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人工甘味料で甘み中毒になって太る!?

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 「甘くて冷たいものが飲みたい。ダイエットもしたい」とカロリーゼロ飲料を選ぶ方も少なくないのでは? でも、ちょっと待って。

大西睦子の健康論文ピックアップ1

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

 最近、アメリカでは、カロリーゼロの人工甘味料(非栄養甘味料)※1で肥満になることが話題になっています。疫学研究では、ダイエット飲料を習慣的に飲んでいる人は、肥満や糖尿病になりやすいことが報告されています。その理由としては、体の生理的反応と人間の行動的・心理的な要素が関係していると考えられています。

 私たちが食べ物から体にエネルギーを取り込む際、その調節に重要な役割を果たしているのが、脳内報酬系※2です。しかし、カロリーゼロの人工甘味料の習慣的な使用が、甘みに関する脳内報酬系にどのように影響しているかは、あまり分かっていません。

 今回ご紹介する論文は、カリフォルニアの研究者たちからの、この疑問に対するひとつの答えです。

Altered processing of sweet taste in the brain of diet soda drinkers.
Green E, Murphy C.
Physiol Behav. 2012 May 11

 著者らは、19歳から32歳の成人(24人)について、習慣的にカロリーゼロのダイエットソーダを飲んでいるグループと、糖類など※3を使ったカロリー有りのソーダを飲んでいるグループに分けました。12時間の絶食後、それぞれのグループに人工甘味料のサッカリンと糖類の一種であるショ糖を摂ってもらい、脳機能イメージング法※4を用いて脳の活性化を調べました。その結果、次のことがわかったのです。

 ①ダイエットソーダを習慣的に飲んでいるグループは、カロリー有りのソーダを飲んでいるグループに比べて、サッカリンとショ糖、両方の甘味に対して、脳内報酬プロセスを担っている脳領域(腹側被蓋野※5を含むドーパミン作動性中脳※6と、右扁桃体※7)で大きな活性化を示しました。この脳領域は、食べ物だけではなく麻薬や覚せい剤でも活性化され、習慣性を生んだり、さらには依存、中毒をもたらします。以前、動物実験で、食べ過ぎによる肥満の場合には、脳内の信号を伝える経路が麻薬中毒と同じになっていることが観察され、大変な話題になりました。ダイエットソーダの常習者も、"甘み中毒"の危険があると思います。

 ②いつもカロリー有りのソーダを飲んでいる人たちの右眼窩前頭皮質※8では、サッカリン摂取した時のほうがショ糖を摂った時よりも大きな反応が見られました。しかし、ダイエットソーダを常飲している人の脳では、サッカリンとショ糖との間で、甘味に対する反応に違いが出なかったのです。つまり、ダイエットソーダを常に飲んでいる人の脳では、カロリーがあってもなくても同じ報酬反応が起きるのです。眼窩前頭皮質は、まだ機能がきちんと分かっていないのですが、意思決定や認知、情動、報酬系をコントロールしていると考えられています。眼窩前頭皮質に損傷があると、アルコール、タバコや薬物の摂取過多が起きてしまいます。いつもカロリー有りソーダを飲んでいる人たちの脳がサッカリンに大きく反応したのは、体が自然に摂取過多を抑えようとするための反応なのかもしれません。

 ③ダイエットソーダを常に飲んでいる人では、サッカリンに対する脳の右尾状核※9の活性が、1週間に飲むダイエットソーダの量に反比例しました。つまり、より多くのダイエットソーダを飲む人では、尾状核の活性が減少したのです。尾状核は脳の学習や記憶に大切な部位とされ、以前から、食の報酬系でその機能が低下すると肥満の原因となると言われています。従って、ダイエットソーダをいつも飲んでいる人は、尾状核の活性が減少した結果、肥満になるというわけです。

 これらの結果から、ダイエットソーダを習慣的に飲んでいる人は、甘味に対する報酬過程に変化が生じて、それが肥満の原因となると考えられます。さらに、この変化はダイエットソーダの消費量に比例します。

 今回の報告で、人工甘味料の使用で生じる心理的、行動的変化と、肥満の関係の謎が分かってきました。「カロリーゼロだから痩せると思って、毎日ダイエット飲料を飲んでいる」という方々、頭の中は混乱しているようですよ! そして、徐々に甘いものを食べた喜びがコントロールできなくなり、習慣化、依存、そして中毒となり、結局は肥満に至ってしまうのです。適度な天然の甘みを取って、健康的な体と精神を養いましょう。

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