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アルツハイマー型認知症を中年期に予測できないか

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 アルツハイマー型認知症の発症リスクが高い人を中年段階で見つけるためのバイオマーカーが何かないか、という研究が始まっているようです。

The PREVENT study: a prospective cohort study to identify mid-life biomarkers of late-onset Alzheimer's disease
Craig W Ritchie, Karen Ritchie
BMJ Open 2012;2:e001893. doi:10.1136/bmjopen-2012-001893

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 先進国において2001年から2020年までの間に倍増すると予測されている認知症の世界的流行に直面して、ほんのわずかであっても発症率の減少や発症年齢の遅れを起こせれば、関連公衆衛生負担の莫大な減少をもたらしそうである。認知症の正確な原因はよく分からないままであるが、過去10年間に実施されてきた疫学的研究は、複雑な相互作用であることを示しており、これらは発病の可能性や時期への作動的原因となり、根本的治療法がない中ではあるが、リスクを下げ発病を遅らせる戦略の基礎として使うことができるかもしれない。ただ単独の危険因子が予防の基礎として独立して用いられるための十分な差異説明にはならず、非常に有意な発生減少は、同時に複数の高リスク因子に焦点をあてることによって得られるかもしれないことを分析疫学におけるシミュレーション研究が示している。高血圧や糖尿病などこれらの危険因子の多くに身をさらすことは中年で起こっており、最大限の効果は、後年認知症に対して高リスクとなる中年に焦点を当てることにより得られそうであることを示唆している。しかしながら、臨床的認知症はその後20~40年間診断されないだろうことを考えると、この早期段階に指標として何を測るべきかが重要である。

 認知的・神経画像的・生物学的マーカーに関する最近の研究は、いくつかの要因における変化が、数十年という単位で明確な臨床症状に先立ち、よく起こるかもしれないと示している。知る限りにおいては、一つだけこの非常に早い段階でのバイオマーカーを調査してきた研究が存在する。平均年齢24歳の若者において、健常なアポリポタンパク質E4キャリアがアポプリポタンパク質E2キャリアよりも少ない場合、統計的に有意に海馬領域が小さいことを示した。ただし海馬の大きさのみではアルツハイマーリスクに対する十分なエビデンスとはならず、他のデータ組み合わせによる確認が必要なのである。このPREVENT研究の目的は、中年において候補となる幅広いマーカーの感度を将来の介入研究に対する尺度提供のため調査することである。

●方法

(1)バイオマーカーの選択
 血漿と脳脊髄液のアミロイドβ42、タウとpタウ、炎症性サイトカイン、急性期蛋白質、内側側頭葉委縮、白質障害、経内嗅領皮質および海馬の機能に関連する認知パフォーマンス、視床下部-下垂体-副腎系および交感神経系調節について調べることとした。

 以下の仮説を立てた。
1 40~59歳の中年期において、認知症の高リスク者は、低リスク者と比較して、血漿内および脳脊髄液内のアミロイドβ42が有意に減少し、タウとpタウが増加する。
2 高リスク者は炎症性サイトカインIL-1α・IL-1β・IL-18・IL-6・IL-8・TNF-α・IFN-γおよび急性期蛋白質CRP・ハプトグロビン・シアル酸ならびに長期炎症マーカーのオロソムコイドの中年期活性が高まる。
3 中年期での高リスク者は、内側側頭葉委縮と白質障害容積が増加する。
4 高リスク者は、経内嗅領皮質および内嗅領皮質の変化、海馬減少を反映して、認知機能課題において正確性と情報処理時間の両方でパフォーマンスが乏しい。
5 高リスク者は、視床下部-下垂体-副腎系および交感神経系調節の中年期での機能障害エビデンスを呈する。
6 バイオマーカーレベルと認知パフォーマンスにおける差異は、横断的および2年にわたる縦断的測定で明らかにされるであろう。

(2)対象者
PREVENTという中年期におけるバイオマーカーを調査する前向きコホート研究にて、対象者を以下の3群に分類した。
1 高リスク群 アルツハイマー型認知症の診断を受けアポリポタンパク質E4対立遺伝子を有している親を持つ子どもたち50人
2 中リスク群 認知症だがアポリポタンパク質E4対立遺伝子は有していない親を持つ子どもたち50人
3 低リスク群 認知障害がなく、アポプリポタンパク質E2対立遺伝子を有しアポリポタンパク質E4対立遺伝子は有していない親を持つ子どもたち50人

(3)分析
 アルツハイマー型認知症の前臨床バイオマーカーが、通常分布での計量値に対する分散分析を用いて、あるいは通常ではない計量値に対するノンパラメトリック検定を用いて3グループ間で比較される。

●結論

 PREVENTは、後年にアルツハイマー型認知症の発症リスクが高い人における、中年期でのバイオマーカーの変化に関する情報を提供するものである。候補マーカー測定における何か有意な差異が認められることとなれば、これらのバイオマーカーが介入戦略に基づく大規模無作為比較対象試験構築のエンドポイントを構成することになる。本研究の結果は、アルツハイマー型認知症の高リスク者への早期介入に焦点を当てた介入の開発にとっても重要となる。そういうものとして、本研究は将来の予防に対する重要な前進となるのである。

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