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地域で多世代を支える新しいネットワークづくりの試み―京都・亀岡でNPO設立

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妊産婦や育児中の母親、高齢者まで、様々な悩みを抱えている人たちを地域ぐるみで支えていこうという新しい取り組みが、京都府内で始まっている。

ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

会場.jpg妊産婦や子育て、高齢者支援など、これまで縦割りに行われてきた支援を横につなぐことで、新しい地域のつながりづくりを目指すNPO法人「はぐラボ」(芦田正吾代表理事)の設立記念フォーラムが11月30日、京都府亀岡市内で開かれ、行政や民間サービス提供者、市民など約100人が参加した。
 

はぐラボは約20年間子育て支援に関わってきた田中美賀子副代表理事が呼びかけ、企業家や高齢者支援、まちづくりの関係者らが加わって立ち上がった。子育てや高齢者、障害者支援、まちづくりなどの様々な分野について、民間、行政、企業など様々な立場や職種の人たちが横のネットワークをつくることで課題解決を目指す。今後はイベント活動や相談支援事業、政策提言なども行っていく予定。

■働く女性をサポートする企業の工夫
 フォーラムでは府内の企業や子育て支援NPO、高齢者支援NPOの活動報告があった。職員の8割が女性という株式会社藤大の藤田大子代表取締役は「家庭と子どものある女性が働くにはそれなりの覚悟が要る。家庭を優先すると職場での責任が持ちにくくなるが、家庭を後回しにすると仕事はうまくいかなくなる」と、家庭を持つ女性が働き続けることの難しさを強調。その上で、藤大では子どもの学校や地域での行事がある時期には前もって職員の間で協力し合って対応できるように調整するなど、様々な工夫をしていると話した。就職面接では『職場を優先するように』と伝え、組織人としての自覚を促していると述べた。

■分野別支援から多世代支援へ
 NPO法人からは、元々は子育てや高齢者と分野の別れている支援が、活動を続けているうちに様々な地域や社会の課題を任されたり、多世代・他業種と関わるようになっていった例が報告された。子育て支援のNPO法人「グローアップ」の広田ゆかり副代表は、母親同士の学びの場から始まった活動が、自治体からの委託を受けた子育て広場の事業に発展し、今では地域の誰もが通える場を開いたり、地域情報冊子をつくったりと、地域や世代間の交流につながる事業を展開していると話した。介護保険事業などを行うNPO法人「クローバー・サービス」の荒牧敦子理事長は、自主事業として行っている空き家を活用したカフェが、引きこもりだった若者の段階的就労の場になっていることを紹介した。

田中副代表理事は「例えば子育てなら、『子育ての社会化』と言われているが関心のある人は一部で、やはり個人の問題として捉えられがち。もっと社会化していくには、様々な業種や分野の人たちと関わる時期に来ていると思う。子育て支援や高齢者支援など行政の施策は縦割りになっていて、NPOの活動も同じ。新しい場を作ったり、建物を建てたりしなくても使える資源をお互いに共有でき、実現できることがあるはず。亀岡は広いので、小学校区ぐらいのエリアで住民が支え合っていけるようなつながりづくりや、そういう仕掛けをしていきたい」と話した。

次回は2月に子育て支援に関する講演会が行われる予定。


◆政策的背景からこのイベントを読み解いてみる

このイベントだけを見ると、多世代支援の一つと感じるかもしれないが、厚労省で進む政策を見るとその流れにあるものという見方もできる。

■高齢者施策から見る
今、各自治体では2025年の地域包括ケアシステム構築に向けた体制整備を進めている。その中で、2015年度から各自治体で①介護予防・日常生活支援総合事業②生活支援体制整備事業③在宅医療・介護連携推進事業④認知症総合支援事業―の4つの事業が始まっている。
①については、介護保険で提供されていた要支援者向けサービスが今年度から市町村事業に切り替わっており、「総合事業」と呼ばれている。様々なニュースで見聞きしている人もいるだろう。
②生活支援体制整備事業では、地域の資源開発やネットワーク構築などを担う「生活支援コーディネーター」を配置するとしている。また、様々な関係機関が情報共有や連携していくための「協議体」の設置も挙げられている。

■子育て施策から見る
今年度から子育て世代包括支援センターの全国展開が始まっている。妊娠期から子育てまで「切れ目のない支援」を提供することが目的で、産前産後サポートや産後ケア事業が行われる。自治体によってかなり状況が異なるが、高齢者の地域包括支援センターの子育て版とも言えるだろう。妊産婦や育児中の母親などからの相談やケアに関するワンストップ相談窓口になることが想定されている。

■福祉施策から見る
制度の狭間から漏れてしまう人たちを支えるための「地域の福祉サービスにかかる新たなシステムの構築」として「包括的な相談システムの構築」が始まっている。つまり、あらゆることのワンストップ相談。下の図を参照。

相談システム.jpg

これらを見るだけでも分かるように、国が主導する方法では実情の異なる地域の様々な課題を解決できなくなっており、各地域の自主的な取り組みに任せる予算の付け方が増えてきている。地域包括ケアはその最大の例だろう。以前の厚労省の資料では「地域の力の活用」や「連携」といった言葉が目立ったが、今では「包括的」「多様」といった文字をよく見かける。社会や地域全体を支えていくために、様々な立場の人たちを巻き込んでの地域独自の取り組みが求められている時代に入ってきたのだ。はぐラボの行うネットワークづくりは「協議体」や「包括的な相談システム」づくりやそのきっかけとも捉えることができ、そうした動きが民間から出てきたのも時代の流れの一つと言えるかもしれない。

地域包括ケアについては、書籍「地域包括ケアの課題と未来」をぜひどうぞ。地域には様々な課題があるが、共通してい抱えている問題が著名執筆陣によって列挙されている。また、はぐラボでも話題に上がったダブルケアに関連するが、書籍では在宅介護をする家族の経済的負担の大きさをデータをもって主張している。筆者も最初に読んだときは衝撃を受けた内容なので、在宅医療介護や地域包括ケアに関わる方々はぜひご覧頂きたい。「介護は家族で、の因習が日本の未来を暗くする」(ロハス・メディカル2014年10月号)

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