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睡眠のリテラシー40

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 寝る子は育つ。素晴らしい諺です。この「育つ」には体が丈夫になること、心(脳)が健やかになることの二つの意味が含まれていると思われます。睡眠が奪われているのは今や大人だけではありません。そのような時代だからこそ、この名言が響くのでしょう。

 子どもの睡眠時間を確保することの大切さを示す優れた研究成果がカナダから報告されています。32名の健康な小学生(8~12歳、男子14名、女子18名)とその親が3週間にわたる実験に参加しました。

 1週目は小学生の普段の睡眠状況を知るために費やされます。睡眠時間は携帯型の計測器を使って客観的に測りました。その結果、平均で8.8時間であることが分かりました。

 2週目の火曜日から金曜日の夜は、半数の小学生は普段より1時間早く眠るよう指示されます(睡眠延長条件)。残りの半数は逆に、普段より1時間遅く眠るよう指示されます(睡眠短縮条件)。そして、土曜日には実験室に赴き、様々な検査を受けました。

 続く3週目は二つの条件の順序を逆にして、各条件で睡眠をとりました。こうすることで、条件の順序に伴う影響を少なくしながら、すべての小学生が両方の条件を経験することができます。
睡眠延長条件では30分から2時間ほど延長があり、平均で1.2時間長くなりました。これに対して、睡眠短縮条件では約46分短くなりました。

 写真を見せ、そこで起こる感情を調べる検査によれば、睡眠延長条件では短縮条件より、「面白そう」や「幸せそう」などポジティブな感情が多く出されることが分かりました。また、感情の状態についての親による評定を比べたところ、睡眠延長条件の方が安定していました。眠気は想像通り、延長条件で低下しました。

 こうした主観的な評定に加えて、認知機能検査の結果でも両条件に違いのあることが明らかになりました。睡眠短縮条件に比べて、睡眠延長条件では、例えば、記憶に関わる検査で6%から12%の改善が認められました。注意集中に関わる検査でも 11%ほど成績が良くなりました。さらに、計算能力は6%高まることが分かりました。

 高々4日間の間、1時間ほど長く眠るか、短く眠るかによって、このような差が生じたのは驚くべきことです。言い換えれば、小学生の場合、睡眠が良くなれば、その効果はすぐに現れるのかもしれません。

 この研究では1週目、つまり、普段の睡眠の時に認知機能検査を行わなかったので、推定するしかありませんが、睡眠時間を長くとることによって、3%程度「頭が良くなる」のではないかとうかがわれます。

 今年4月から消費税が3%上がりました。この増加は何かと厳しいですが、将来を担う世代がしっかり眠ることで得られる3%の能力アップは大いに受け入れたいものです。親も子どもも一緒に、睡眠の大切さを見直してみましょう。

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