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中学校で「くすり教育」 2012年度から始まりました

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

大人が受けたい今どきの保健理科15

吉田のりまき

薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰

平成24年度から中学校の保健の学習指導要領に新たに「くすり教育」が加わりました。一体どのような内容のものか、ご存じでしょうか。

正しい飲み方を学校で

 患者さんは、薬を使用さえすれば、薬効も必ず得られると思いがちです。しかし、実際はそうではありません。どのように服薬すれば効果を得られ、何をしたら効果を得られなくなるのか(時には体が悪くなってしまうのか)といった考え方を知る必要があります。

 例えば皆さんは、うっかり薬を飲み忘れた場合どうしていますか? 2回分をまとめて飲んでしまうでしょうか。あるいは、毎食後服用という薬が出された場合、食事時間が不規則な場合でも、とにかく食事の時間に合わせて服薬しますか?

 もちろん、どうしたらよいか分からない場合は、医師や薬剤師に質問するのがよいと思います。しかし、その回答には科学的根拠があり、その科学的根拠さえ知っていれば大きな間違いはしなくなります。

 学校で、その科学的根拠を学び、薬を適正に使用しなければならない理由を「考える機会」となるのが、「くすり教育」なのです。

血液中の濃度が重要

 薬の服用量は臨床試験で十分に検討されています。重要なのは製品に入っている薬の量ではありません。服用した時に血液の中で薬の濃度がどれくらいになり、その濃度が時間とともにどのように変化するかです。

 まず、効き目が発揮されるためには最低どれくらいの濃度が必要かということを調べます。また、濃度が高ければ高いほどよいわけではなく、高過ぎると不具合が出てしまいます。そこで不具合が出る濃度も調べます。そして、効果が出る濃度と不具合が出る濃度の間になるように、薬の1回分の量が調整されています。

 食べ物の消化や排泄、代謝で学習したように、薬も同じように代謝され体外に排泄されます。したがって、ちょうどよい濃度になっていたとしても、やがては減っていき、効き目のない濃度になります(図1)。そこで再び必要な濃度を確保するために、また薬を服用することになります。

 代謝や排泄のスピードは薬によって異なります。もし、早く排泄されてしまう薬ならば、次の服薬までの時間を短くしないと濃度を維持することができません。逆にゆっくりと排泄される薬ならば、服薬間隔が短いと、前の薬が残っていて濃度が高くなり過ぎてしまいます。

 また、このグラフは一つの薬だけを示したものですが、他の薬を併せて飲むと、影響し合ってグラフの形が変わることもあります

 このように血液中の濃度の変化を意識して考えると、飲み忘れ時に2回分を飲んでしまうこと(図2)や、不規則な食事時間に合わせて服薬することが、なぜ好ましくないのか自然と分かるようになります。飲み合わせに留意しなければならない理由も分かりやすくなります。
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グラフで考える習慣を

 中学の保健では、図のような濃度変化のグラフが登場するようになりました。中学生にとっても一般の人にとっても見慣れないグラフなので、最初は理解するのに時間がかかるかもしれません。しかし、連続的な濃度変化をイメージしやすくなります。薬を飲む時だけ薬の量を意識するのではなく、服薬を開始してから服薬を終えるまでの全体的な服薬量や服薬方法について、考えていくこともできるようになるでしょう。

 まだ「くすり教育」は始まったばかりですが、この考え方を知ることは、今の大人にとっても重要なことです。

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