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医療政策が国民に分かりづらい理由を考えてみた

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昨日、阪大大学院の福井小紀子教授から現在の医療介護政策についての講義を聞いた。

今後の政策展開展開のポイントとして、

●医療側・・・「医療機能の分化」(都道府県、2次医療県単位)

●介護側・・・「地域包括ケア推進策」(市町村単位)

両者の整合性を取りながら、出てくる課題を解決していくことが大事ということ。

医療介護連携に予算が大きく割かれ、市町村への期待も高まる中で、医療側がどうコミットしていくかが重要とのことだった。


ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

このほか、

●医療介護側には、今後変わっていく医療介護提供体制を見据えた『個のケア』に加えて『システム面』への活動展開(退院・外来支援、医療介護連携、地域づくり等)が求められる。

●診療報酬・介護報酬は「連携」と「質」を評価する方向

●「地域共生社会」が今後のキーワード

という話もあった。

(地域共生社会については、以前に書いたこの辺りの話ではないかと思う)
地域で多世代を支える新しいネットワークづくりの試み―京都・亀岡でNPO設立


講義後の議論を聞きながら考えていたのだが、国が行う医療政策というのは、結局のところ医療提供側、つまり病院やクリニックなど医療サービスを提供する側に対する政策誘導。診療報酬を「上げますよ、下げますよ」と、馬の前にぶら下げたニンジンをあっちに揺らしこっちに揺らしするように、馬(医療サービス提供者)の進む方向を変えている。馬に乗っている人間、つまり患者や市民は、ニンジンが全く見えていない。「馬がどうやら山の方向に進んでいくみたいなので、山に行きましょうか」「馬が川に行きたいみたいなので、川に行きましょうか」と、馬に任せるしかない状況(進む方向として、山が正しいのか、川が正しいのかは、恐らく誰にも分からない)。馬に乗っている人間が進行方向を決めることはできない、という状態なのだ。

これが、医療政策の分かりにくさなんだなとしみじみ思った。

患者や一般市民に直接訴えられてくることがほとんどないため(あったとしても「ジェネリックを使おう」ぐらいか)、国が何を考えているのか、どういう方向性でいこうとしているかが分かりにくい。

それなのに、突然にやれ「自助」だ「互助」だ、と言われても、「今まで国が全部やってただろうが」となるのもいささか仕方ないような気がする。国民からすれば、自分たちのあずかり知らないところで国民皆保険がうまく機能してくれていて、それは永劫続くものだと、自分とは関係ないものなのだと、思うように馴らされてしまったのはこういう医療政策のやり方にも一つの原因があるのではと思う。

そういう体質になってしまった国民に、「医療や介護に使うお金がないから自分たちで頑張りましょう」と言っても、なかなか難しいだろうなと思ったりした。

本来は、自分や家族、大切な人達の生活や「生き死に」に直結する話なので、自分事として捉えていかなければいけないことなのだが。


しかし、そんなことをぐだぐだ言っていられない。日本の状態は崖っぷちだ。「もっと考えてみよう」という方にはぜひこちらを読んでいただきたい。
社会保障の見直しは避けられない」(ロハス・メディカル2014年6月号)

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