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なぜタミフルやリレンザを飲んでも、すぐに治らないのか?
インフルエンザの特効薬として知られるタミフルやリレンザ。しかし、発症から「48時間以内に薬を使ったとしても、つらい症状を短くできるのは1日程度」。経験上たしかにそうなんですが、ちょっと期待外れですよね。「特効薬」なんてたいそうな肩書をもらっておいて、どうしてその程度の働きなのか、知りたくないですか?
堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員
あれ、体の調子がわるい、熱が出てきた、もしやインフルエンザかな? と思った時、意外にややこしいのが受診のタイミング。
理由は、2つの要素を加味しないといけないから。
●その1
熱が上がらないうちに受診して検査しても、インフルエンザウイルスは検出されないことが多い。症状(熱または体痛)が始まってから、12時間~24時間で受診するのがベスト。
●その2
発症から48時間を過ぎてから受診してタミフルやリレンザといった特効薬を処方してもらっても、もはや効かない
これらの縛りがあるので、ちょうどよく受診するのは、なかなか大変だったりします。
働いている人は、他の人に移さないためにもきちんと診断を受けて療養しなければいけませんが、ちょっとした風邪では仕事は休めないもの。そうこうするうちに土日を挟んでしまうと医療機関は多くが休みになってしまいます。休日診療は混みあって長時間待たされるだろうし、と受診もためらわれて・・・。
あるいは子供が「インフルかな?」と疑わしい時も、きちんと症状を説明してくれなかったり、ちょっとした熱なら子供はよく出すので「またかな」なんて思ってしまったりして、見極めが遅れがちです。
焦るのは、やはり「48時間の壁」があるから。体調が悪いからとゆっくりしていたら、どんどん期限が迫ってきてしまいます。そもそも、なぜこんな時間制限があるのでしょう?
それは、タミフルやリレンザが体の中でどう働くか、に関わっています。
勘違いが多いのですが、どちらの‟特効薬"も、インフルエンザウイルスを殺す働きは持っていません。どちらも、ウイルスが体内で細胞から細胞へと感染を拡げようとするのを阻止する薬なのです。
インフルエンザウイルスは、まず1つの細胞に感染し、その後、その細胞を離れて次の細胞に移ります。これが同時に次々起きると、免疫機構が対処しきれずに、体がやられてしまうのです。
ウイルスが次の細胞に移ろうとする際には、ある酵素が必須となります。タミフルやリレンザは、この酵素の働きをブロックすることで、感染していない細胞へのウイルスの移動を阻止する薬なのです。
ですから、免疫がウイルスの移動を阻止しようと戦っているけれど、阻止しきれず劣勢となっている段階で服用した場合には、症状の悪化を防ぐ効果があります。ただ、既に体内に広がってしまったウイルスについては、タミフルやリレンザにはどうすることもできず、免疫機構に頑張ってもらうしかない、というわけです(そう考えると、症状の出始めでは検出しにくい現在の簡易検査法は問題ですね)。当然、免疫とウイルスとの攻防戦が峠を越えた後に服用しても、ほとんど意味がないのです。
東京でもインフルの流行が始まったようですが、ワクチンが足りていないことは先日も書いた通り。自衛したい方は、是非インフルや感染症の基本を知っておくといいですね。以下の記事はオススメです。かなり「へえ」が詰まっていますよ!
●ウイルス感染症 新型インフルエンザ 基礎のおさらいもう一度
(「ロハス・メディカル」より)