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図書館が高齢社会での新しい役割を模索―地域包括ケアの一つの機能

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会場の様子.jpg「認知症のある来館者への対応をどうすればいいか悩んでいた」「地域の認知症の方の見守りネットワークに図書館も加わっていく」――。

9月22日に大阪市内で開かれた図書館職員や行政職員向けのイベント「シニアと図書館サービス~認知症にやさしい図書館とは?」の中で、鶴見区の図書館司書が語った。認知症高齢者の来館者が増える中、図書館が地域の中での新しい役割を模索している。

ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵


このイベントは大阪大学大学院医学系研究科の山川みやえ准教授らが中心になって昨年から開いているもので、今回で4回目。図書館職員や行政に向けて認知症についての知識や情報を普及啓発することで、認知症のある人や家族、地域住民にとってより使いやすく親しみやすい図書館にしていこうというもの。また、地域住民の誰もが知っていて、学習や情報収集の場であり、地域の「居場所」でもある図書館の役割を捉え直すことで、高齢者の見守りや地域拠点としてなど地域包括ケアの資源の一つとしての価値を高めていこうという狙いもある。これまでに、奈良県生駒市や京都市の図書館の事例などが紹介されてきた。


この日に事例発表した鶴見区図書館司書の木村千草さんは「認知症と思われる方が継続的に来館されていて、どう対応すればいいか悩んでいた」と語った。今年2月からは、地域の高齢者の見守りをする機関の一つとして地域ケア会議にも参加することになったという。

木村さんは認知症高齢者への関わりについて悩んでいた時にこのイベントを知り、昨年開かれた会に参加したと話した。他の図書館の取り組みを聞いたり、高齢者向けのイベント企画について考える機会を得たという。真夏の時期には水分補給を勧めるなど、認知症の人への具体的な関わり方も分かったそうだ。これらの情報を役立て、鶴見区では高齢者向けの資料を置いたり、高齢者福祉施設でのボランティアなどを実施しているという。

また、大阪市立図書館の職員も前回のこのイベントに参加したことで意識が高まり、館内スタッフなどに向けて認知症サポーター養成講座を開き、120人が参加したそうだ。図書館内で大きな声を出したり、長期間本を借りたまま本人も分からなくなっていたりする認知症患者への対応のシミュレーションなどがあったという。


筆者が興味深かったのは、図書館職員が「認知症の方とどう関わっていったらよいのか」「高齢化の進む地域の中でどんな役割を果たせばよいのか」と悩んでいたことだ。そういうニーズがあるとは知らなかったので、目から鱗の落ちる思いで聞いていた。しかし思い起こせば、筆者が図書館に行くと、平日昼間だと8割が高齢者(主に男性)だったりする。図書館スタッフが対応に悩んでいることがあるのも頷ける。図書館に地域包括ケア機能の一つとしての意識が醸成されるというのは、面白いと思いながら聞いていた。

各地の図書館司書と研究らでつくる「超高齢社会と図書館研究会」からは、「認知症にやさしい図書館」のガイドラインが近々発表されるそうなので、興味のある方はぜひどうぞ。


主催者の山川氏は「地域包括ケアシステムとは、地域にある一つ一つの資源の価値が高められていくことだと思います。図書館を足掛かりにして広げていけたら」と話した。

山川氏が指摘するように、図書館だけでなく地域にある様々な施設・店舗にその可能性があるのだろう。地域包括ケアの可能性は、いわゆる「高齢者向け」と思われる場所・空間だけにとどまらないのかもしれず、非常に興味深いと思った。



地域包括ケアについては、ロハス・メディカルから書籍「地域包括ケアの課題と未来~看取り方と看取られ方」、記事「地域包括ケアの具体像を模索」(2014年9月号)があります。ご参考にどうぞ。

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