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増えてます。危ないです。肺炎
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いきなりですが、日本人の病気による死亡原因の第4位が何だか、おわかりでしょうか? トップ3が上位から、がん、脳卒中、心筋梗塞であることは、どこからともなく聞いたことがあるかもしれません。そして実は、「肺炎」こそ第4位なのです。毎年10万人もの方が、肺炎で亡くなっているといいます。
戦後、肺炎による死亡者の数は、微生物や細菌の増殖を防ぐ抗菌薬(抗生物質を含む総称)の発達によって激減しました。しかし、この20年でふたたび2倍以上に増加しているのです。その原因はまず高齢化。65歳以上、とくに85歳以上の高齢者は、罹患率・死亡率ともに高く、90歳以上では死亡原因の第1位を占めます。そして、薬の効きづらい原因細菌が増えていることも、問題を深刻にしています。これについては後に詳しくご説明します。
肺炎とは、読んで字の通り
さて、そもそも肺炎とはいったい何でしょう? よく、「風邪をひいて咳が止まらなくなり、調べてみたら肺炎だった」などという話を耳にします。風邪のひどいものが肺炎なのでしょうか?
結論から言えば、肺炎とは読んで字のごとく、肺に炎症が起こった状態のこと。たいていは、さまざまな病原菌の感染が原因です。主流は細菌とウイルス。なかでも「肺炎球菌」という細菌は、肺炎の原因のおよそ半数を占めます。インフルエンザウイルスも肺炎を引き起こすことが知られています。体力が落ちているときや高齢になって体の防御機能(免疫力)が弱まっているときはご用心。たとえば、健康な人であれば肺の手前で排除できる病原菌も、気道が荒れていると素通りして肺に入り、細胞にダメージを与えてしまいます。体は白血球に病原菌を食べさせて応戦しようとしますが、そのために肺の中に膿(崩壊した白血球や血液の液体成分、病原菌の死骸などがまざったもの)がたまり、肺が行うはずの血液中の酸素の取り込みを妨げて、ついには呼吸ができない状態にも。
肺炎の主な症状は、咳がたくさん出る、熱、寒け、胸の痛み、たんが出る、呼吸困難などで、これらの症状は数日間続きます。呼吸も浅く速く、脈拍も速くなります。酸欠で唇や爪が青黒くなるチアノーゼが出ることもあります。
たんなる風邪と見分ける目安としては、5日以上熱が下がらず、咳などの症状が長引く場合は肺炎を疑ってください。ただし高齢者では、「頭痛や食欲不振が強く(2~3日食べていない)元気がないけれども熱は出ない、一応医師にみてもらったら肺炎だった」というケースも多く、注意が必要。手当てが遅れて重い呼吸不全や命の危険に至ることも少なくないのです。
ちなみに呼吸の音も肺炎のサイン。聴診器や背中に耳をあてて聴いたときに、ブルブル、プツプツ、というような音がします。ただ、医師などの専門家でないと、まず聞き分けるのは難しいでしょう。