全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

太ったら、運動だけで体重増加は止まらない

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 米国で女性対象に運動量と体重増の関係を調査したところ、既に体重超過となっている場合、運動をするだけでは体重増の予防効果はないという結果が出ました。食事制限も併せて行う必要があるようです。

Physical Activity and Weight Gain Prevention
I-Min Lee, MBBS, ScD, Luc Djoussé, MD, DSc, Howard D. Sesso, ScD, Lu Wang, MD, PhD, Julie E. Buring, ScD
JAMA. 2010;303(12):1173-1179. doi:10.1001/jama.2010.312


川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 基本的に、体重増加はカロリー摂取がカロリー消費を上回った時に起こる。多くの研究が、カロリー制限ありやなしの状況で体重超過や肥満の人々における身体活動と体重減について検証してきている。体重減には効果的方法が存在するが、いったん体重が減った人の大多数は体重減を維持できていない。米国成人は通常年齢とともに体重が増えるので、不健康な体重増加を予防する方法を開発することによって、体重減に取り組みそれを維持する必要がなくなるかもしれない。体重超過や肥満に対する治療研究が数多く存在するのと比較すると、体重増加を予防することに関する研究はほとんど存在していない。

 不健康な体重増加を予防するための基本は、必要となる身体活動量に関する明確な指針の存在である。2008年の米国の指針は、実質的な健康効果を得るためには中強度の有酸素運動を1週あたり少なくとも150分することだと推奨しているが、この量の運動が体重増加予防になるのかどうか明確ではない。一方で、IOM(*1)は、体重超過や肥満を予防するためには、1日あたり60分(週に420分)の中強度運動が必要だろうとしているが、この推奨の根拠も疑義のあるところとなっている。多くの人が、3倍にもあたる週に420分の運動をするよりは150分の方にしたいと思うだろうことからも、このように互いに異なる推奨について明らかにすることは重要なのである。

 本研究においては、13年にわたって追跡調査を受けた大規模女性コホートにおいて、異なる身体活動レベルと体重変化の関連を検証した。

●方法

(1)対象者
 Women's Health Study(*2)という前向きコホート研究の34,079人の女性を対象とした。本来の目的である低量アスピリンとビタミンEの無作為投与試験中は、初年は6カ月に1度、その後は1年に1度、健康に関するアンケートに記入を行った。2005年の5月に開始された、観察的追跡調査期間においても1年に1度アンケートに回答した。体重に対する影響を考慮し、心臓血管疾患やがんを発症した女性、また、ベースライン時に身体活動や体重に関するデータに不備のあった人を除外した。

(2)身体活動評価
 対象者は、ベースライン時健康アンケートにおいて、過去1年間に8グループの余暇活動に週あたり平均どのくらいの時間取り組んだかを報告した。
1 ウォーキングまたはハイキング
2 ジョギング(1マイルあたり10分超のスピード)
3 ランニング(1マイルあたり10分以下のスピード)
4 室内固定自転車を含むサイクリング
5 有酸素運動、エアロビダンス、トレーニングマシン運動
6 ヨガ・ストレッチ・トーニングなど低強度運動
7 テニス、スカッシュ、ラケットボール
8 ラップスイミング

 通常歩く時の速さと1日あたりに登る階段数も報告した。

 それぞれのグループの活動に対するエネルギー消費を週あたりの代謝当量(MET)に換算し、総計を出すことで1週間のエネルギー消費量とした。

 身体活動結果は、投与試験中の36、72、96カ月と、観察的追跡調査期間中の120、144カ月に更新された。それぞれの評価時に、女性を3群に分けた。

1 1週あたり7.5MET hours未満(中強度運動に換算して1週あたり150分未満に相当)
2 1週あたり7.5 MET hours以上~21MET hours未満
3 1週あたり21 MET hours以上(中強度運動に換算して1週あたり420分以上に相当)

(3)体重および他変数の評価
 女性たちは、ベースライン時および追跡期間中定期的に体重報告を行った。本研究では、ベースライン時、追跡期間中36、72、96、120、156カ月での体重データを使用した。

 身体活動と体重の関係において潜在的交絡因子となる以下のような情報についても報告を行った。人種(自己申告)・教育レベル・身長・喫煙状況・閉経状況・閉経後のホルモン剤使用・糖尿病・高血圧・アルコール摂取・131品目からなる食品摂取頻度調査による食事状況。

(4)統計分析
 最初に、ベースライン時の身体活動3グループの特徴を比較し、研究中の身体活動と体重の傾向を検証した。続いて身体活動3グループでの体重における前向き変化を時間経過とともに更新された身体活動との関連で検証した。

 統計モデルとしては、年齢・ベースライン時体重・身長・体重評価の時間的間隔で調整を加えたものと全体的に調整を加えたものを用意した。全体的調整においては以下のような点を考慮に入れた。
1 人種(白人か白人でないか)
2 教育レベル(2年のアソシエイト学位取得以下、3年のアソシエイト学位取得、学士取得、修士以上)
3 喫煙状況(喫煙歴なし、過去に喫煙、現在喫煙)
4 閉経状況(閉経前、閉経後、不明)
5 閉経後のホルモン剤使用(使用歴なし、過去に使用、現在使用)
6 糖尿病診断(なし、あり)
7 高血圧診断(なし、あり)
8 アルコール摂取(摂取なし、月に1~3杯、週に1~4杯、週に5杯以上)
9 総エネルギー摂取量(5群分類)
10 飽和脂肪摂取
11 フルーツ摂取
12 野菜摂取

