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心臓が突然止まらないために

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 当たり前かもしれませんが、心臓突然死には生活様式が大きく関わっており、喫煙しないこと、定期的に運動をすること、食生活に気を配ること、健康体重維持に努めること、すべてをクリアすれば、女性での心臓突然死リスクは相当に下がるとのことです。

Adherence to a Low-Risk, Healthy Lifestyle and Risk of Sudden Cardiac Death Among Women
Stephanie E. Chiuve, ScD; Teresa T. Fung, ScD; Kathryn M. Rexrode, MD, MPH; Donna Spiegelman, ScD; JoAnn E. Manson, MD, DrPH; Meir J. Stampfer, MD, DrPH; Christine M. Albert, MD, MPH
JAMA. 2011;306(1):62-69. doi:10.1001/jama.2011.907.

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 心臓突然死はすべての心臓死の半数以上を占めており、アメリカ合衆国においては毎年約25万~31万件起こっている。冠動脈性心疾患(CHD)が心臓突然死の根底にあるが、ほとんどの人、特に女性にとっては心臓突然死がCHDの最初の症状発現となっている。心臓突然死の一次予防を目的とした努力は、主に重症左心室機能不全の患者に植込み型除細動器を装着することに絞られているが、このハイリスクサブグループにおいては心臓突然死の25~30%のみが発生しているのであって、心臓突然死の大部分に対しては役に立っていない。リスクの低い人々に適用できる予防措置が心臓突然死を減らすために必要となっている。

 喫煙、肥満、運動不足といった変更可能な生活様式因子は心臓突然死の独立した危険因子となる。オメガ3系脂肪酸の摂取量が少ない、アルコールを全く摂取しない、アルコールを摂取し過ぎるなどの食事因子は、心臓突然死のリスクを高めることに関連ある。喫煙しない、食事に気を配る、定期的に運動する、健康体重を維持することを含む低リスク生活様式はCHD、脳卒中、糖尿病、がん、高血圧、慢性病、心臓血管疾患に関連する。さらには総死亡リスクを減らし、心臓突然死予防の選択可能な手段の一つとなる。しかしながら、多様な生活様式因子と心臓突然死リスクの組み合わせについて検証した研究はなく、本研究においてNurses' Health Studyでの有害な生活様式因子に帰する可能性のある心臓突然死の負荷量を推定するものである。

●方法

(1)対象者
 Nurses' Health Study(*1)の対象者が、1984年に初めて拡大版食物摂取頻度調査票への記入を行ったので、この年を本研究におけるベースラインの年とした。70以上の食品項目が未記入になっていたり、1日あたり600kcal未満または3,500kcalを超えるエネルギー摂取量を報告したりした者を除き、81,722人の女性が本研究分析の対象者として残った。

(2)生活様式因子の確認
 喫煙状況、体重、閉経状況、医薬品使用、医師による病気診断に関して、2年に1度情報を収集した。身長に関する情報はベースライン時調査で収集され、親に心筋梗塞歴があるかどうかについては1976年と1984年に収集された。身体活動は、2年から4年に1度アンケートの回答内容により評価された。中強度(1時間あたり3~6代謝当量)あるいは強度(1時間あたり6代謝当量超)の余暇活動に費やした週当たりの時間を計算した。速足でのウォーキング(1時間あたり3マイル以上)、ジョギング、ランニング、サイクリング、スイミング、テニス、スカッシュ、ラケットボール、ボートこぎ、徒手(柔軟、美容)体操、ヨガが含まれた。

 食品摂取頻度調査票は1984年、1986年、以降4年に1度記入された。それぞれの品目に関して、対象者は過去1年において特定量をどの程度の頻度で摂取したかを尋ねられ、それぞれの品目の栄養素量×摂取頻度によって栄養摂取量を計算し、すべての品目についての合計を算出した。

(3)低リスク生活様式の定義
 喫煙、運動、食事、体重の4因子を考慮に入れた。心臓突然死との関連および心臓血管疾患予防への最新推奨事項に基づきこれらの因子を選択した。それぞれの生活様式因子について、低リスク分類に属せば1ポイント、属さなければ0ポイントを各女性に付した。

 従前の研究において能動喫煙は心臓突然死と強い関係があるとされているので、本研究では最近喫煙していないことを低リスクと定義した。中強度から強度の運動への定期的取り組みも心臓突然死のリスク低下に関連あるとされてきている。最新の運動推奨内容に基づき、中強度から強度の運動に1日あたり30分以上取り組むことを低リスクと定義した。肥満は心臓突然死の独立した危険因子であり、BMI値3.3の増加が心臓突然死のリスクを20%高める。体重超過に対する世界保健機関のカットオフポイントであるBMI25未満を最善体重と定義した。

