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認知症の経済損失は既に5兆円。さらに迫る高齢化

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(岩)かつては老年期のぼけ、認知症というものは、まあ歳のせいである、老人では多少の不自由は生じるけれど仕方のない自然な成り行きなのではないかと捉えられてきた時代が長かったと思います。しかし患者さんの数が増えて認知症が大きな社会的問題になってきたことに加えて、90年代の終わりから塩酸ドネベジル、アリセプトという薬が使われ始めて、一昨年からさらに三つの対症療法薬が日本でも使用可能となり、この流れの中でアルツハイマー病への認識が社会でも、医療界でも非常に深まったと思います。やはりこれは人間の認知機能に障害が加わる病気なのだ、すなわち治療やケアを要する状態なのだ、という認識が深まってきたわけです。

 しかし、認知機能に低下が生じても、その方の人格、人間としての尊厳というものは厳然としてあるわけですから、これを何とか保ちつつ、安らかに日常生活を送っていただくために、ケアの面もさらに深めていただかないといけないと思います。

(鈴)私は色んな人に、こういう説明をしています。認知症あるいはアルツハイマー病というのは、コミュニケーションの病ですと。これまでの医療は患者さんご本人のためにやっている医療でした。もちろん引き続き、その方のコミュニケーションを維持するということは極めて大事なことで、それがあくまでも主であるわけです。しかし、アルツハイマー医療のコンセプチュアルな命題はですね、広く世の中というパブリック対象の公衆衛生ではないけれども、個人のためだけの医療でもない。少なくともその人を取り囲むコミュニティのためにも、やらねばならない。その方を中心とするコミュニティ全体を元気に、そして尊厳あるものにしていく、豊かないいコミュニティにしていくことのために行われるのだと思います。人間というのはコミュニケーションする動物であって、共に暮らしている家族、あるいは関わっている地域、患者さんのコミュニケーションの相手方の、精神的な負担も含めた傷に手当てするものだからこそ、単に個人の医療経済問題を超えて多くのリソースを投資する必要があるんだ、と。

 もちろん経済的なことも大事ですけれども、人間はコミュニティなしでは生きていけない、そのコミュニティが疲弊しないということは、コミュニティの人全体にとって非常に大事なことであると、多くの人に認識を深めていただいて、であれば、コミュニティのため、コミュニティの皆さんが色々な負担をあるいは協力をしていただく、というまさに社会のありようを含めたことでないかという説得をこれまでしてきています。

(岩)今までですと、若い人たちは、アルツハイマーなど、老年性の疾患に対する関心や理解がそれほど高くありませんでした。最近私も高校などにうかがって、アルツハイマーの話を若い方にする機会を時々いただきます。四国に行った時ですけれども、授業が終わって校長室へ帰ってきたら、1人の女子生徒さんがぜひ話をしたいと来られました。大好きなお婆ちゃんがアルツハイマー病になってしまい、どうしたら良いかと相談に来られたのです。

 今まさに高齢社会が本格化して、身内あるいは近い知り合いなどにアルツハイマーの人がいるという頻度が飛躍的に増えたんですね。若い方も認知症を我が事として捉えている、そういう時代になったとの実感を持っております。

その3へつづく

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