全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

医者を選ぶより、友達を作ろう-医療法人悠翔会理事長・佐々木淳氏②

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関東で3500人の在宅患者を抱え、看取りも行う在宅医の佐々木淳氏(医療法人悠翔会理事長)は高齢者の終末期医療について講演し、身体機能が低下しても社会とのつながりを持つことで生きがいを持って暮らしていけると語った。社会との関わりがある人はない人より死亡率が低いという研究報告を示し「私たちの寿命に影響を与えるのは社会とのつながり」、「医療よりも、近隣の支え合いや友達。医者を選ぶより、友達を作りましょう」と会場に呼びかけた。

ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

佐々木氏の同じ講演の別記事はこちら。「高齢者は病気より衰弱の予防、栄養ケアを-医療法人悠翔会理事長・佐々木淳氏①」

■ピンピンコロリは15%
佐々木氏は、日本の高齢者の死亡の現状について「老衰で穏やかに亡くなる人が5%、『ピンピンコロリ』の突然死する人が15%」と説明。80%は何らかの病気や障害を抱えながら入退院を繰り返すなどして亡くなっていくと解説した。

■健康寿命延びても療養期間は同じ

平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳であるのに対し、健康寿命はそれぞれ71.11歳、75.56歳と示した上で、「年々健康寿命は延びている」と述べた。ただ、健康寿命の延びと共に平均寿命も延びており、医療や介護を必要とする期間に変化はないことを強調。「健康寿命を延ばすことで死ぬまで元気でいるということはできない、ということを私たちは受け入れなければいけない。私たちの人生の最期の10年は療養の時期。好むと好まざるとにかかわらず医療と介護と共に生きていかねばならない」と語った。


■社会とのつながりが寿命に影響与える
心筋梗塞患者の退院後半年間の死亡率が、家族も友達もいる高齢者の場合は約3割だが、両方ともいない場合は約7割だったという海外の研究報告を示した。さらに、食事の形態で死亡リスクが変化することを研究した国内の調査も紹介。独居の高齢男性について、一人で食事を食べる「孤食」だと死亡リスクが1.18、地域や施設などで共に食べる「共食」だと0.84と低くかったと示した。

寿命に影響を与える要因では、「『つながり』がある」が最も大きく、「タバコを吸わない」「お酒を飲み過ぎない」「身体を動かす」などが続くと海外の研究報告から説明した。

佐々木氏は、「医療よりも大切なものがある」と述べ、今後より健康的に生きていくためには高齢者が地域で新しい役割を獲得したり、多世代と交流していくことが大事とした。「『私はこうやって生きたい』という自己決定を支えられる、そういう地域があれば高齢になっても楽しく暮らせるのではないか。地域全体がそう変わっていくことが必要」「私たちの寿命に影響を与えるのは、社会とのつながり。私たちはお医者さんが治してくれると思っているけど違う。友達、居場所、これらがあるからこそ、健康でいられるし、病気になったとしても死なずにいられる。体の機能が落ちても、自分の人生や生活を継続することはできる」と語った。
  
 
 
 
◆この記事に関連するロハス・メディカルの過去記事
それって本当? 笑わない人ほど不健康(2016年2月号)
それって本当? 前向きな気持ちが認知症リスクを下げる(2015年9月号)
 
◆「高齢者と社会とのつながり」については書籍「地域包括ケアの課題と未来」の中で「社会的包摂」(小野沢滋氏、渡邉姿保子氏、著)「貧困と健康」(近藤克則氏、小松俊平氏、香田道丸氏、著)などの項にも詳しくありますので、ぜひご覧ください。
 


  • 患者と医療従事者の自律をサポートする医療と健康の院内情報誌 ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索