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光老化を防ぐため紫外線のこと知ろう
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大人が受けたい今どきの保健理科17
吉田のりまき
薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
オゾン層が減り、地表に届く紫外線の量が増えてきました。対策は海外が先行していますが、日本でも環境省が「紫外線環境保健指導マニュアル2008」を出し、日常生活で注意すべきことを学校で子どもたちに教えています。これ、大人にも必要な知識なので、学びましょう。
太陽光に含まれる
雨上がりの虹は、太陽光が雨粒で分光されてできます。人間の眼では、最も内側に紫色(最も外側は赤)が見えますが、そのさらに内側にも、実は見えない「光」があります。紫外線です。紫の光よりも波長が短く、紫を超えるものという意味で、英語でultra(超えた)violet(UV)と呼ばれます。
紫外線の作用は波長によって異なり、便宜的に波長の長いものをUV-A、短いものをUV-C、その中間をUV-Bと三つに分類しています。
放射線に最も近いUV-Cは大気層(オゾン層など)で吸収され地表に届きません。
UV-Bはほとんどがオゾン層で吸収されますが一部は地表にやってきます。皮膚や眼に有害で、日焼けを起こし、皮膚がんの原因となります。近年のオゾン層の破壊により地表に到達する量が増えて問題視されています。
UV-Aは大気層で吸収されずに地表に届きます。UV-Bほど有害ではありませんが、皮膚の深部にまで侵入するので、長時間浴びた場合の健康影響が懸念されています。
以上でお分かりのように、私たちが注意をしなければならないのはUV-AとUV-Bで、主にUV-Bです。ちなみに、日焼け止め製品に表示されているSPF(Sun Protection Factor)はUV-Bへの効果、PA(Protection grade of UV-A)はUV-Aへの効果を示しています。
ダメージの蓄積で
海水浴などで、紫外線を急激に多量に浴びると日焼けします。皮膚が急性の炎症を起こし、肌は赤くなりヒリヒリと痛み、水ぶくれになってやけどのような症状になります。この日焼けは主にUV-Bが原因で(UV-Aも少し関係しています)、サンバーンと呼ばれます。サンバーンは数日で引き、皮膚の黒くなるサンタンが続きます。黒くなるのはメラニンが増えるからです。メラニンは紫外線をよく吸収し、次に紫外線を浴びた時に肌を守る役割を果たします。
日焼けは紫外線による急性の(一時的な)反応ですが、慢性の反応もあります。
長年紫外線を浴び続けると、加齢による皮膚細胞の老化に加えて、「しみ、しわ、たるみ」といった光老化が現れてきます。
日光黒子と呼ばれるしみは、皮膚の細胞内に部分的な異常が残り、メラニンが多くつくられるようになったため生じます。また、皮膚深部で肌の張りに関係する組織の機能が紫外線によって損ねられると、深いしわやたるみの原因となります。
さらに、日光角化症や有棘細胞がんなどが発症することもあります。これらは長年紫外線を浴びた人に現れ、発症年齢が高いため老化現象として見過ごされがちです。しかし日光角化症は皮膚がんの前段階で、この時点で治療すれば生命に関わることはないのに、放置するとがんへと進展し転移する可能性もあります。
高齢になると老化するのが当たり前だと思っているので、なかなか本人は皮膚の異常に気づかず、皮膚科に行ってみようとはならないものです。化粧などで鏡を見る回数が多い女性はともかく、特に高齢男性では、周りの人が気づいてあげることも大事です。一般の人が、皮膚の状態を、加齢によるものか紫外線によるものか見分けることはかなり難しいので、せめて加齢による老化と紫外線による老化とは別物という意識だけでも持っておいていただければと思います。
曇ってても存在する
加齢による老化と違って、光老化は自分で防ぐことができます。
高齢になってから慌てるのではなく、若いうちから紫外線対策をしたいものです。そのためには対策用製品の使い方だけでなく、紫外線そのものについての知識も得ておく必要があります。
紫外線も光の一種ですから、中学理科で学習した光の性質を思い出してください。
光は直進し、屈折し、反射するのでしたね。曇っている日は、太陽が見えないので紫外線もないと思い込んでいる人がいます。しかし、光の性質を考えれば、太陽が直接見えてなくても紫外線は地表に届いているかもしれないと考え直すことができます。実際のところ、空気中に漂う物質や雲で反射・散乱し、紫外線量は晴れた日の6割ほどあります。
難しい解説書ではなく子ども向けの科学の絵本で十分です。大人になった今だからこそ日常生活とつなげて読むことができます。