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様々な足の悩みを解決してくれる「足の診療所」とは?
「足と歩行を守る」シンポジウムでは、今年7月に都内で開院した足の症状や病気に特化した診療を行う「足の診療所」の吉原正宣院長も講演し、「足の診療所では『歩けない』をなくしたい」と語った。
「足の診療所って何?」 と思われる方も多いのではないだろうか。筆者もそうだったので、興味津々で聞いてきた。
ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵
「足の診療所」では様々な足の悩みを総合的に診ているという。外反母趾や巻き爪、水虫、ウオノメ・タコなど一般的に多い症状以外にも、糖尿病や下肢動脈硬化による足の傷、踵が外に曲がっていることなどによる痛みなど、様々な症状の患者が来院しているそうだ。
吉原氏は足の診療所での診察の流れについて「まず痺れや痛み、疲れなどの歩行不全になる三大原因を見て原因を特定し、改善していかなければいけません。診察をして、場合によって痺れ止めや痛み止めを出します。次に、骨の形がおかしくなっていたり姿勢がおかしい場合には、靴の中敷きや歩行訓練で直したりします。完全に曲がっている場合は手術になることもあります」と話した。
■日本では足が痛くても診てくれる場所がない
吉原氏が京都府内にある創傷ケアセンターで慢性創傷を診ていた頃、「難治性の患者さんは行く場所がなくて治しようがない。どこに行ったらいいか分からないという方がたくさんいる」と感じていたと話した。
高齢者は何かの病気で診察を受けた際に「適切な運動」を医師から勧められることが多いが、足に痛みがあると難しいことも指摘。「痛みがあって運動のできない患者さんが多くいます。でも『足が痛いです』と病院に行っても『歳のせいじゃないですか』とか『原因不明』と言われたりして、『もういいんじゃないですか』となる。そういう状況を多く目の当たりにしてきました。日本人はどこか痛くても、『ハイヒールを履いたからかな』『歳のせいかな』と思って多くの人が我慢します。そうこうしている間に年齢を重ねていくと、活動量が低下するので、脳血流も低下して認知機能も低下します。筋力、骨も変形します。結果、歩くのがしんどくなります。そしてある時にどこかの段差でつまずいたり、起き抜けにバランスを崩したりして転倒します。例えば80歳の高齢者が転倒して3か月寝たきりになってしまったら、廃用症候群になり歩けなくなるのは目に見えています」。
■米国には足の専門医
吉原氏は「日本ではお腹が痛くなったらお医者さんに、歯が痛くなったら歯医者さんに診てもらうのですが、アメリカでは足が痛い時は足専門の先生に診てもらいます」と足病学を学んだ専門医がいると話した。
ポダイアトリー/足病学は、足部や足関節を中心に下肢を専門に診て外科的治療までを行う診療科として、アメリカを中心に、イギリスやオーストラリアなど英語圏に広がっています。 その昔は「キロポジスト」とも呼ばれ、英語圏以外では「ポドロージスト」などとも言われています。 その中で、アメリカのポダイアトリーは、基礎医学に加え、「スポーツ医学」「リハビリテーション医学」「整形外科」や「生物力学」などの動きを診る他、「血管外科」「皮膚科」「形成外科」など『足』を診るために必要な分野を網羅した国家資格です。この資格保有者(ポダイアトリスト/足病医)は1万5000人と言われています。現在米国には15000人にものぼる『足』のスペシャリストPodiatristが活躍し、「身体のトラブルは医師に」、「歯のトラブルは歯科医師に」と同じように「足のトラブルは足病医師に」という医療体制が整っています。
(足の診療所webサイトより抜粋)
吉原氏は最後に、「足の診療所では『歩けない』をなくしたいと考えています。現在は病気ではないけれどある程度元気な人達に健康の教育をして一次予防し、健康増進を図っていきたいです。事故防止によって障害の発生量を減らせるのではと思っています」と話した。
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