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認知症リスクには喫煙・BMI・身体的活動・食事の4因子が関連

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 今回もホノルル・アジア加齢研究からの報告です。前身のホノルル心臓プログラムで中年期における危険因子評価をされた対象者が、25年後に認知症を発症するリスクと健康的な生活様式との関連調査を受けました。喫煙しないこと・標準体重であること・身体的に活発であること・健康的な食事を摂取することすべてが揃うと、認知症リスクが大きく低下することが分かりました。

Lifestyle and the Risk of Dementia Among Japanese American Men
Rebecca P. Gelber, MD, DrPH, Helen Petrovitch, MD, Kamal H. Masaki, MD, Robert D. Abbott, PhD, G. Webster Ross, MD, Lenore J. Launer, PhD, and Lon R. White, MD, MPH
J Am Geriatr Soc. 2012 January; 60(1): 118-123.
Published online 2011 December 28. doi:10.1111/j.1532-5415.2011.03768.x

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 ホノルル・アジア加齢研究からの前向きコホート内症例対照研究として、健康な生活様式へのこだわりが、認知症リスクを低下させるかどうかを測定した。1965~1968年に平均年齢52歳で、25年後に認知症検査を受けた3,468人の日系アメリカ人男性を対象とした。

 低リスク群を以下の中年期特性として定義した。
1 非喫煙者
2 BMI値25.0kg/m²未満
3 身体的に活発
4 健康な食生活(アルコール・乳製品・肉・魚・フルーツ・野菜・穀類・一価不飽和脂肪の飽和脂肪に対する比率)

 認知症全体・アルツハイマー病・血管性認知症発症に対する信頼区間95%でのオッズ比を、潜在的交絡因子で補正を加えたロジスティック回帰分析により求めた。

 認知症は、全体の6.4%で診断され、そのうちの52.5%はアルツハイマー病、35.0%は血管性認知症だった。独立して危険因子を調べると、BMI値が最も強く認知症全体のリスク増大と関連があり、22.6kg/m²未満を比較基準とした場合の25.0kg/m²超でのオッズ比は1.87(信頼区間95% 1.26~2.77)となった。独立した危険因子では、食事得点を除いたすべてが、血管性認知症と有意に関連した一方で、アルツハイマー病単独との有意な関連となったものはなかった。コホート全体の7.2%にあたる、4低危険特性を有する人は、認知症全体に対して最も低いオッズ比となり、他の人たちと比較してのオッズ比は0.36(信頼区間95% 0.15~0.84)であった。低危険特性の組み合わせとアルツハイマー病単独との有意な関連は存在しなかった。

●背景

 認知症の増大している負担に直面して、ひとたび症状が発現すれば効果的な治療が求められるが、予防戦略開発のために認知症の原因や予測因子を理解することも必要となる。現在利用可能な認知症治療は、認知機能における最低限の改善を提供するのみであることから、予防手段の必要を強調するものである。

 ホノルル心臓プログラムを含め、先行する研究は、健康な生活様式にこだわることが心血管疾患や糖尿病発現を予防するかもしれないことを証明してきている。中年期における肥満・喫煙・身体的不活発を含め、生活様式因子のいくつかは認知症発現と関連ある。より低い認知症リスクは、適度のアルコールを摂取すること、魚摂取・フルーツ摂取・野菜摂取・一価不飽和脂肪の飽和脂肪に対する比率・豆類摂取・穀類摂取をより高くし、肉や乳製品の摂取をより低くする食事へのこだわりとも結び付けられてきている。しかしながら、健康な行動様式がどのように認知症と関連するのかは、不明確なままとなっている。

 本研究では、中年期における変更可能な因子と25年後の認知症リスクとの関連を、3,400人を超えるコホート内症例対照研究において調査した。

●方法

(1)対象者
 3,734人の日系アメリカ人男性を対象とした、地域密着型前向きコホートであるホノルル・アジア加齢研究(*1)からのデータを用いている。前身であるホノルル心臓プログラムでは、標準的健康診断とラボ検査が実施され、ベースライン時の人口統計学・食事・身体活動・病歴に関する特性は、構造化面接(*2)によって入手された。1991年に確立されたホノルル・アジア加齢研究は、脳の疾病を中心とする加齢に伴う健康状態の研究となった。

