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「インフルに漢方薬(麻黄湯)が効く」って知ってた?
新たなインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」が5月にも発売される見通しになったそうです。タミフルやリレンザと違って、ウイルスの増殖を直接抑えるタイプ。期待大ですが、今期の流行をどう乗り切るのか......。実は昔からある漢方薬、「麻黄湯」がインフルにいいらしい、って知ってましたか?
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
塩野義製薬の開発したゾフルーザは、細胞内でウイルスの増殖を抑えることができるとのこと。
(産経WESTより転載)
これまで"特効薬"とされてきたタミフルやリレンザは、体内でウイルスが細胞から細胞へと拡散するのを妨げる効果しかなく、既に多くの細胞に拡がってしまったものについては自分の免疫力に期待するしかない、ということは、以前「なぜタミフルやリレンザを飲んでも、すぐに治らないのか?」と題してちょこっと書きました。
それに対してこのゾフルーザは、「塩野義が行った臨床試験では、現在主流のインフルエンザ治療薬『タミフル』に比べて抗ウイルス効果が高く、投与翌日には半数以上の患者で、感染性を持つウイルス量が減っていることが認められた」というのですから、かなり期待ができそうです。
ただ、「画期的な薬の早期実現化のために厚労省が優先的に審査する先駆け審査指定制度の対象品目」になっているとはいえ、承認は3月、発売は早くて5月ですから、現在、日本中で猛威を振るっているインフルエンザをどうできるわけでもありません。
となると今はやはりタミフルかリレンザしかないか、ということになりそうですが、実は試す価値のありそうな選択肢がもう一つあります。
漢方薬のひとつ、「麻黄湯」(麻黄、杏仁、桂皮、甘草の4つの生薬をブレンドしたもの)です。
10年以上も前、ロハス・メディカルで漢方薬を特集した時も、麻黄湯については「風が深く入り込んで悪寒、発熱に加えてゼーゼーしてきた離、関節痛を伴うもの」に効果あり、と紹介しています。発熱、呼吸器症状、関節痛、というこれらの症状は、まさにインフルのそれですよね。
実際、薬局で見かける漢方薬を見ても、きちんと効能の欄に「感冒」とあります。例えば......
●「ツムラ漢方麻黄湯エキス顆粒」
1 からだのふしぶしが痛むかぜのひきはじめ
2 鼻づまり
効能・効果
体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり
●「クラシエ」漢方麻黄湯エキス顆粒
かぜ、鼻かぜに(悪寒があり、ふしぶしが痛む方)
・「麻黄湯」は,漢方の古典といわれる中国の医書「傷寒論」に収載されている薬方です。
古くよりかぜの初期症状に用いられています。
・かぜのひきはじめで,さむけがして発熱,頭痛があり,身体のふしぶしが痛い場合の感冒,鼻かぜに効果があります。
どの程度の効き目かと言うと、実はタミフルやリレンザと同じか、場合によってはそれ以上なのだとか。効く仕組みは全然違うのに、解熱やウイルス消失までの時間は同程度と報告されているのです。しかも、気管支拡張や痰の除去など、抗ウイルス薬にはない薬理作用もあります(ただし喘息持ちの場合は呼吸器合併症への注意は必要とのこと)。
特に、小児を対象とした有効性の検討は過去にいくつも報告があり、タミフル単独投与、麻黄湯単独投与、2つの併用投与を比較した結果、麻黄湯単独投与が最も短時間で解熱した、という報告さえあるのです。実はこれと似たようなデータは過去にも出ているそうです。しかも、薬剤費も40%削減でき、医療経済的には日本全体として年間415億円の経費削減になるだろう、という試算もあるのだとか。
漢方薬は、体質を見極めて使うこともとても大事なので、興味がある人は医師に相談してみるのが一番です。ただ、専門医を受診するとなると腰が重くて、という人も多いかと思います。そんな時はまず、漢方薬局の薬剤師さんに相談するのがお勧めですよ。