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消毒には、塩素やアルコールより、熱湯! 手洗いに薬用石鹸は不要!

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「有名シェフの料理番組で視聴者の衛生観念低下の恐れ、研究」というネットニュースを読みました。これ、私も以前からとても気になっていたこと。特に、何でもかんでも布きんで拭いて次の作業に移ってしまうのは、見るたびに「洗って~!」と画面に向かって叫びたくなります。知識の乏しい人や子供などが見て、自然に真似してしまうことは、充分あり得ますよね。手や調理器具の衛生管理のポイントを押さえておきましょう。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

料理番組の時間的制約も分かりますし、食材は加熱するから安全なのかもしれません。でも、生肉や生魚に触れた手を布きんで拭いただけで次のことをしたり、生肉・生魚を切った後のまな板を、これまた布きんでさっと拭いてすぐ野菜を切っていたり。見ている方は、「あ、その布きん、そのままそこに置いちゃうんだ」とか、「あ、その手でフライパン持っちゃったか。その取手、もう汚染されてるよね」......などなど、いちいち気になってしまうのです。

食中毒予防の3原則は、原因菌を食品に「付けない」、付いてしまったら「増やさない」、そもそも増える前に「やっつける」です。ただし、「増やさない」「やっつける」には限界や例外(※1・2参照)が多く、万全策とは言えません。確実なのは、「付けない」ことです。

「付けない」ために大事なのが、調理器具の消毒と手洗いです。

調理器具・キッチン用品の中でも湿ったまま放置されがちな、まな板や布きんは、あっという間に細菌の温床になります(まして洗わない状態で使いまわしたり、時間が経過すれば......)。まな板は包丁で付いた傷の中までは洗い流しきれないことが多いですし、布きんも洗っても汚れや細菌は完全には落ちず、乾かないうちに使ってしまうと細菌はどんどん増えていきます。手とは違って、きちんと消毒が必要。

「消毒」と聞くと、アルコールや塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を思い浮かべる人が多いことでしょう。たしかに、インフル対策ではアルコール、ノロ対策では塩素での消毒が有効であることは、かなり知られるようになりました。しかし、もっと人体にも安全かつ迅速で、効果も絶大な方法があるのです。

それは熱湯です。あまりに原始的(?)で盲点だった、という人もいるのではないでしょうか。

東京都福祉保健局の実験では、例えば0-157の除菌に一番即効性が高いのは、熱湯消毒でした(表)。煮沸はもちろん、まな板や布きんなら、熱湯をかけるだけで殺菌効果を得られるのです(くわしくはこちら)。アルコールや塩素系漂白剤は迅速性の点で熱湯にかなわないだけでなく、ニオイが気になる人も少なくありませんよね。熱湯なら、薬剤が残る、とか、すすぎが不充分、といった不安要素とも無縁です。


ロハス・メディカル 2016年7月号 「食中毒の予防には熱湯消毒が一番早い~それって本当?」より)
熱湯消毒.png
手洗いの基本は、石けんを使って、指の股や手首まで、30秒はかけて行うこと。石鹸は「薬用」でなくてもかまいませんし、消毒も必要ありません。「薬用」であっても、殺菌力が強いとは限りませんし、そもそも石けんは殺菌する目的ではなく、手の汚れを落ちやすくし、汚れと共にばい菌を除去する目的で使うものだからです(詳しくはこちら)。

昔ながらの熱湯・煮沸消毒を上手に取り入れ、手は普通の石鹸で良いのでしっかり洗って、安全に美味しい料理を楽しみたいですね!


※1・・・加熱でも死なない原因菌がいます。
例えば、また、ウェルシュ菌という食中毒菌は、ヒトや家畜の腸管内(糞便)や土壌にいる細菌で、屠さつ~解体の過程で肉に付いたり、根菜類に付いていたりします。この細菌の怖いところは、加熱しても「芽胞」という耐熱カプセルにこもって生き続け、やっつけきれないことが多い点。特に、シチューやカレーなどの煮込み料理などを、「残ったけど、まだ熱いから冷蔵庫には入れられないね」と鍋に入れたまま放置しておくと、温度が下がってきて絶好の増殖環境に。再加熱した時に、きっちり中心部まで熱々にせず食べごろ程度の温度で火を止めてしまうと、もうアウトです。

※2・・・増えた後にやっつけても食中毒は起きます。
また、加熱することで原因菌そのものは殺せても、毒素は分解されずに食中毒を発生させてしまうものもあります。代表例が黄色ブドウ球菌。何と人間の皮膚の常在菌でもあり、消毒などでも完全にゼロにするのは不可能です。調理の過程で食材についてしまうリスクは高いのですが、すぐに加熱してやっつけ、調理後もすみやかに低温保存して増やさないことが大事です。ただ、何より調理後、食べるまでの間に料理に付けないことが肝心。調理済みの食品は手で扱わないのが一番です。ちなみに、黄色ブドウ球菌による食中毒の一番の発生源は、おにぎり。握る時は、手で直接は避け、かならずラップの上からにしましょう。

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