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睡眠は、記憶も筋肉も守る

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 あなたは1日のうち、どのくらい睡眠に時間を費やしますか?

 ヒトや動物は、1日のうち数時間は睡眠をとることで生きています。睡眠の一番の効果は疲労回復にあると言われていますが、実は疲労回復以外にも効果のあることが分かってきました。

元看護師ライター 葛西みゆき

睡眠が新しい記憶を定着させる

 アメリカのスクリプス研究所のロン・デイビス氏らの研究グループが、有力科学誌であるセル誌で2015年6月11日にした報告によると、ヒトの脳は"睡眠"をとることで、物事をよりよく"記憶する"という仕組みのあることが分かりました。

 その中で重要な働きをするのは、脳内麻薬とも呼ばれている"ドーパミン"。元々"記憶"に関係する神経伝達物質であることは知られていましたが、忘却とも深い関係があることが分かったそうです。

 そのメカニズムを調べた結果、ドーパミンの働きの強弱が記憶や忘却に関係していることが分かりました。分かりやすい例を挙げてみましょう。

 ドーパミンの働きのスイッチのオフにすると、記憶が脳内にきちんと定着されます。逆に、スイッチをオンにすると、ドーパミンそのものが、脳内に新しい記憶を蓄えることを邪魔してしまうということです。

 さらに、睡眠がより深くなると、ドーパミンを放出する神経細胞の反応は鈍くなり、より安定した記憶が残ることも分かりました。脳内での神経細胞の反応をいったん弱めることで、新しい記憶が脳内に蓄えられるということです。

「睡眠が新しい記憶を守る方法は、記憶を忘れさせる働きがあるドーパミン放出神経細胞の働きを抑えること」と研究グループは指摘しています。

 何かを覚えようとする時には、いったん寝るというのが、遠回りのようで早道なのかもしれません。

睡眠前のタンパク質摂取が筋肉を強くする

 また、別のある研究では、"睡眠"前のタンパク質摂取と、筋肉量と強度の関係を調査しています。オランダのマーストリヒト大学が中心となる研究グループが、アメリカの栄養学会が発行する、ジャーナル・オブ・ニュートリションのオンライン版で2015年4月22日に公表したものです。

 研究グループはまず、若い男性44人(平均22歳の)をランダムに2つのグループに分け、12週間の"レジスタンス・トレーニング"を行いました。レジスタンス・トレーニングとは、筋肉に負荷をかけて、筋力や筋持久力といった骨格筋機能を高める、いわゆる筋肉強化訓練法です。

 このトレーニングの期間中に、1つ目のグループは、睡眠前にタンパク質サプリメント(タンパク質27.5g、炭水化物15g、脂質0.1g)を摂取。もう一方のグループは、ゼロカロリーのニセ薬(プラセボ)を摂取し、筋肉の増強度を比較しました。

 その結果、平均筋力はタンパク質のサプリメントを取ったグループがおよそ164kg、プラセボのグループがおよそ130kg。つまり、グループの筋力の平均は、タンパク質サプリメントを取ったグループの方が約30kg多くなっていたのです。また、太ももの筋肉の断面積をみると、サプリメントを取ったグループが平均8.4㎝2、プラセボのグループは平均4.8㎝2でしたので、2倍近くまで増えていました。さらに、筋肉には遅筋(赤くて縮む速度が遅い)と速筋(白くて縮む速度が速い)があります。両グループともに遅筋・速筋とも増加しましたが、サプリメントを取ったグループの方がプラセボのグループよりも、速筋が2倍以上増加しました。

 つまり、寝る前に良質なタンパク質を取ると、レジスタンス・トレーニングによる「筋量と筋力の増加」を、バックアップしてくれることが実証されたと言えます。

 一般的に"赤ちゃんは眠ることが仕事"と言われています。産まれたばかりの乳児は、毎日の様々な刺激を驚くほどのスピードで吸収し、"記憶"することで成長していきます。これは大人になっても同じこと。乳児の頃とは形を変えていますが、"睡眠"が単に体を休めるための手段ではなく、脳やカラダを作り上げる大切な時間であるということが分かったのです。眠っている間も、脳の一部はずっと働きながら必要な情報を処理し、私たちのさらなる成長を助けようとしてくれている、と言えるのではないでしょうか。


参考WEB

深い睡眠を取ることで、より「覚える」ことができる仕組みが分かった(英語)


睡眠前にタンパク質を摂取すると、特に健康な若い男性における長期の抵抗型運動トレーニング中に、筋肉量と強度が増加する(英語)

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