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内側から見た米国医療1

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。12年7月からメイヨークリニック勤務。

 6月をもってNYでの内科研修を無事修了し、7月からミネソタ州ロチェスターにあるメイヨークリニックで予防医学フェローシップを開始しました。

 ミネソタ州はアメリカ中西部にあり、カナダと国境を接します。冬の朝は零下15℃を下回ることも多く、息も凍る寒さと聞きます。私自身こんなに寒い地域に住むのは初めてです。8月こそ30℃を超える陽気が時に見られたものの、最近は既に寒くなり始めました。既に始まったように思われる長い冬を思うと、やや心細くもなります。

 予防医学といってもピンとこない人が多いと思いますが、専門とするのは文字通り「予防」です。その適応範囲は非常に広く、たとえば、健康な人が糖尿病になるのを防ぐ、糖尿病の人が心筋梗塞になるのを防ぐ、心筋梗塞で入院した人が死亡するのを防ぐ、などすべての予防の段階がその専門性の範疇に入ります。

 少し違う見方をすると、予防医学は「予防の方法論とその適応の仕方」を専門とすると言えるでしょう。すなわち、「なぜ人は糖尿病にかかるのか?」という問いから始まり、「糖尿病にかからないためにはどうすればいいのか?」への答えを見つけ出し、「それを実現するにはどうすればいいのか?」を考える分野だと言えるでしょう。その問いの対象は個人であったり、地域であったり、国であったりします。

 日本ではなかなか馴染みのない分野だと思いますが、公衆衛生学と共通する部分が多く、米国では予防医学を専攻する人のほほ全員が公衆衛生学修士を取ります。特定の疾患や臓器に限定することなく、広い視野から医療を眺めることを必要とする。それが、私がこの分野に惹かれた理由の一つです。

 私が特に興味があるのは、予防医学分野の中でも医療機関に近い部分です。先の例で言うと、「心筋梗塞で入院した人が死亡しないためにはどうすればいいか?」を見つけ出すことです。薬の開発、心臓カテーテルの進歩など、新しい治療法を発見することが古典的ですが、それは方法論の一つにすぎません。病院に到着してから心臓カテーテルを受けるまでの時間をどう短くするか、入院してから専門性の高いケアを24時間365日提供するための体制をどう整えるかなどのシステムの改善に関わる部分が、死亡や合併症の予防において重要性を増してきているように思います。

 医療費の高騰に歯止めがかからないアメリカでは、医療の質を落とさず低いコストで医療を提供する必要性に迫られています。その中で、疾病の予防はコストパフォーマンスが良いと考えられており、特に重点が置かれている分野です。日本では現状でも比較的低コストで医療が提供されていますので、状況は大きく異なりますが、米国の試行錯誤から学ぶ部分は大きいと個人的には確信しています。そのような動向も含め、メイヨークリニックから引き続き米国医療現場の最新情報を提供していきたいと思います。

※本記事中の意見は、筆者個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

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