 ホノルル心臓プログラムベースライン時検査を受けた8,006人のうち、ホノルル・アジア加齢研究には参加しなかった人たちは、中年期での肥満傾向(P<0.001)、喫煙傾向(P<0.001)、食事得点が上位40%には入らない傾向(P<0.01)があり、コレステロール値が高く(P<0.01)、糖尿病・高血圧・心血管疾患を有している傾向(P<0.001)となった。アルコール摂取量もより多く、教育水準はより低かった(P<0.001)。中年期での身体活動や幼年期を日本で過ごした年数には差異がなかった。

1965~1968年のホノルル心臓プログラムコホートから収集された危険因子情報を用い、初めて認知症例調査と標準的認知機能評価が実施された1991~1993年に定義された症例群と対照群とでの、コホート内症例対照研究を行った。Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)得点のある3,734人に限定し、得点が74点未満で認知症評価に参加しなかった240人を除外した。CASI得点が74点未満で認知症評価を受けなかった240人と受けた347人とを比較すると、ベースライン時での年齢・喫煙状況・BMI・食事得点による有意差はなかった。認知症評価を受けた人は、中年期でより身体的に活発ではなかった(P<0.01)。ベースライン時での身体活動情報(18人)・アルコール摂取量情報(2人)・BMI情報(1人)・食事情報(5人)のない対象者をさらに除外し、3,468人が分析可能者として残った。

(2)アウトカム
 認知症例調査は、1991~1993年に多段階で標準的な手順を用いて実施した。対象者は、まず100点法のCognitive Abilities Screening Instrument(CASI)によってふるい分けをされ、その得点によってさらなる認知症評価のサブグループ識別を行った。認知症評価には、神経学的検査・神経心理学的組み合わせ検査・認知機能と行動の変化に関する情報提供者面談が含まれた。認知症の疑いがある場合は、CTまたはMRIによる脳画像撮影と、血液検査が実施された。これらのデータに基づいて、「精神障害の診断と統計の手引き-改訂第3版」基準に従い、研究担当神経科医と、認知症に関する専門知識を有する2人の本研究担当医の総意によって認知症診断がされた。

 アルツハイマー病の可能性大または可能性ありは、「国立神経疾患・伝達障害研究所、および脳卒中/アルツハイマー疾患・関連疾病協会」基準に従い診断された。アルツハイマー病を主因として含む混合型認知症は、アルツハイマー病の可能性ありと定義した。血管性認知症の可能性大または可能性ありは、「カリフォルニア州アルツハイマー病診断・治療センター」基準に従い診断された。血管性認知症を主因として含む混合型認知症は、血管性認知症の可能性ありと定義した。本分析では、症例定義において、可能性大と可能性あり両方のアルツハイマー病および血管性認知症を含めた。

(3)変更可能な危険因子評価
1 BMI 1965~1968年の検査において、全参加者に対して体重および身長測定が実施され、キログラム体重÷メートル身長の二乗で算出した。BMI値は、15.5~22.6・22.6超~25.0・25.0超~39.9kg/m²の三分位分類、および標準25.0未満・体重超過25.0~29.9・肥満30.0 kg/m²以上の世界保健機関(WHO)分類により調査した。
2 喫煙歴は、ベースライン時での自己申告に基づき、一度もない・過去に喫煙・現在喫煙に分類した。
3 中年期における身体活動は、1日あたり次のようなことにどのくらいの時間を費やすかにより評価した。
①活動なし(例:睡眠・横たわっている)
②移動なし(例:座っている・立っている)
③軽い動き(例:歩いている)
④中程度の動き(例:庭いじり・大工仕事)
⑤強度の動き(例:シャベル作業・穴掘り)
4 食事情報は、中年期における標準的24時間思い出し法から入手した。食品摂取量と栄養摂取量は、残差法により総カロリー摂取量に換算された。アルコール摂取量情報は、ワイン・ビール・蒸留酒の摂取頻度と摂取量(オンス/月)に関し、ベースライン時検査面談中に実施された質問票から入手した。

