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野菜摂取は胃がんリスク低下につながる

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 スウェーデンで、フルーツや野菜の摂取が胃がん予防に結び付くかどうか調査したところ、野菜の摂取は胃がんリスクの低下につながることが分かったそうです。

Fruit and Vegetable Consumption and Incidence of Gastric Cancer: A Prospective Study
Susanna C. Larsson, Leif Bergkvist and Alicja Wolk
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2006;15:1998-2001. Published online October 11, 2006
DOI:10.1158/1055-9965.EPI-06-0402

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 胃がんの原因の中心は食事因子にあると考えられ、カロチノイド・ビタミンC・葉酸・植物化学物質を豊富に含むフルーツや野菜は、胃がんのリスクとの関係で最も頻繁に調査されている。IARC(国際がん研究機関)の最近の報告では、フルーツをより多く摂取することはprobably*Ⅰ胃がんのリスクを下げることにつながり、野菜をより多く摂取することはpossibly*Ⅰリスクを下げるだろう、と結んでいる。

 しかしながら、これら疫学的なエビデンスは主に症例対照研究*2に基づくもので、リコールバイアス(思い出しバイアス)*3と選択バイアス*4の影響を排除しきれない。この研究で、フルーツや野菜の摂取と胃がんの発症についての関連を前向きに調査する。

●方法

(1)対象
 スウェーデン中央部の中高年男女における、がんや他の疾病に対する危険因子を調査するために形成された二つの集団によるコホート研究から、フルーツや野菜の摂取と胃がんとの関連を前向きに調査した。

 Swedish Mammography Cohort(スウェーデン・マンモグラフィー・コホート)は1987年から1990年の間に形成されたもので、1914年から1948年の間に生まれ、二つの県*5に住んでいるすべての女性を対象とした。1997年秋に実施した、飲食や他の生活様式に関する350項目からなる郵送アンケートに回答した者を追跡調査対象とした。Cohort of Swedish Men(スウェーデン男性コホート)は、1997年秋に始まり、1918年から1952年に生まれ、二つの県*5に住んでいるすべての男性を対象とした。1997年のSwedish Mammography Cohortと同内容の郵送によるアンケートの回答者を追跡調査対象とした。どちらのコホートにおいても、総エネルギー摂取量があり得ないような値を示している場合、住民登録番号に不備のある場合、1998年1月以前にがんの診断を受けた場合、追跡調査対象から除外した。

 その結果、36,664人の女性と45,338人の男性、合計対象数は、追跡調査開始時に45歳から83歳までの82,002人となった。2005年6月までがんの発症に関する追跡調査を行った。

(2)食事評価
 飲食に関する摂取調査は、96項目からなる食物摂取頻度調査票によって実施された。調査対象者は、過去1年間にそれぞれの項目について平均どの程度の頻度で摂取したかを質問された。頻度は、全く摂取しなかった、から1日に3回以上まで、8段階に分けられ、頻度から1日あたり或いは1週間あたりそれぞれのフルーツや野菜の平均摂取量が何人前*6になるかを換算した。フルーツと野菜を合わせた場合、それぞれ単独の場合を分析対象とし、野菜にはイモ類は含まず、フルーツにはオレンジジュースとグレープフルーツジュースを含めた。

 また、特定の野菜を次の五つの群に振り分けた。
1 青菜野菜(ほうれん草、レタス、緑色野菜サラダ)
2 キャベツ類(白キャベツ、赤キャベツ、白菜、カリフラワー、ブロッコリー、芽キャベツ)
3 根菜(にんじん、ビート)
4 果菜(トマト、トマトジュース、ピーマン)
5 玉ねぎ、ニラネギ、にんにく
食物摂取頻度調査票にある残りの二つ、グリーンピースと混合野菜は別々に調査された。

(3)飲食外要素の評価
 アンケートからは、教育水準・体重・身長・喫煙歴・運動・栄養サプリメントの使用・薬の服用・糖尿病の既往歴に関する情報が集められた。

(4)症例確認と追跡調査
 がん発症・死亡・移出入に関する追跡調査は、各人の住民登録番号に基づくコンピュータ入力記録とのリンクによって、国レベル・地方レベルでのがん登録、死亡登録、人別帳から情報を収集した。スウェーデンのがん登録は100%の信頼度がある。

(5)統計分析
 1998年1月から2005年6月30日までを追跡期間とした。フルーツと野菜合わせての摂取については1日あたり2.0人前未満・2.0~3.4人前・3.5~4.9人前・5.0人前以上に、フルーツと野菜別々では1日あたり1.0人前未満・1.0~1.4人前・1.5~2.4人前・2.5人前以上に、野菜の下位群は1週間あたり0.5人前未満、0.5~2.9人前、3.0人前以上に分類した。

 月単位での年齢と性別による補正、さらに教育水準・糖尿病の既往歴・喫煙・エネルギー摂取量・アルコール摂取量・加工肉摂取量により多変量補正を加えた。

 また、臨床前症状のための食生活変化によるバイアスを考慮し、初期段階での患者を取り除くために、追跡当初3年間を除外する補正も行った。

●結果

 平均7.2年間の追跡調査中、139件の胃がん症例(女性55件と男性84件)を確認した。フルーツと野菜を合わせての摂取量が最も少ない1日あたり2人前未満の男女と比較すると、より多く摂取している方が胃がんのリスクが低かったが、はっきりとした用量反応相関*7は見られなかった。

 結果は男女ともに同様で、フルーツと野菜を合わせて1日あたり5人前以上と2人前未満で比較すると、女性のハザード比*8は0.53(信頼区間95% 0.21~1.31)、男性は0.50(信頼区間95% 0.25~0.97)となった。フルーツ・野菜の摂取と胃がんリスクとの負の相関は、追跡期間の当初3年を除いた場合の方がより著しかった。

 野菜とフルーツを別々に検証すると、野菜の摂取は胃がんのリスクと負の相関にあったが、フルーツの摂取に関しては有意な関連は見られなかった。年齢や他の危険因子に補正を加えた後で、1日あたり2.5人前以上野菜を摂取した男女を1日あたり1人前未満と比較すると、胃がんの発症に関してのハザード比が0.56(信頼区間95% 0.34~0.93)であった。該当する女性のハザード比が0.56(信頼区間95% 0.22~1.40)、男性は0.54(信頼区間95% 0.29~0.98)であった。追跡期間当初3年を除外した場合、野菜摂取との負の相関はさらに強まった。

 野菜のサブグループ(小群)では、青菜野菜と根菜の摂取が、胃がんリスクと負の相関にあり、ハザード比は、1日あたり0.5人前未満摂取と比較すると、3人前以上摂取は、青菜野菜で0.64(信頼区間95% 0.42~0.99)、根菜で0.43(信頼区間95% 0.27~0.69)となった。

 フルーツの摂取に関してのハザード比は0.86(信頼区間95% 0.52~1.43)であった。ベリー類の摂取と胃がんリスクとには、有意とは言えないが負の相関が見られ、1週間あたり3人前以上摂取の男女と0.5人前未満摂取との比較では、ハザード比は0.69(信頼区間95% 0.39~1.23)となった。

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