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米国と同じ土俵に乗った多施設共同研究
鈴木 我々や先生が大学を卒業した頃は、例えば東大の医学部で言えば2割か3割くらいは研究の道へ。研究と臨床という分け方自体、変えてかなければならないと思いますが、しかしながら、未知なるものへの挑戦をしていくことは、臨床との好循環をつくっていく上で重要です。
岩坪 おっしゃる通りです。東大の医学部は、研究にも広く興味を持つ、研究者の素質を持った医学生を一番多く受け入れている大学の一つです。今お話がありましたように、基礎研究であれ疾患研究であれ、研究ということに専心される方が、今まで東大の医学部は多かったのですけれど、やはりその意欲が昔に比べて若干影を差しているということを認めざるを得ないところです。
私は臨床医から戻って疾患の基礎研究者になった者ですけれども、こういう道筋を辿っている人は結構多かったのです。今の研究科長の宮園先生も、内科医からがんの基礎研究者になられた方です。そういう人も入れると、たしかに鈴木先生がおっしゃったように1学年の3割くらいは研究者になっていました。
今は臨床の場が大変に忙しくなってきました。世の中の状況も色々な意味で厳しくなって、ある一定の年限研究に専心するということが許される余裕が少なくなってきたのかもしれません。我々はこの状況を憂慮していまして、前の清水医学部長の時に、MD研究者育成コース、医学部の学生で基礎医学から臨床医学のカリキュラムを学びながら研究室に出入りして、研究することを推奨する新しい制度をつくるなど、努力しています。そういうコースから巣立った方々が、基礎医学を再生産してそのレベルを高め、あるいは臨床に進んだ場合にも研究マインドを持って疾患研究を進めてくださることを期待して努力しております。
鈴木 MD.PhD制度については私も非常に思い入れがあって、当時の清水医学部長から問題をうかがって医学部人材の在り方の検討会を開かせていただきました。世の中では地域医療人材の不足というところがフォーカスされているんですが、もちろんそれも深刻ですけれども、加えて研究医療人材や国際医療人材もより深刻なんだということを、問題共有していただこうと三つのカテゴリーを提起させていただきました。
卒後臨床研修制度が導入されてからのことだとうかがっておりますが、先生の頃はそういうものはなかったわけですよね。
岩坪 研修医はございましたけれども、今のような包括的な臨床研修制度はなかったです。今1年目に総合的な臨床研修をできるということで、メリットももちろん大きいわけですけれども、基礎医学の立場から見ますと、将来基礎研究者にも、臨床家にもなることができるという選択肢が保証されていた方が、基礎へ進む安心感もあるわけです。それが保障されなくなったことをはじめ、色々なところで制度とのギャップで問題は残っていると思います。ただそれは現場の意見に即して改善していただいて、よい形につくっていければ乗り切れるんじゃないかなと思います。
鈴木 MD.PhDあるいは研究者をめざしながら卒後臨床研修も併せて行えるという、プログラムを東京大学が始められて、研究医療人材の輩出を担っていただける大学は柔軟に研修制度の運用をできるという一つのモデルケースですね。これにも私思い入れがありまして、私は東大の駒場でゼミをやっているんですけれども......
岩坪 うちの部屋に最初のMD研究者コースで入ってきてくださったのが、先生の教え子のMさんでしたね。
鈴木 こういうコースができたから、そっちで頑張れというアナウンスをしました。彼もまさにグローバルに。
岩坪 そうですね、卒業されて、UCSDの神経科学のラボへ大学院生として進まれました。国際的に飛躍してくれて、嬉しく思っております。
鈴木 そういう国際的な人材をこれから輩出されることを強く望みます。
その3へつづく