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サラダでO-157...レアハンバーグは大丈夫?

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O157で5歳女児重体、2人重症 埼玉・熊谷のスーパー販売のポテトサラダ食べる」との報道がありました。

それで気になったのが、つい先日食べたレアハンバーグのこと。中身が生焼けのまま提供されるハンバーグが流行っているのです・・・。


ロハス・メディカル専任編集委員 堀米香奈子


O-157は、腸管出血性大腸菌と呼ばれる細菌の一種。菌数が少なくても食中毒の原因となり、発熱や下痢、血便、さらには脳症などを引き起こします。乳幼児やお年寄りは抵抗力や体力が低いので重症化しやすく、しばしば死亡事件も報じられてきました。

今回の報道でも、


ポテトサラダを食べた6人が腸管出血性大腸菌O157に感染し、うち女児(5)が溶血性尿毒症症候群(HUS)で意識不明の重体、男児(4)と女性(60)が重症になったと発表した。いずれも入院中で、退院のめどは立っていない。

とのこと。

生または加熱が不十分な肉が感染源。厚労省もウェブサイトで様々な予防方法を紹介しており、殺菌には75℃で1分以上の加熱、もしくは塩素が有効としています。

以前、ロハス・メディカルでも、一番効果的な殺菌法として「熱湯消毒を紹介しました。(実は塩素より何より瞬殺で強力!けっこう意外ですよね?)


しかしながら、今回の報道を受けて思い出したのが、レアハンバーグ

レストランではげんこつ型や俵型の挽き肉のカタマリで、中身が生焼けの状態で提供されます。熱々の鉄板皿に乗った状態で提供されるので仕上げはテーブルで、ということになっていますが、運んできた店員さんは「中がピンク色の状態で召し上がっていただくのがお勧め」とはっきり言っていました

私もお店を信用してピンク色の部分を残したまま、人気の「レアハンバーグ」をいただいてみました。とても美味しかったのですが、子供には鉄板が冷めないうちに急いで細かく刻んで、カットした断面を鉄板に押し付けては転がし、と全方向から火を通した上で食べさせました。

でも、ぼやぼやしているとすぐ鉄板は冷めてしまうので、きちんと火を通すのは至難の業でした。ちょっと怖くなって調べると、厚労省

ハンバーグなどの挽肉を使った食品、テンダライズ処理(針状の刃を刺し通し、原形を保ったまま硬い筋や繊維を短く切断する処理)、タンブリング処理(調味液を機械的に浸透する処理)、結着(他の食肉の断片を結着させ成型する処理)を行った食肉は、中心部まで75℃で1分間以上加熱して食べましょう

ときっちり示しています。

「だって、牛ステーキはレアで食べるでしょ? だから心配いらないでしょ」と思いますよね。確かに牛肉の場合、筋肉には元々O-157はいません。だからステーキは生焼けでも食べられます。でも、挽き肉は、牛肉であったとしても、処理~販売までのどこかの段階でモツ(内臓)やそれを扱った調理器具などとの接点があったかも分かりません

そうしたレアハンバーグを提供しているレストランや、あとは「柔らかくて食べやすい」と謳って形成肉を提供している焼肉屋さんなどでは、そのあたりを踏まえてきちんと衛生管理を徹底している(汚染されていない挽き肉を、汚染されないよう保管・調理している)ものと期待していますが、個人的には不安感を100%払しょくすることはできません。実際、調べてみると、日本洋食協会も警鐘を鳴らしています。

さらには、「お店で食べて美味しかったから家でもレアハンバーグを作ってみよう!牛肉なら大丈夫でしょ」ということにならないか、心配です。スーパーなどで売られている挽き肉は、流通~販売までの衛生管理が不明です。特別な事情がない限り、挽き肉を生でも食べられるような状態で提供することまでは要求されていません。自宅のキッチンで安易に「レアハンバーグ」をマネする人が出てこないことを祈ります。

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