 さらに、体重変化について、身体活動と年齢(55歳未満、55~64歳、65歳以上)、BMI(標準25未満、体重超過25以上30未満、肥満30超)、喫煙状況、閉経状況との相互作用も検証した。並行分析においては、身体活動と体重評価における時間的間隔における2.3kg増を有意体重増とした。


●結果

 ベースライン時の平均年齢は54.2歳で、BMIと体重は身体活動レベルと負の相関にあった。より活動的な女性の方が、修士以上の割合が高く、閉経後のホルモン剤使用傾向も高かった。また、危険因子や病歴面でもより健康状態がすぐれていた。

 ベースライン時から156カ月目までの平均追跡期間は13.1年となった。ベースライン時においては、49.5%の女性が週に7.5MET hours未満、28.8%が7.5 MET hours以上~21MET hours未満、21.7%が21 MET hours以上の身体活動をしていた。最も活動的ではない群の割合は時とともに減少し、最も活動的な群の割合が増加した。身体活動の最終評価となった144カ月目においては、週に7.5MET hours未満が34.2%、21 MET hours以上が35.5%となった。

 予想通り、体重は時の経過とともに増加した。ベースライン時では平均体重70.2kgであったものが、研究終了時には72.8kgになった。身体活動3グループともに、時とともに同じようなパターンで体重が増加した。

 次に、身体活動を時の経過とともに更新したものによって、平均2.88年ごとの体重の前向き変化を検証した。すべてに調整を加えたモデルにおいて、週に21 MET hours以上の群と比較して、7.5 MET hours以上~21MET hours未満では0.11kgの体重増加、7.5MET hours未満では0.12kg増加した。この2グループ間での差は、統計的に有意とならなかった(P=0.77)。

 身体活動と体重変化の関連が年齢・BMI・喫煙状況・閉経状況に左右されるのかどうかを調べたところ、年齢・BMI・閉経状況とは優位な相互作用のあることが分かった(年齢・BMIともにP<0.001、閉経状況P=0.04)。より低い身体活動レベルの女性に体重増加傾向が見られるのは、年齢が65歳より若く、BMIが25より低い女性のみで、増加の大きさは最も活動的ではない閉経前の女性において、閉経後の女性よりも大きくなった。

 次に、平均2.88年間の間隔において2.3kg以上の体重増加になる見込みについて前向きに検証した。すべてに調整を加えたモデルにおいて、週に21 MET hours以上の群と比較して、7.5 MET hours以上~21MET hours未満では7%(信頼区間95% 4%~11%)、7.5MET hours未満では11%(7%~14%)、2.3kg以上増加しやすくなることが分かった。BMIとは有意な相互作用となることが分かったが(P<0.001)、年齢・喫煙状況・閉経状況とは有意にはならなかった(P>0.05)。BMIが25未満の女性においてだけ、より高いレベルの身体活動をすることで2.3kgの体重増加にはなりにくくなることが分かった(P<0.001)。BMIが25以上30未満(P=0.13)、および30超(P=0.37)の女性においては何ら関係は存在しなかった。

 最後に、標準体重を維持した女性たちがどのくらいの身体活動を行ったのかを調べた。4,540人の女性(13.3%)が、ベースライン時BMIが標準、研究期間を通じてBMI標準を維持、どの評価時点においてもベースライン時体重より2.3kg未満の体重増加を成し遂げた。ベースライン時、36、72、96、120、144カ月の平均身体活動レベルは、それぞれ、17.6、19.9、18.9、22.1、24.2、26.1MET hours/週となり、追跡調査期間中の平均は21.5MET hours/週だった。

●考察

 今回の13年間にわたる追跡調査を受けた中年から老年の女性コホートにおいて、時の経過とともに全体的な体重増が認められた。週に420分の中強度運動に相当する身体活動を行っている群と比較すると、150分以上420分未満、150分未満の群においては、この2グループ間での差異はないものの、有意な体重増加が認められた。また、最も身体活動の多いグループよりも、3年間で2.3kgの体重増となる傾向も有意であった。

 BMIと相互作用のあることが分かり、標準体重の人にのみ身体活動と体重増加との間での負の相関が見られ、より体重の多い人たちの間での相関は見られなかった。13年間を通じて2.3kg未満の体重増しかなかった標準体重群の対象者は、1日あたり60分の中強度運動に相当する身体活動を行っており、これはIOMの推奨する運動量となっている。

 本研究結果から、体重増加予防に関して二つの重要な点を強調しておく。まず、一度体重超過となってしまったら既に遅いということである。本研究の対象者が実施したレベルにおいては、身体活動が体重増加を軽減するということにはならなかったからである。

 もう一つは標準BMIを維持しながら体重増加を予防するためには、1日あたり60分という高いレベルでの身体活動が必要になるということである。本研究対象者は、通常の食事を撮っている女性であり、2008年の米国の推奨基準である週に150分では足りないことが分かった。通常体重維持者のみにおいて身体活動と体重増加との間に負の相関が見られたのであり、それ以外のグループの属する人たちにとっては、カロリー摂取を調整することが重要であることも強調しておく。

1 |  2 
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
  • Google+
  • 首都圏・関西でおなじみ医療と健康のフリーマガジン ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索