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定期的な運動は非アルコール性脂肪性肝疾患リスクを低くする

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 韓国で、糖尿病のない被験者を対象に、運動と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)リスクとの関連を調べたところ、同じBMI群でも定期的に運動をしている人の方がリスクは低いこと、既にNAFLDの状態であっても定期的な運動をした方が肝細胞は傷まず済むことが分かりました。

Regular Exercise Is Associated with a Reduction in the Risk of NAFLD and Decreased Liver Enzymes in Individuals with NAFLD Independent of Obesity in Korean Adults
Ji Cheol Bae, Sunghwan Suh, Se Eun Park, Eun Jung Rhee, Cheol Young Park, Ki Won Oh, Sung Woo Park, Sun Woo Kim, Kyu Yeon Hur, Jae Hyeon Kim, Myung-Shik Lee, Moon Kyu Lee, Kwang-Won Kim, and Won-Young Lee
PLoS One. 2012; 7(10): e46819.
Published online 2012 October 22. doi: 10.1371/journal.pone.0046819

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

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●背景

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、脂肪肝から脂肪性肝炎、肝硬変までを含む。インスリン抵抗性と肥満が、NAFLD発現の最も代表的な危険因子である。NAFLDは世界的に蔓延しており、成人の30%近くに影響を与えている。超過肝臓脂肪は心血管疾患、インスリン抵抗性、糖尿病前症、2型糖尿病の独立危険因子である。特に若者の中で肥満と2型糖尿病有病率が高まっていることから、NAFLDは確実に将来の臨床的懸念として残ることになるだろう。身体的に不活発なことが、NAFLDと密接につながりのあるインスリン抵抗性や中心性肥満を含む病理を促進するというエビデンスにもかかわらず、この機構的つながりを確証する研究が不足している。今日まで、NAFLDに対する身体活動の役割は、少人数または男性患者での2、3の研究においてしか試されてきていない。本研究は、定期的な身体活動とNAFLDの出現度、NAFLD患者における肝臓酵素との関連を、肥満とインスリン抵抗性との関係において、探究するための大規模横断的研究である。

●方法

(1)対象者
 糖尿病のない健康な韓国人を対象に横断的分析が実施された。初期データは2008年1月~12月に江北三星病院総合健康管理センターで包括的健康診断に参加した20歳を超える92,205人から入手された。これらの被験者のうち、以下のいずれかに当てはまる19,846人が除外された。
1  アルコール摂取量が30g超/日(12,069人)
2  B型肝炎血清マーカー陽性(3,698人)
3  C型肝炎血清マーカー陽性(279人)
4  既知の糖尿病(2,971人)
5  空腹時血糖値126mg以上/dl(2,628人)
6  ヘモグロビンエーワンシーHbA1c6.5%以上(2,605人)
7  超音波検査異常所見(肝硬変、肝細胞癌疑い、肝腫瘤、肝ジストマ兆候)(271人)
8  悪性腫瘍既往歴あり(1,352人)
9  甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症(513人)
10 アンケートのデータ不備(1,198人)
11 人体計測値のデータ不備(559人)
12 HbA1c値の不備(134人)

 適格被験者として残ったのは、男性38,970人、女性33,389人、合計72,359人となり、平均年齢は42.0歳であった。

(2)測定
 以下の測定を実施した。
1  身長と体重は裸足で薄着着用にて計測
2  BMIはキログラム体重÷メートル身長の二乗で算出
3  体脂肪率は多周波生体インピーダンス法により算出
4  一晩絶食後に前肘静脈から採血(5~12検査)
5  空腹時血糖値
6  総コレステロール値(TC)
7  トリグリセリド値(TG)
8  低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値
9 高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値
10 アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値
11 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値
12 HOMA-IR(インスリン抵抗指数)
13 腹部超音波検査(肝腎エコーコントラスト、肝臓の明るさ、血管の不明瞭化による診断)

(3)身体運動
 本研究においては、身体運動は以下に示すような自己申告によるアンケートにより評価され、時間、頻度、強度を含むものであった。

過去1カ月間に行った身体運動についてお考えください。
1 過去1カ月間に仕事以外で定期的な身体運動をしましたか。
a) はい b) いいえ
2 1週間に通常何日身体運動をしましたか。
a) 1~2回 b)3~4回 c)5~6回 d)週のほとんどの日
3 1回の身体運動に通常どのくらいの時間を全体で費やしましたか。
a) 30分未満 b)30~60分 c)60分以上
4 通常強度は毎回どのくらいですか。
a) 呼吸が通常よりは激しくならない軽度の運動
(例)ウォーキング、フィッシング、ゴルフ、ボーリング、激しくない家での運動、(徒手・美容・柔軟)体操
b) 呼吸が通常より少し激しくなる中強度の運動
(例)速足でのウォーキング、登山、水泳、普通のペースでのサイクリング、バドミントン、ダンス
c) 呼吸が通常より激しくなる強度の運動
(例)ジョギング、ランニング、エアロビクス、テニス、強度のサイクリング、サッカー
5 どのくらいの期間、定期的な運動を続けていますか。
a) 1~3カ月 b) 4~6カ月 c) 6~12カ月 d) 1年超

