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看護師の腰痛予防 これも医師の仕事

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

内側から見た米国医療3

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。12年7月からメイヨークリニック勤務。

 フェローシップの一環として産業医学研修があり、メイヨークリニックで働く人を診察することがあります。医師、看護助手、調理師、清掃員など病院の雇用者すべてが対象ですが、最も多いのは看護師です。

 看護師の仕事は他の職種と比べて肉体的に重労働、しかしその割に多くの看護師は筋骨隆々ではありません。従って体を痛めることが多いようです。最も多いのは腰のケガです。ぎっくり腰、腰椎ヘルニアなどの急性疾患に加え、慢性的な腰痛を抱える人も多いようです。寝たきりや車いすの患者さんの介助や移動、腰をかがめての動作の多さを考えれば納得がいきます。

 腰を痛めると多くの場合は通常の仕事を継続できないので、一旦休んでもらったり、腰に負担がかからない仕事に限定して働いてもらったりすることになります。完全復帰までの期間は痛みの程度や仕事の内容によって幅がありますが、入院患者を担当している場合、平均6週間程度かかります。

 腰痛によって看護師が休むのは、病院にとっても大きな損失です。貴重な戦力を一定期間失うことになるだけでなく、業務に関連した疾病として治療費はすべて病院持ちです。戦力に穴が空いた分は誰かがカバーするか、新たに人を雇わなければなりません。看護師は高度なスキルを持つため人件費も高く、経営の観点からもその影響を無視できません。

 私が担当した一人の30代の看護師は、数年前にケガをしてから慢性的に腰が痛くなり、頻繁に悪化を繰り返していました。悪化のたびに業務を休まなくてはならず、職場に対する心苦しさと、思うように動けないことへのストレスから、仕事を辞めることを真剣に検討していました。また他の看護師は、長引く腰痛から入院病棟への復帰を断念し、他の部署に異動しました。

 残念ながら過去の研究では、適度な運動を継続する以外に効果的な予防策は見つかっていません。従って、腰痛で診察に来る看護師さんには、必ず運動の大切さを伝え、必要に応じて理学療法士に紹介し、正式な運動プログラムを習ってもらうようにしています。また多くの看護師さんは既に知っていますが、腰を痛めない患者さんの持ち上げ方や移動の仕方を、パンフレットを使って再確認します。若い方は特に、「自分は大丈夫」と基本動作を守っていないこともあります。

 職場環境にも改善できることはありそうです。例えば高さを調節できるベッド、ベッド間の移動のための滑りやすいマットなどは腰への負担を減らします。患者さんの体重や介助の必要度をスコア化して介助者が腰を痛めるリスクを評価し、リスク度が高い患者さんには通常より多い人数で対応するなどの基準を定めることもできるかもしれません。

 より安全な職場環境を整えることで医療従事者の仕事の効率を高め、患者ケアの質を高める。最近はこんな取り組みも面白いと思い始めています。

※本記事中の意見は、筆者個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

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