(4)低リスク群の定義
 先行研究において認知症と独立して関連があるとされている生活様式特性に従い、認知症に対する低リスクが予測されるグループを定義した。
1 BMI BMI値が25.0 kg/m²未満の、中年期に体重超過または肥満ではなかった人と定義した。中年期における体重超過や肥満は、認知症リスク増大との関連がある。
2 喫煙 中年期において、現在は喫煙していないと報告した人と定義した。先行する研究によって、喫煙者において認知症リスクがより高くなることが証明されている。
3 身体活動 軽い動きまたは中程度の動きに関して、最高四分位に属する人と定義した。1日あたりに軽い動きに対して平均7.2時間(標準偏差3.2)、または中程度の動きに対して平均4.4時間(標準偏差3.0)を費やすことに相当する。認知症リスク低下と身体活動がより多いことは関連がある。
4 食事 食事と認知症に関する先行研究と類似の好ましい食事構成を識別した。肉と乳製品摂取が低く、フルーツ摂取・野菜摂取・魚摂取・穀類摂取・一価不飽和脂肪の飽和脂肪に対する比率・豆類摂取が高いことが、適度なアルコール摂取を含め、より低い認知症リスクと関連ある。中年期における適度なアルコール摂取も、晩年期における認知パフォーマンス向上と関連があり、飲酒しない人や大量に飲酒する人においては、認知機能障害リスクがより高くなる。以下の分類に対して、エネルギー調整済み摂取量の五分位により、最も健康的ではない1点から最も健康的な5点を配点し、合成得点を出した。5点獲得となるのは、
①フルーツ摂取
②野菜摂取(日本の漬物は含まず)
③魚摂取
④一価不飽和脂肪の飽和脂肪に対する比率
⑤穀類摂取(米・麺・朝食用シリアル・パン・全粒穀類・精製穀類を含む)
の最大五分位群と
⑥肉摂取
⑦乳製品摂取
が最も低い五分位群である。
該当コホートでの豆類摂取は、ナトリウム含有量の高い醤油と味噌が中心であったことから、豆類は食事得点には含めなかった。アルコール摂取量と認知低下とのU字型関係を示す先行する研究報告に基づき、以下のような配点とした。
①1点 全く飲酒しない・1カ月あたり32オンス(1日あたり2杯)超
②2点 1カ月あたり0オンスより多く4オンス未満(1日あたり0.25杯まで)
③3点 1カ月あたり4以上8オンス未満(1日あたり0.25~0.50杯)
④4点 1カ月あたり8以上16オンス未満(1日あたり0.50~1杯)
⑤5点 1カ月あたり16以上32オンス以下(1日あたり1~2杯)
食事得点は、8項目のそれぞれの得点合計として算出し、上位40%に入った場合を低リスクと定義した。

(5)共変数
 ベースライン時に評価された共変数は以下の通りである。
1 年齢(連続変数)
2 教育水準(修学年数)
3 職業的複雑性(平均学歴を反映する6段階尺度)
4 幼年期を日本で過ごした年数(5年未満・5年以上)
5 高コレステロール値(血清値240mg/dL以上)
6 高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上、または降圧剤使用歴)
7 糖尿病(糖尿病歴、またはインスリン使用、または経口抗糖尿病薬使用)
8 心血管疾患(脳卒中歴、または狭心症歴、または心筋梗塞歴、または他の冠動脈心疾患歴) 情報は面談から入手し、医療記録の再調査により確認した。
9 アポリポ蛋白Eε4(一つまたは二つの対立遺伝子保有・非保有)

(6)分析
 中年期における特性と認知症リスクとの関連を調べるため、ロジスティック回帰を用い、多変量補正を加えた信頼区間95%でのオッズ比を算出した。まず、それぞれの低リスク因子を、他の低リスク因子では補正を加えず、すべての共変数で補正を加え評価した。その後、年齢・教育水準・アポリポ蛋白Eε4状態・幼年期を日本で過ごした年数・アポリポ蛋白Eε4状態と低リスク群との相互作用で補正を加え、危険因子を組み合わせての低リスク群と他のすべての人とを比較した。さらに、残りの共変数を加えて補正をしたモデルでの分析を行った。

 アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子保有者と非保有者での階層化分析も行った。統計的に有意な効果修飾評価のため、尤度比検定を用いた。また、ベースライン時で高血圧歴のあった対象者、および体重超過または肥満であった対象者を除外しての分析も行った。

●結果
 25年後で223人の認知症診断がされ、117人がアルツハイマー病、78人が血管性認知症であった。他の型の認知症は、パーキンソン病13人・進行性核上性麻痺4人・くも膜下血腫2人・ビタミンB12欠乏1人・外傷2人・特定できない原因6人を含んでいた。低リスク4因子それぞれを個別に見ると、中年期においてBMIがより高いこと、身体的により不活発であること、喫煙が、晩年期における認知症発症傾向となった。食事得点は、単独では認知症の統計的に有意な予測因子とはならなかった。

