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メイヨーの医師が白衣を着ない理由

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

内側から見た米国医療4

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。12年7月からメイヨークリニック勤務。

 メイヨークリニックを初めて訪れたとき、どことなく病院に来た感じがしませんでした。確かに美しい建物のデザインと、ホテルのような広いホールは、病院らしくありません。しかしそれ以上に、病院で当たり前に見る物が欠けていました。それは白衣です。見渡す限り、誰ひとり白衣を着ていなかったのです。スクラブを着ている人、車椅子に乗った人は多くおり、そこが病院であることは間違いありませんでしたが、白衣のない風景は少し不思議な感じがしました。

 メイヨーで医師は伝統的に白衣を着ません。男性はスーツにネクタイ、女性もドレスシャツなどビジネススタイルです。ワイシャツ、ネクタイの上に白衣というスタイルは他の病院でも多くありますが、白衣を着ないスタイルが徹底されている病院は米国でも珍しいです。規定では白衣を着てもよいことになってはいますが、ほとんどの医師はスーツに聴診器をかけています。外来でもスーツを着た医師が診察するので、初めて訪れた人は驚くのではないでしょうか。

 聞いた話によると、白衣を着なくなったのはメイヨークリニックの創設期にさかのぼります。患者に最高の医療を提供するためには、医師の服装を含めた見た目も大切であると、クリニック創設者のメイヨー兄弟は考えたようです。フォーマルな服装はプロフェッショナリズムを体現し、患者への尊重を示すことにつながります。医師は白衣をまとった特別な存在ではなく、目の前の患者に奉仕するメイヨーの一員として振る舞うことを期待されています。

 白衣を着ない効用は他にもいくつか考えられます。

 一つは、白衣がもたらす病院のイメージと、患者の精神的な負担です。白衣高血圧(医師の前で血圧が上がること)と呼ばれるように、白衣を着た医師の前では、多くの患者はリラックスできません。小児科医には白衣を着ない人がいますが、それも子どもに白衣の怖いイメージを与えないためです。また、白衣を着た人が多くいる病院は患者にとって「特別な」場所です。白衣を環境から取り除くことで、病院をできる限り「日常的な」場所に近づける効果があるのではないかと推測します。

 もう一つは、白衣の清潔度です。過去にいくつかの研究がありますが、白衣は多くの場合あまり清潔ではありません。毎日白衣を洗濯する医師はむしろ珍しく、外向けのコートのように洗わずに着続けることが多いです。長い白衣の袖口や裾は特に汚れやすく、そのため医師は短い袖や丈の白衣を着るべきではないか、という議論もあります。清潔さを保つためには、むしろ白衣を着ない方が理に適っているのかもしれません。

 医師にありがちなことに、今まで日常的にスーツを着ることがなかったので、今年まともなスーツとワイシャツを買い揃えました。慣れてしまうと結構快適で、スーツ姿でいることで自分がメイヨーの一員だと感じるのだから、不思議なものです。

※本記事中の意見は、筆者個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

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