全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

研修医のシフト制 良いことも多そう

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

内側から見た米国医療5

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。12年7月からメイヨークリニック勤務。

 日本の研修医の働き方をご存じでしょうか? 病院によってまちまちながら、当直が月に10回を超えるような場所もあります。当直は、寝ていてたまに呼ばれる業務というイメージがあるかもしれませんが、忙しい病院ではほとんど眠れないことも多々あります。しかも当直の翌日に休めるのは恵まれている方で、多くの場合翌日も通常業務です。従って、36時間連続勤務はよくあることです。研修医に限らず、上級医になっても似たようなものです。

 研修医にとって研修が忙しいことは、必ずしも悪いことばかりではありません。多くの症例を経験し、継続的に患者さんをケアし、責任を持って診療にあたることで学べることは多くあります。実際、私にとっても沖縄での研修は、医師としての礎を築いてくれました。

 その一方で、診療の安全性と、医師自身の健康及び労働環境の点からすると問題が多いように思います。24時間起き続けた場合、軽度の酩酊状態と同程度の思考能力しかなくなることが研究により分かっています。しっかり寝て元気な医師と、寝ていなくてフラフラの医師のどちらに自分の手術をしてもらいたいか、答えは明らかです。また、睡眠不足や過労はうつ病の発症や燃え尽きの原因になります。医師はそうでなくともストレスの多い仕事で、他職種より燃え尽き症候群が多いと報告されています。

 医師のミスが許容されず、すぐ訴訟につながってしまう米国では、研修医を過労から守るシステムが発達しています。週の労働時間は80時間に制限され、夜間は夜勤シフトの研修医が病棟を担当します。日本でも救急はシフト制を敷いていることが比較的多いですが、病棟でシフト制を採っている病院はなかなかないと思います。

 米国の病院では研修医のみならず、指導医もシフト制を採ることが多くなってきています。看護師や薬剤師など、その他の職種がシフト制で働くことを考えたら、ある意味当然のことのように思えます。しかしシフト制にすれば人件費は多くかかるので、それに見合う収入が病院に必要になります。

 夜間病棟を元気な研修医が担当するシステムは、病院管理の観点からは良いことが多そうです。

 例えば、救急から病棟への夜間の入院を制限する必要がないため、ベッドを24時間フル稼働で効率よく使えます。また夜間の緊急対応も上級研修医であれば大抵は対処可能なので、指導医に病院内に待機してもらうよりは、給料の安い研修医に担当してもらった方が病院としてはお金を節約できそうです。

 現場レベルでは、夜間の患者対応が丁寧になる利点があります。やっと眠りについた午前4時にPHSが鳴り、「患者さんが眠れないと言ってます」と呼び出しを受けると、どんなに温厚な研修医でもイラッとくると思いますが、日中十分睡眠を取っていれば、「分かりました、すぐ行きます!」と元気に返事できる......はずです。

  • 患者と医療従事者の自律をサポートする医療と健康の院内情報誌 ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索