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ゲーム性を導入し継続的な運動促す

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内側から見た米国医療9

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。12年7月からメイヨークリニック勤務。

 1日約30分程度の有酸素運動を続けると、ほとんど運動をしない場合に比べて心臓疾患や高血圧、糖尿病などにかかりにくくなり、寿命も延びることが明らかになっています。しかし、最近のCDC(米国疾病予防管理センター)の調査によると、その運動目標を達成している米国人は半分しかいません。

 高価な医薬品に比べて運動は安価です。治安の悪い地域に住む米国の貧困層は、運動する機会も場所もなく、安全に運動するにもお金がかかるのは確かです。しかし、運動不足がひき起こす心臓疾患や糖尿病を治療するための社会的費用に比べると、運動を継続する方がはるかに安く、予防に効果的です。医療費の高騰が著しい米国では、どうやって人々に運動を推進するか、国を挙げて頭を悩ませています。

 その中で、運動にゲームの側面を導入することは、有効な策と考えられています。これはゲーミフィケーション(もしくはシリアスゲーム)と呼ばれ、元々競争の要素が少ない活動にゲーム的な競争や報酬システムを導入することで、人々に積極的な参加を促す取り組みです。最近では、研究者が何年も解けなかったタンパク質の構造解析の例が有名です。構造解析とはアミノ酸配列からタンパク質の三次元状の構造を割り出すことですが、それをオンラインゲームという形でウェブ上に公開したところ、ゲームユーザーたちによってその難問は数週間で解かれてしまったのです。

 運動は元々ゲームと親和性が高いです。むしろ、運動がゲームだなんて当たり前じゃないか、と思う人もいるかもしれません。しかし、医者に「1日30分は運動してください」と言われると、ウォーキングやトレッドミルでの運動を思い浮かべ、どうも気が進まない、時間がないなどと思う人が多いのではないのでしょうか? 家でできる運動器具を買ってみたけれど、結局使わずに部屋の隅に置き去り......などという話もしばしば聞きます。

 どう日々の運動にゲーム的要素を取り込むかは、Wii Fitを思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれません。家の中でゲームを楽しみながら運動をしてもらうことで、継続的な運動を促すことができます。毎日の目標を課し、日々の成果を記録し、過去の自分と比べて成長を楽しむ、というやり方もゲーム的要素を採り入れており効果的で、スマートフォンでも似たような健康管理アプリが人気です。メイヨーにも、隣の人と競争できるエアロバイクがあったり、運動量を競って賞品を勝ち取るイベントが開かれたりしています。

 インターネットを通して自らの運動成績を他人と共有する、それを比較する、似たような成績の人同士でチームを組み対戦する、その活動を通じて新たなコミュニティーを形成するなど、ゲーミフィケーションには幅広い応用が期待できます。

 「この運動アプリで1日1回対戦して、次の外来にスコアを持ってきてください」と医師が処方する日は近いと、私は勝手に予測しています。

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