 食事に関しては、地中海ダイエット得点のコホート内分布上位40%を低リスクと定義した。地中海ダイエット得点には9要素あり、野菜・フルーツ・ナッツ・豆類・全粒穀類・魚をたくさん摂取すること、一価不飽和脂肪の飽和脂肪に対する割合・適度なアルコール摂取・赤身や加工肉の摂取を控えることが含まれている。中央値より多く摂取すると1ポイント、少ないと0ポイントとしたが、肉に関しては逆計算とした。1日あたり0.5~1杯のアルコール摂取を1ポイント、0または基準より多い摂取は0ポイントとした。地中海ダイエット得点は0~9の範囲となり、高い得点ほどより地中海ダイエットに近いことを示している。

 喫煙、運動、食事、体重各因子の0または1で表されている低リスク因子得点を合計し、0~4までの幅の生活様式得点を付した。

 コホート内のそれぞれ生活様式因子と心臓突然死の関連に基づき、拡張生活様式得点を算出した。得点1を最も健康的ではない、5を最も健康的であるとしてそれぞれの生活様式因子分類に対する割り振りを行い、4因子の合計点を出した(4点~20点)。最も健康的というのは、一度も喫煙したことがなく、BMI21~25、週に6時間以上の運動をしており、地中海ダイエット得点が5分類群の最上位群に入っていることを指している。

(4)終末点確認および定義
 死因特定は医療記録および解剖報告に基づいて行った。死に関する状況が適切に記録されていない場合は、近親者への面接を通して詳細確認を行った。

 不整脈関連死特定のために、亡くなる以前に循環器障害ないしは神経障害の形跡があった女性を除外した。死亡が目撃されていなくても、症状発生から1時間以内に亡くなったと考えることができ、解剖所見が心臓突然死と一致する場合、すなわち急性冠動脈血栓症または心筋壊死のない重症冠動脈不全症または死亡説明に対する他の病理所見がある場合も含めたところ、その数は35件となった。コホートの解剖率は7%であり、国全体の6%に匹敵するものであった。

(5)データ分析
 運動、BMI、喫煙が心臓突然死リスクへの過渡的効果があるとの仮説を立て、関係変数は最新情報を反映するようにアンケート周期ごとに更新された。身体活動については、追跡期間中に繰り返し評価されたが、1984年実施のアンケートでは調査されなかったので、1980年と1982年アンケートの平均を1984年ベースライン時の身体活動とした。

 2年から4年に1度評価された食事得点の累加平均を長期食事評価点として測定エラーを減ずるようにした。高コレステロール血症、糖尿病、高血圧、一過性虚血発作、CHD(非致死的心筋梗塞、狭心症、冠動脈血行再建)の後で食事における変化が起きることは、長期間にわたる食事と心臓突然死との関連性における交絡因子となり得るので、追跡期間中にそのような事態が起こった場合には、対象女性の食事情報更新は停止した。ある時点におけるデータがない場合は、最終観察は1サイクル先へ持ち越された。

●結果
 1984年6月から2010年6月まで26年間の追跡調査期間中、平均年齢72歳の女性において321件の心臓突然死を記録した。喫煙しないこと、運動すること、健康的な食事を摂ることそれぞれが、心臓突然死リスクと負の相関にあった。BMI値との関連はJ型となり、BMI21.0~24.9が底となった。四つすべての低リスク生活様式要素が心臓突然死のリスク低下と有意にそれぞれ独立した関連にあった。心臓突然死の絶対リスクは、低リスク要素0の場合22件/100,000人年、1の場合17件/100,000人年、2の場合18件/100,000人年、3の場合13件/100,000人年、4の場合16件/100,000人年となった。多変量相対危険度を低リスク要素0と比較すると、1は0.54(信頼区間95% 0.34~0.86)、2は0.41(信頼区間95% 0.25~0.65)、3は0.33(信頼区間95% 0.20~0.54)、4は0.08(信頼区間95% 0.03~0.23)となった。喫煙する、運動しない、体重超過である、ひどい食生活を送っているという4要素に帰する心臓突然死の割合は81%(信頼区間95% 52%~93%)となった。冠動脈性心疾患の臨床的診断を受けていない女性において、人口寄与危険度割合は79%(信頼区間95% 40%~93%)となった。拡張生活様式得点で見ると、8得点以下(コホートの6%)と17得点以上(コホートの15%)を比較すると、相対危険度0.13(信頼区間95% 0.07~0.23)となった。

●考察
 喫煙せず、定期的に運動し、慎重な食生活を送り、健康体重を維持している低リスク生活様式は、心臓突然死のリスクと負の相関にあった。4生活様式因子すべてで低リスクとなっている女性は、一つも低リスクとはなっていない女性と比較して、心臓突然死リスクが92%低下することが分かった。これらの関連が心臓突然死と因果関係にあるものであるなら、すべての女性が低リスク生活様式を送った場合に対象コホートにおける心臓突然死の81%は予防できたかもしれないのである。CHDとの診断を受けていない女性において心臓突然死の大部分が起こっており、79%の心臓突然死が不健康な生活様式に帰する可能性がある。

 女性における心臓突然死の一次予防は特に考えるべきことである。男性と比較すると、女性の重傷左心室機能不全確率は50%低く、心臓突然死以前にCHDと診断されることは66%低くなっており、最新の指針で勧めるβ遮断薬療法や予防用植込み型除細動器装着には適合しにくいのである。

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