる人は、全く食べない人やめったに食べない人よりも喫煙者が少なく、身体的にアクティブになっていました。またナッツ類を頻繁に食べる人ほど、より多くの野菜、果物、魚を摂取し、一般的に良い食生活を送る傾向がありました。、ナッツ類を食べているグループでは、2型糖尿病※2や高血圧のために治療を受けている人も少なかったのです。
最終的に、ナッツ類を1週間に3サービング(1サービング=28グラム)を食べている人は、食べない人に比べて39%も死亡率のリスクが低く、特にクルミを食べている人では45%も低下していました。またナッツ類を食べている人の心血管疾患による死亡リスクは食べていない人より55%減少し、がんのリスクは40%減少しました。同様の効果がクルミのみでも実証されました。
この研究を行ったロビーラ・イ・ビルジリ大学のJordi Salas-Salvadó教授は、「どうしてナッツ類が早死を防ぐのかは、はっきり分かりません。また、なぜクルミが他のナッツ類よりも優れているのかも、明確ではありません。クルミにはαリノレン酸※3や植物中に存在する天然の化学物質であるフィトケミカル※4が多く含まれていて、さらに、繊維、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラル※5も含み、これらがあいまって健康に良い効果をもたらすと考えられます」と述べています。
さらに、雑誌「PLoS One」にも、ナッツに関する新しい報告が掲載されました。7,210人の 「PREDIMED」の参加者(平均67歳)について、ナッツの摂取と肥満、メタボリック症候群※6、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症※7(コレステロール※8、トリグリセリド※9)の関係を評価したのです。
この調査によって、以下のことがわかりました。
1週間に、ナッツ類を3サービング以上摂取した参加者は、1サービング未満の参加者に比べて、2型糖尿病、肥満、メタボリック症候群の罹患率が低くなりました。ただし、以前の研究では、ナッツ類の消費量が、これらの要因にプラスの影響を与えることが示されていましたが、この調査では、ナッツ類の摂取量と高血圧、脂質レベル、空腹時血糖の上昇には関係はありませんでした。
ナッツ類は、タンパク質、ミネラル、食物繊維や不飽和脂肪酸などの、良質な栄養素を含みます。ですから、むしろ積極的に食事に取り入れることで、健康長寿に役立つというわけです。ただし、ナッツ類を選ぶときは、加工されたものや、油脂類で調理(ロースト)されたものは注意して下さいネ。シンプルな、生や乾燥させたナッツ類が栄養価が高く、ヘルシーです。もちろん、いずれにしても一度に食べ過ぎるのはNG。適量を続けることが大事です。