 単独での低リスク構成要素は、認知症全体より血管性認知症とより強い関連があった。一度も喫煙したことのない群と比較すると、中年期において喫煙していた群の血管性認知症に対するオッズ比は、2.69(信頼区間95% 1.50~4.81)となった。BMI値の最高三分位群(25.0kg/m²超)は、最低三分位群(22.6 kg/m²以下)と比較すると、血管性認知症に対するオッズ比が2.29(信頼区間95% 1.22~4.29)となった。単独での低リスク構成要素は、アルツハイマー病とは統計的に有意とはならなかった。

 低リスク因子の組み合わせを見ると、より健康的な生活様式特性であるほど、認知症全体に対するより低いオッズ比を漸次与えることとなった。中年期において喫煙せず、健康的な食事を摂取し、体重超過でも肥満でもなく、身体的により活発という4低リスクすべてを有するのはコホートの7.2%に過ぎなかったが、認知症発現リスクが最も低く、年齢・教育水準・アポリポ蛋白Eε4状態・幼年期を日本で過ごした年数・アポリポ蛋白Eε4状態と低リスク群との相互作用で補正を加え他の人たちとの比較をしたオッズ比は、0.36(信頼区間95% 0.15~0.84)となった。さらに、残りの共変数を加えて補正をしたモデルでも、結果は実質的に変わらず、4健康的特性を有する群のオッズ比は0.37(信頼区間95% 0.16~0.87)となった。低リスク特性の組み合わせとアルツハイマー病単独でのリスクとの間には、有意な関連はなかった。

 発症数が少ないことが部分的な原因となり、統計的有意性には至らなかったが、中年期における高血圧歴のあった1,177人を除外して分析をしても、生活様式と認知症リスクとの間には類似した関連があり、他の人たちとの比較において、4低リスク構成要素を有する群の認知症に対するオッズ比は、0.38(信頼区間95% 0.13~1.08)となった。

 ベースライン時に体重超過または肥満だった人を除いても結果は同様であった。中年期において標準体重だった人でも、非喫煙者であり、身体的により活発であり、食事得点が上位40%に入ることが、標準体重でこれらの健康的行動をとっていない人との比較において、0.37(信頼区間95% 0.16~0.89)という認知症に対するオッズ比と関連した。

 アポリポ蛋白Eε4状態に関する情報が入手できた3,380人のうち、アルツハイマー病109人中の30.3%が少なくとも一つのアポリポ蛋白Eε4対立遺伝子を保有しており、血管性認知症77人中では16.9%、どちらの認知症もない人では18.2%が保有者であった。アポリポ蛋白Eε4状態での階層化分析において、低リスク要素は、ε4対立遺伝子非保有群(2,753人)では認知症オッズ比の低下と関連あったが、対立遺伝子保有群(627人)では関連がなく、効果修飾の尤度比検定P<0.001のエビデンスを伴った。ε4対立遺伝子非保有群では、4低リスク因子すべてを有する場合、他の人たちとの比較におけるオッズ比は0.36(信頼区間95% 0.15~0.84)となったが、対立遺伝子保有群では、4低リスク因子すべてを有する場合でもオッズ比は0.98(信頼区間95% 0.35~2.69)であった。

●考察
 本コホート内症例対照研究では、中年期において健康的な生活様式であった人が、25年後に認知症を発症しにくかった。健康的要素が多いほど、認知症リスク低下がより高まった。中年期において高血圧ではなかった人や肥満ではなかった人でも、健康的生活様式であることが、晩年期における認知症を発症しにくかった。さらに、より健康的な生活様式は、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子非保有者にとって、認知症リスク低下のために特に重要であったようだ。先行する研究でも、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子非保有者において、生活様式因子と認知症リスクのより強い関連が同様に示されている。

 結論として、本研究結果は、中年期における健康的な生活様式がより低い認知症リスクと関連あることを示し、疾病予防における健康的な行動へのこだわりの重要性を強調するものである。中年期における健康的な行動促進にさらに重点を置くことは、努力を必要とすることではあるが、認知症に対する公衆衛生負担低減において価値のあることだと証明するかもしれない。

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