 定期的な運動というのを、アンケートの時点で少なくとも3カ月途切れなく、1回に少なくとも30分、週に3回以上、少なくとも中強度の運動をしていることと定義した。中強度の身体運動は、代謝当量(MET)スコアが3.0~6.0と定義した。典型的な中強度運動は平地を5.6km/h(3.5miles/h)の速さで歩く、3.8METを要するものとなる。本研究においては、中強度の運動は、呼吸が通常よりも相対的に激しくなるような運動、あるいは息がはずむようなものと定義した。具体的には、以下のようなものを含んでいた。速足でのウォーキング、登山、水泳、通常のペースでのサイクリング、バドミントン、ダンスなど。

(4)研究設定および統計分析
 72,359人の被験者全員がBMI値によって十分位分類された。
1  19.6未満
2  19.6~20.7
3  20.7~21.6
4  21.6~22.4
5  22.4~23.2
6  23.2~24.0
7  24.0~24.8
8  24.8~25.8
9  25.8~27.8
10 27.8以上

 すべての被験者が、定期的に運動しているか否かにより、運動群と非運動群に分類された。それぞれのBMI十分位群における運動群・非運動群でのNAFLDになるオッズ比を求めた。超音波検査によりNAFLDであることが判明した人19,921を別に分析し、運動との関連に基づいて肝臓酵素が高くなるオッズ比を求めた。

●結果

 対象者は、平均年齢42.0±8.5歳と比較的若く、BMI値平均23.4±3.0と肥満ではなかった。非糖尿病性被験者の27.5%がNAFLDで、NAFLD有病率は、運動群23.5%に対して非運動群28.4%と、運動群の方が低かった。全被験者の17.9%が定期的に運動をしており、運動群45.2±8.9歳に対して非運動群41.3±8.3歳と、年齢は運動群の方が高かった。また、BMI値も、運動群23.6±2.8に対して非運動群23.3±3.1と、運動群の方が高かった。

 NAFLDリスクをBMIレベルに従って分析したところ、非運動群を1.0としたオッズ比は、BMI19.6未満および20.7~21.6の群を除いて、すべてのBMI群において運動群のリスクが0.53~0.72と有意に低下した(年齢と性別で補正)。

 運動群と非運動群において、BMIそのものによる差異は見られなかった。体脂肪率、HbA1c 、LDL-C 、TG 、HOMA-IR の値は、BMIレベルが上がるほどだんだんと高くなっていき、BMI群ごとで比較すると運動群と非運動群における差異が認められた。HbA1C(P=0.018)、LDL-C(P<0.001)、TG(P<0.001)、HOMA-IR(P<0.001)については、BMIと運動との間に有意な相互関係が存在したが、体脂肪率では(P=0.590)となり有意差は認められなかった。

 それぞれのBMI十分位群で見ると、NAFLD有病率は運動の頻度、継続期間、強度が増すほど、発現数は少なくなった。

 NAFLD有病者を別に分析し、肝臓酵素が高くなるリスクと運動との関連を調べ、非運動群を1.0とした時のオッズ比を算出した結果は以下の通りとなった。
1 ASTオッズ比0.85(信頼区間 95% 0.74~0.99:年齢・性別・体脂肪率・TG・LDL・HDL・収縮期血圧・HOMA-IR・喫煙で補正)
2 ALTオッズ比0.74(信頼区間 95% 0.67~0.81:年齢・性別・体脂肪率・TG・LDL・HDL・収縮期血圧・HOMA-IR・喫煙で補正)

●考察

 非糖尿病性の被験者による本大規模横断的研究では、定期的な身体運動はNAFLDになるリスクを低下させることと関連があり、ほとんどのBMI群においてリスク低下が見られることが分かった。運動群と非運動群との間で、BMI十分位群すべてにわたりBMIそのものに差異が認められなかったという結果は注目に値するもので、いくつかの研究が肝脂質代謝を向上させ肝脂肪を減らすことに対する利益効果を得るために、運動で体重を減らす必要はないと報告していることにより支持される。

 脂肪組織、骨格筋、肝臓との間でエネルギー代謝調節不全へと至るインスリン抵抗性は、NAFLDの主な特徴であり、肝硬変の原因となる。本研究では、HOMS-IR値とNAFLD有病率はBMI値が上がるほどだんだんと高くなっていった。すべてのBMI群にわたり、運動群と非運動群でこれらの数値に差があり、HbA1c、TG、LDL-C、HDL-Cのような他の代謝成分においても同じであった。同じBMIでも、定期的に運動をしている人は、運動をしていない人よりインスリン抵抗性になりにくかった。この結果が、同じBMIの被験者間で運動習慣によってNAFLDになるリスクが異なることを説明するのに役立つかもしれない。

 同じBMI群の被験者間では、定期的に運動をしている人の方がよりインスリン抵抗性になりにくく、NAFLDになりにくかった。このことは体脂肪率とは独立したものであった。超音波検査によりNAFLDが判明した人では、定期的に運動をしている人の方が肝臓酵素のレベルが高まる(肝細胞が傷む)リスクは低くなり、このことは肥満やインスリン抵抗性とは独立したものとなっていた。

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