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高い! 米CDC価格の5倍

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

~9月から定期接種化の不活化ポリオワクチン~
(シリーズ どうなってるの予防接種!?)

 ポリオの不活化ワクチンが9月から定期接種で使われるようになります。このこと自体は喜ばしいのですが、ワクチンの価格が異様に高いことに、多くの医療関係者は驚いています。なぜこんなことになったのでしょう。

1 どれほど高いか

 6月1日に厚生労働省で開かれた関係自治体担当者会議で、4月に承認された不活化ポリオワクチンのメーカー希望小売価格が、1本あたり税別5450円と発表されました。同じワクチンを米CDC(疾病対策センター)が購入している価格は12・24ドル(1ドル80円として約1000円)なので、5倍以上ということになります。承認前に海外から同じワクチンを個人輸入していた医師たちは、高くても2000円台で買えたそうなので、その相場から見ても倍以上ということになります。

 なお実際の接種費用は、ワクチン代の他に、卸業者のマージン、接種医療機関の問診料まですべて含まれた金額になり、希望小売価格通りにワクチンを買ったとするなら、9月からのポリオワクチン1回の接種費用は1万円近くなります。そして、不活化ポリオワクチンは生後1年までに3回、その後1年から1年半の間を置いて1回の計4回接種されることになっています。

 定期接種の費用は、自治体が財源を準備して被接種者負担ゼロにしている例がほとんどです。自治体の財源も、元を辿れば税金ですから、平たく言うと国民のほとんどが少しずつ高く払わされているのでないかという話です。

 前号の記事で、財源が足りないという理由により、承認済みなのに定期接種化を見送られそうなワクチンが既に5種類あることをご紹介しました。ポリオワクチンが安くなれば、それらのワクチンを定期接種化できるかもしれませんので、その観点からも決して看過できる話ではありません。

2 素朴な疑問

 定期接種で使われるようになるということは、それまで細々と輸入されていたのに比べて、売れる本数が圧倒的に増えるということです。普通の商品であれば、たくさん売れたら値段は下がるはず。なぜ逆に上がるのでしょうか。

3 メーカーの言い分

 値段が高くなった理由を、メーカーであるサノフィパスツールに訊いたところ、以下のような回答でした。
①世界的には、ポリオワクチンは他のワクチンとの混合で用いられているのがほとんどで、単独ワクチンは軍用など用途が限られるため、日本向けの量を賄える工場がなく、フランスで新たにラインを設けた。
②日本の顧客は品質・体裁に厳しいので、フランス国内での検品を二重に行っている。
③日本向けに梱包し直すラインを川越工場内に設けた。そこで国家検定を受けると同時に、独自に改めて検品を行っている。
④これらの設備投資を行った一方、今回の単独ワクチンの需要が最低2年程度の時限的なものと考えられるため、短期に減価償却する必要があった。
⑤当初2013年から導入という国の方針だったが、突然、今年秋からと半年前倒しになったため、①~③を含むあらゆる工程で計画が狂い、コストがかさんだ。トータルすれば通常のワクチンの場合の2倍はかかっている。

4 厚生労働省の言い分

 では、希望小売価格を自治体担当者たちに伝えた厚労省は、この事態をどう見ているのでしょうか。担当の難波江功二・結核感染症課課長補佐は以下のように語りました。

①定期接種は市町村の事業なので、国がすべてを決める薬価と異なり、実際の価格は市町村ごとの個別交渉となる。
②自治体の負担にならないような価格にとお願いしたけれども、メーカーから示されたのが、この値段。今でも重ねて、自治体の負担にならないような価格にしてほしいと、お願いはしている。
③年度途中から自治体の負担増となることは心苦しいが、少しでも早く不活化へ切り替えようとの政府の方針もあり、自治体には予備費などで対応してもらいたい。

5 さて、何が問題?

 問題は山ほど指摘できます。まず厚労省の説明からです。「価格は市町村ごとの個別交渉」と言われても、高いから買わないという選択肢は市町村にありません。また、承認された単独不活化ポリオワクチンがサノフィ製しかないため、別のメーカーと競争させるわけにもいきません(国内承認されていないものなら海外にあります)。俗に言う「足元を見られた状態」で、価格交渉が成立しないのです。法的には被接種者から費用徴収することもできますが、それはそれで大混乱が予想され、現実的と言えません。既に千葉県などから国に財源負担を求める緊急要望書が出されるなど、自治体の反発は強いものがあります。当然の反応です。

 サノフィパスツールの説明にも、気になることがたくさんあります。検品ラインの話もさることながら、特に「用途が限られるワクチン」で「需要が時限的と考えられ」、その「導入が前倒しになった」という3ポイントが、値段を大幅に高くしているように見えます。

 予備知識のない人には若干ややこしい話なので、丁寧に説明しつつ考えていこうと思うのですが、紙幅が尽きました。次回に続けます。

そもそも、なぜ不活化?

 日本の定期接種では、ポリオウイルスを弱めた「生ワクチン」を2回経口投与するという方法が採られてきました。その効果は極めて高く、1981年以降、国内で野生株によるポリオ患者は発生していません。一方で年に数人ずつ、ワクチンのウイルスによって発症し麻痺が残ってしまうという人が出続けてきました。感染力を完全に失わせた不活化ワクチンならば、ワクチンに由来する発症はありません。このため例えば米国でも2000年に不活化ワクチンへ切り替えが行われました。
 国内でも、日本医師会をはじめとする医療関係団体や患者団体などから、切り替えの要望が出され続けていましたが、国内メーカーがワクチンの開発に失敗したこともあり遅々として進まず、ようやく今回切り替えられることになりました。

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