全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。
トクホ不合格でも「機能性表示食品」? ――懸念と正しい活用法
先日、「『機能性表示食品』1200品突破 『サプリ』増加傾向に」との報道がありました。機能性表示食品は2015年4月に導入され、今年1月31日時点で1205品となったそうです。とはいえ、「機能性表示食品? そういえばそんなのあったっけ」「トクホと何が違うの?」という人もいるのでは? 注意すべき点を確認し、正しく食生活に取り入れましょう。
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
記事によると、
剤型別では「その他加工食品」が52.4%で過半数となっている。ご飯や食パン、缶詰、牛丼の具、ヨーグルト、チョコレート、飴など多様な食品が機能性表示食品として誕生した。
一方で2018年度だけでみると、剤型別受理数は「サプリメント」が53.2%。「サプリ」の受理が増加傾向にある。
とのこと。たしかに最近、「お腹の調子を整える」「糖や脂肪の吸収を抑える」「血圧が気になる方に」「寝つきの向上」など、具体的な健康効果を表示して販売されている食品が増えました。中には、チョコレートに乳酸菌、漬物や醤油にGABAなど、意外な組み合わせの商品も見られます。
この「機能性表示食品」、何となく「厚労省のお墨付き」というイメージがありますよね。そのために「トクホ」(特定保健用食品)との違いはきちんと認識されていないかもしれません。何が違うのでしょう?
端的に言えば、
●トクホ製品は、表示についての責任を国が引き受ける
健康効果と安全性の科学的根拠について、国(消費者庁)の審査を通過し、表示許可を受けている。
●機能性表示食品は、表示について国は責任を取らない
健康効果と安全性について、企業が責任を持って表示し、情報公開する。国はそれを監視する。
ということ。
大事なのは、機能性表示食品では、健康効果や安全性について、商品ごとに国の審査を受けているわけではない、ということです。責任を取るのは企業ですが、消費者としても自分の身を守るためには、公開された情報を自分でウェブサイトなどに見に行く必要があります。消費者自身が、書いてある内容と共に、その企業が信用に足るかどうかも含めて自分で判断しなければなりません。国が監視しているとは言え、それは表示が適正かどうかであって、商品そのものを吟味しているわけではないからです。
そう聞くと、「国の怠慢だ! 安易にお墨付きを与えて、だったら、消費者の健康や安全についてもっと責任を負うべきだ!」と言いたくなるかもしれません。ではなぜ、あえて「機能性表示食品」をトクホと別に創設したのか......。
実は、消費者にもメリットがあります。
トクホは国の審査を受ける以上、その準備に莫大なお金と時間がかかります。健康機能などについて科学的根拠を証明するための、厳密な実験を繰り返さなければならないからです。それができるのは、資金の潤沢な大企業に限られます。ですからこれまでは、中小企業が努力して消費者の健康に役立つ美味しい商品を開発したとしても、トクホ申請に足る準備をする資金が賄えず断念せざるを得ない、という参入障壁があったのです。
そうなると、企業はせっかくの健康機能をアピールできませんから、消費者もその商品に特別目を向けることはなく、健康機能を得るチャンスを逃してしまっていたわけです。(ただし、普段食べているもの、昔から食べられている食材は、「トクホ」でなくても何らかの健康効果はあるはずで、当たり前で意識されていないだけだったりします)
一方、機能性表示食品では、国の審査がない分、中小企業も参入しやすくなります。健康効果の高い成分を含むことを表示できれば、健康意識の高い消費者層への訴求力は高まります。そうした商品の開発への動機づけになり、実際に様々な機能性表示食品が店頭に並ぶことで、消費者にとっても選択肢が広がりますよね。
ただし、気を付けるべきは、過信や盲信です。
あくまで健康に役立つ成分が入っている、というだけで、薬ではありません。それどころか、トクホ不合格だった商品であっても、機能性表示食品としての表示・販売は可能なのです。申請に必要なデータも、トクホより基準は緩くなっています。
特に気がかりなのは、冒頭の記事にある「『サプリ』の受理が増加傾向にある」という点。「機能性表示食品」という看板を得たことで、それまでは健康食品やサプリの購入に慎重になっていた人も、気を緩める可能性があります。「科学的根拠を開示している」ということが、半信半疑で眺めていたCMや宣伝に対する心理的な障壁を下げてしまうからです。
科学的根拠を示しているからと言って、科学っぽい手法による"権威づけ"(表)を鵜呑みにしてよいわけではありません。
かしこく機能性表示食品を取り入れたい方は、是非以下の記事も参考にしてみてください。
●食品の健康機能表示 国は責任を取らない(ロハス・メディカル 2015年9月号)