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「ライト」たばこ、周囲への迷惑は自分のリスクの20倍?!
昨夕、「1日1本のたばこでも心臓発作のリスク大、英大学の研究」との報道がありました。1本吸って影響があるくらいですから、主流煙以上に有害と言われる副流煙の受動喫煙によって心臓発作が起きるのは無理もなさそうです。しかも「ライト」タバコを吸っても、周囲への迷惑は、まったく軽減されません!
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
報道によれば、タバコは1日1本でも、1日1箱(20本)吸う場合の50%程度の心臓発作・脳卒中リスクがある、とのこと。吸う量が20分の1になっても、心臓発作や脳卒中のリスクは20分の1にはならない、というわけです。
タバコが心臓発作や脳卒中を引き起こすのは主に、タバコに含まれるニコチンに血管収縮作用があるから。さらには、一酸化炭素は酸欠から脈拍上昇をひき起こし、活性酸素は血管を傷めて動脈硬化を進展させます。
少量でも影響があるのなら、主流煙よりも有害物質を多く含む副流煙に曝されることは、短時間でも問題がありそうです。実際、国立保健医療科学院の研究では、副流煙には主流煙の約5倍のニコチンが含まれていました。
では、パッケージに記載されているタールやニコチンの量が少ない「ライト」タイプのタバコはどうでしょうか?
実は、通常タイプのタバコと比べて健康への影響が軽減されそうなのは、主流煙を吸っている本人だけ。副流煙については、通常タイプのタバコと同程度、成分によってはそれ以上の有害物質が含まれていることも、上記の研究で確認されているのです。
主流煙だけ見れば、ライトタイプだと通常タイプよりもニコチン検出量が4分の1になっていますから、箱にもその数値が書かれています(フィルターを通した煙の分析値)。しかし、副流煙による周囲への放出量は、「ライト」にはならない、ということ。見方を変えれば、ライトタイプを1本吸うと、自分が体に入れている20倍(5×4ですね)のニコチンをまき散らしている、ということです。
タール、その他の発がん物質、一酸化炭素、ホルムアルデヒドといった刺激物質といった有害物質の全てについて、程度の差はあれ同じようなことが言えました。ライトタイプであろうが、通常タイプであろうが、周囲にかけている迷惑は同じ、受動喫煙による悪影響は軽減できないのです。
たばこ1本に含まれる化学物質の重量及び副流煙と主流煙の比率
(稲葉洋平、内山茂久「喫煙と室内環境」国立保健医療科学院)
実際、ロハス・メディカル「禁煙 なぜできない」特集でも、受動喫煙によって心臓発作のリスクが上がることを示唆した研究があることを紹介しています。(ちなみに厚労省資料によれば、ニコチンによる健康被害の研究は19世紀末から行われているようです。ずいぶん長いこと苦しめられているのに、やめられない、手ごわい相手ですね。「禁煙 なぜできない」特集では、ニコチンを体から抜いても禁煙に失敗してしまうのはなぜか、も解説しています)
今流行りの加熱式タバコ(アイコス、グロー、プルームテック)や電子タバコでも、上記には有害成分が含まれます(詳しくはこちら)。分煙は完全には無理ですし、時間帯分煙はほぼ無意味(詳しくはこちら)。禁煙の徹底だけが解決への道と言えそうです。