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ママのダイエットで、子どもが糖尿病になる

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つい一昔前まで、妊婦さんは「できるだけ太らないように」と、病院によってはかなり徹底的に指導されていました。しかし最近になって、妊婦のダイエットの弊害が一般的にも認識されるようになってきました。今回は、それが「単に太らなければいい、痩せなければいいという話ではないんだよ」というお話です。

大西睦子の健康論文ピックアップ21

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

 人生の早い段階の栄養状況が大人になってからの健康に影響することは、以前から言われていました。1980 年代、英国のDavid Barker 博士らは疫学調査※1によって、妊娠中の栄養不足で胎児が低栄養となり、低体重の赤ちゃんが生まれ、将来、糖尿病やメタボリック症候群※2等になりやすくなることを報告しました。その後、多くの疫学調査、動物実験や分子生物学的研究によって、Barker博士らの報告は確認され、今ではBarker 説(Barker's thrifty phenotype hypothesis)として広く認められています。

 胎児期の低栄養は、脳へのブドウ糖の供給を減らし、胎児の成長を遅らせます。さらには様々な臓器の発育不全を引き起こし、インスリン抵抗性※3、糖質コルチコイド過剰※4、レプチン抵抗性※5などを合併します。胎児期にこのような体の変化を経験すると、出生後に栄養状態がよくなった時、今度は肥満、糖尿病、高血圧やメタボリック症候群になりやすくなります。さらに、これらの変化は、世代を超えて継承されていくと考えられています。

 ところで、炭水化物や脂肪の量と質は、糖代謝※6とインスリン抵抗性・感受性に影響を与えます。脂肪の多い食事を摂取する人は、脂肪の少ない食事を摂取する人よりも糖代謝の異常が起こりやすくなります。また、オメガ3多価不飽和脂肪酸※7と一価不飽和脂肪酸※7の摂取が、インスリン感受性、抵抗性、空腹時血糖値に影響を与えます。これまでの研究では、妊婦さんの低栄養が胎児の脳へのブドウ糖の供給を減らすことはわかっていましたが、脂肪、タンパク質、炭水化物摂取の具体的な効果はそれほど知られていませんでした。先日、スペインはマドリード•コンプルテンセ大学のFrancisco J. Sánchez-Muniz博士らによって、雑誌『European Journal of Clinical Nutrition』に、バランスの悪い不健康な食事が胎児のインスリン抵抗性へ影響することが報告されましたので、今回ご紹介させて頂きます。

E Gesteiro, B Rodrı´guez Bernal, S Bastida and FJ Sa´nchez-Muniz.
Maternal diets with low healthy eating index or Mediterranean diet adherence scores are associated with high cord-blood insulin levels and insulin resistance markers at birth.
European Journal of Clinical Nutrition (2012) 66, 1008-1015
doi: 10.1038/ejcn.2012.92. Epub 2012 Jul 25.

 研究者らは、Healthy Eating Index (HEI、健康的食事)※8とMediterranean Diet Adherence (MDA、地中海式ダイエット遵守)の2つのスコアを用いて、35人の妊娠中の女性の食生活の質、血糖を評価し、新生児のインスリン感受性、インスリン抵抗性への影響を調べました。

 HEIは、ダイエットの品質を0から100までの範囲のスコアで評価します。0が一番貧しい食生活で、100がベストです。この研究では、HEIスコアが、70以上の場合は適切な食事と評価し、70未満は不適切であると判断されました。MDAは、13のポイントについて評価され、7以上が適切な食事、7未満のスコアは不適切と判断しました。

 結果、驚いたことに、半数以上の妊婦さんが、飽和脂肪酸※9を多く含む動物性食品に偏った質の低い食事を摂っており、野菜や豆類からの炭水化物の摂取量が少なかったのです。

 HEIスコアの低い妊婦さんは、炭水化物や食物繊維の摂取が低く、脂肪やコレステロールを多く含む食事をしていました。ですから、総エネルギーに占める炭水化物の割合が少なく、脂質、飽和脂肪酸の割合が増えました。
MDAスコアの低い妊婦さんは、炭水化物や食物繊維の摂取が低く、コレステロールを多く含む食事をしていました。さらに、多価不飽和脂肪酸値※7が低く、また一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比率も低下していました。 飽和脂肪酸/炭水化物と、オメガ6/オメガ3比※7が上昇していました。

 HEIとMDA両方のスコアが低い女性は、空腹時の血糖は低めでしたが、赤ちゃんは、 インスリンレベルが高く、高インスリン抵抗性と高血糖を示し、糖尿病を発症するリスクが高くなりました。

 今回の論文の執筆者、Francisco J. Sánchez-Muniz博士は、「地中海式ダイエットは、果物、野菜、魚、全粒穀物を摂り、不健康な脂肪を制限する、健康的な食事計画のうちの一つです。特に、高脂肪や加工食品の多くを回避し、栄養素の高い食品を食べることがアイディアの基本としてあります」と述べています。

 地中海式ダイエットの考え方は、私たちの和食に似ていますので、妊婦さんはもちろんのこと、一般の方も、是非取り入れてみてくださいネ。

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