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子どものおやつとダイエット
冬休みに入ったこの時期、子供たちの食生活も、ついつい大人につられて乱れがちになってしまいますよね。特に、間食はきちんと目が行き届かなくなるもの。でも、間食こそ、内容次第では健康と成長の大きな武器になるかもしれません。
大西睦子の健康論文ピックアップ22
大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。
ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。
育ち盛りの子供たちは、1日3回のごはんをしっかりと食べるのはもちろんのこと、基礎代謝※1が高いので、さらにおやつで足りない栄養素を補充できるといいですよね。ところが最近は、栄養バランスの偏りや運動不足などが原因で、子供たちの「肥満」や「痩せ」※2の増加が問題となってきています。
2005年の国民健康・栄養調査では、小学校4~6年生の男子では「肥満」と「太りぎみ」が28.5%に、中学生の男子では18.6%にみられました。一方、中学生の男子の33.8%が、「痩せぎみ」と「痩せすぎ」でした。女子中学生は、28.2%が「肥満」と「太りぎみ」で、16.6%が「痩せぎみ」と「痩せすぎ」でした。子供たちの体型が、「肥満」「太りぎみ」あるいは「痩せすぎ」「痩せぎみ」に、二極化する傾向が見られます。体型が普通の男子は64.0%(1988年)から57.0%(2005年)に、女子は62.1%から56.6%に減っているのです。
子どもの「肥満」は、将来、高血圧や糖尿病、心疾患を発症するリスクを上げますし、子どもの「痩せ」は、骨粗鬆症※3の合併やホルモン分泌に問題を起こす可能性があります。今回は米国ニューヨーク州コーネル大学の研究者たちから、子どもたちの健康的なおやつの食べ方ついて雑誌『Pediatrics』(小児科学)に報告がありましたので、ご紹介させていただきます。
Brian Wansink, Mitsuru Shimizu and Adam Brumberg
Association of Nutrient-Dense Snack Combinations With Calories and Vegetable Intake
Pediatrics; originally published online December 17, 2012;
DOI: 10.1542/peds.2011-3895
米国では、2~19歳の子どもの32%が肥満や体重過多という問題を抱えています。研究者たちは今回、小学3~6年生の子供たち201人を対象に、おやつの種類によってどう満腹感の違いを感じるか調査しました。子供たちは放課後に、自分の好きな45分間のテレビ番組を見ながら、1)ポテトチップスのみ(〜1500kcal)、2)チーズのみ(〜370kcal)、3)野菜(ブロッコリー、ベビーキャロット、ピーマン)のみ(〜120kcal)、4)野菜とチーズの組み合わせ(〜490kcal)のいずれか無作為に、自由に与えられました。子供たちに対して、テレビを観ながらおやつを食べ始める前と、テレビを観ながらおやつを食べ始めて20分後に、膨満感について質問をしました。親たちには、家庭環境についてのアンケートをしました。
太り気味または肥満の子供は、1)ポテトチップスのみのおやつの場合、標準体重の子供たちよりポテトチップスをたくさん食べましたが、4)野菜とチーズの組み合わせのおやつの場合、食べたカロリーは1)ポテトチップスのみのおやつと比べて76%も少なかったのです。標準体重の子供は、4)野菜とチーズの組み合わせのおやつは、1)ポテトチップスのみのおやつと比べてカロリーが60%少なくなりました。
さらに、家族と一緒に食事をしたり食べながら話したりすることが少ない子供は、たくさんポテトチップスを食べました。ところが、このように互いに関与の少ない家族の子供も、1)ポテトチップスのみのおやつの代わりに4)野菜とチーズの組み合わせのおやつを食べると、摂取カロリーが77%も減りました。また、家族の関与の多い子供たちは、カロリー摂取が67%減りました。
著者のBrian Wansink教授は、「子どもたちの肥満対策には、特に魔法のような食べ物が必要なのではありません。ポテトチップスやお菓子の代わりに、野菜とチーズを組み合わせたおやつを選ぶなどで、第一には摂取カロリーを減らせます。また、野菜だけよりも、チーズを添えることで、タンパク質やカルシウムも補えます。第二に、そうした盛り合わせのおやつは、食べるのも楽しいですし、ポテトチップだけのおやつよりも子どもたちはゆっくり食べます。ですから、子どもたちは少ない量で満足感を得ることができ、結果として食べる全体量が減らせるのです。第三に、そうした盛り合わせのおやつのカロリー低減効果は、肥満や太り気味、あるいは家族の関与の少ない家庭の子供たちに顕著でした。つまり、盛り合わせおやつは健康的なダイエットの必要がある人たちに特に効果的な手段と言えるでしょう」と述べています。
この研究から、子どもたちのおやつは、やめさせるのではなく、栄養価の高い様々な種類の食品を取り入れたものにするといいようです。是非ポテトチップスやチョコレート、クッキー等の代わりに、野菜や果物、チーズの盛り合わせにしてみてください。おやつで、食物繊維やビタミン※4、ミネラル※5、タンパク質まで摂取できてしまいますよね。そして肥満解消に役立つというわけです。
こうしたおやつは、子どもだけではなく、大人の私たちも試してみる価値あり!と思います。さあ、今日からみんなで、さっそく開始ですネ!