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「日本カビ」世界的流行のニュースで、「抗菌薬」は間違い?

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「日本カビ」とも呼ばれる真菌感染症が世界的に流行し、死者まで発生しているそうです。海外ではすでに薬剤への耐性を獲得したものが蔓延しているのだとか。ところでこのニュースでは、「抗菌薬に対する耐性」という言葉が使われています。この「菌」が何を指すか、ご存知ですか?

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

今回の流行について産経ニュースから引用すると、

平成21年に日本人研究者が「新種」として世界で初めて報告した真菌(カビ)「カンジダ・アウリス」(通称・日本カビ)が、欧米やアジアで真菌感染症として初めてのパンデミック(世界的流行)を引き起こしていることが分かった。抵抗力の弱い入院患者が死亡する事例も報告され、警戒が必要だ。
懸念されるのが、治療薬が効かない耐性化だ。米国では9割以上の株が、最優先で選択される治療薬への耐性を獲得。半分の株は2種類以上の抗菌薬に耐性を持っていた。全抗菌薬が効かない株も4%あったという。

とのこと。真菌感染症に対する治療薬=抗菌薬との記述がありますね。

少し前までは、「抗菌薬」と言った場合、細菌感染症のみを対象とする薬剤に限定されていました。つまり「菌」とは「細菌」であって、ウイルスや真菌など細菌以外が原因となる感染症については、「抗ウイルス薬」や「抗真菌薬」などと呼び分けられてきました。(同じ「菌」の字が入っていても、カビやキノコの菌類と、細菌は全く別の生物。ウイルスに至っては生物であるかどうかも怪しいくらいです)

どうして細菌のみが対象なのか。それは抗菌薬の歴史がペニシリンから始まったから。ペニシリンは青カビから発見された世界初の「抗生物質」。今でも世界中で細菌感染症から多くの命を救っています。その後、微生物の作り出す抗生物質が次々発見され、さらには有効成分を人工的に合成した「合成抗菌薬」が登場し、両者を併せて「抗菌薬」という言葉が使われるようになりました。

●抗生物質ってそもそも何ですか? ←クリックすると読めます

ただし最近では、「抗菌薬」の定義を拡げる動きもあるようです。日本大学獣医薬理学研究室の資料では、「微生物を攻撃するすべての薬物」であって、「細菌、真菌、原虫、ウイルスなどの微生物に対して毒性を示し、その増殖を抑制あるいは殺滅する薬物」とされています。

というわけで、今回のカビ(真菌)に対する治療薬も「抗菌薬」で一応間違いないようです。それが効かなくなってしまう「耐性」は大問題。出現の仕組みは様々ですが、抗菌薬を正しく使わず、濫用することが一番良くないようです。

●耐性菌はどうやって出現するの? ←クリックすると読めます

最後に、今日の日本には「抗菌」グッズが溢れていますよね。ここでいう「菌」も、有害微生物の総称。ただし、有害微生物を減らしたりコントロールしたりする言葉には「抗菌」以外にもいろいろあって、実は、医療関係や薬局、食品工業など業界ごとに別々に定義されているんだとか。「日本石鹸洗剤工業会」によれば、ざっと以下のような意味と考えておけばよさそうです。「抗菌」、聞こえはいいですが、実力の程は微妙ですね...。

●殺菌:病原菌を含めた有害微生物を死滅させること。(程度や有効性までは言及していない)
●滅菌:物質中のすべての微生物を殺菌し除去すること。人体ではありえないので、器具などの話。
●消毒:病原性微生物を殺菌・除去して数を減らしたり(減菌)、感染力を失わせたりして無力化し、感染症を防止すること。ただし、すべての微生物を死滅させることまで要求されない。
●除菌:微生物の数を減らし、清浄度を高めること。ただし、学術的な用語と言うより、主に工業用語で、効果の程度などは業界ごとに定められている。洗剤・石けん公正取引協議会の定義では、細菌のみが対象となっている。
●抗菌:「菌の繁殖を防止する」という意味で、微生物の増殖が阻害された状態。経済産業省の定義に基づくJIS規格では、抗菌の対象を「細菌」のみとしている。

御覧の通り、実はJISマークの付いた「抗菌」製品では、真菌であるカビや、バクテリアなどによるぬめりの防止は効果に含まれず、ノロウイルスなどのウイルスに対しても特に効果を示さないのです。しかも、細菌に対してであっても除去の程度は一番低く、増殖が抑えられる加工がされているだけ。付いてしまった細菌を殺すわけではないので、「抗菌」製品は盲信や過信は禁物ですね。

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