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ここまで来たか、糖質カット。

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「糖質カット炊飯器」なるものをテレビショッピングで見かけました。「味ほぼ変わらない」「むしろこっちの方があっさりして美味しい」などといった試食コメントが紹介されていました。たしかに画期的な商品かもしれませんが、どうも個人的にはモヤモヤした気分です。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

糖質カット炊飯器.jpg
この炊飯器を作ったのは、サンコーという、秋葉原に本社を構える会社。ホームページによれば、「『面白いけど役に立つ』商品を輸入や自社開発して販売している」そうです。思わず笑ってしまう商品もちょくちょくありますが(USB花粉ブロッカーとか?)、「へえ」と思うもの多数で、個人的には応援したくなりました。
花粉ガード.png
しかし、「糖質カット炊飯器」は、やっぱり引っかかります。普通に炊くだけで、「糖質33%オフ」なんだそうですが、その仕組みはとてもシンプル。一度お米を湯通しして、そのお湯を捨て、水を入れ直して炊く。それを全自動でやってくれる、というものです。うーん、私にはどうしても、おいしさと栄養を3分の1捨ててしまうものとしか思えません。

たしかに、糖質の摂り過ぎが続けば、様々な経路で健康を害すことになります。

●カロリー過多となり、肥満を招く
●肥満がインスリン抵抗性をひき起こし、糖尿病、高血圧、脂質異常症や、認知症を招く
高血糖が血管を傷め、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中リスクを高める
老化物質AGEが、血管や皮膚、骨などを老化させる

しかし、糖質は当然ながら毒ではなく、適量なら問題ないどころか、むしろ大事なエネルギー源。脳の主なエネルギー源はブドウ糖ですし、タンパク質や脂質に比べて、糖は摂取後に速やかにエネルギーに置き換わります。(もちろん、この糖質カット炊飯器も、糖質はゼロでなく3分の2となるので、その意味では問題はありません)

でも、日本中の店頭で売られているお米は、農家の人が美味しさを追求して品種改良を重ねてきたものです。そのポイントは「甘み」と「粘り気」。どちらも糖質がもたらすものです。コシヒカリが支持され、日本一選ばれているのもそのためですし、近年では、それに追いつき追い越せと、強い甘みと粘り気を実現した新品種もどんどん出てきています。

その美味しさの要であり、大事な栄養素を、炊飯の時にわざわざ捨ててしまうなんて。色々な意味で納得できないのです。豊かな先進国の贅沢な悩みを、贅沢な方法で解決するもの、というイメージかも......。早い話、あまりにももったいない!

そのあたりは、まあ、価値観の問題でもあるのは分かっています。納得できないなら使わなければよいのであって、この商品に需要があるのも事実。美味しさや栄養を「捨ててしまう」なんて発想は大胆で、それを形にしてしまうのも、すごいとは思います。何より、糖質オフのブーム(?)もここまで来たか、と感じさせられました。

一つの救いは、捨てるべく集められた「甘味と栄養の詰まった水」を実際に「捨てる」作業は、自動でなく手動だという点。だったら、下水に流してしまわず、煮物などの料理に使えばよさそうです。摂取したら糖質オフにならないようにも見えますが、煮物を作る時に砂糖やみりんなどの糖分を加えるでしょうから、全体として糖質はオフになるはずです。

うん、ちょっと納得できたかな。購入者の皆さん、ぜひ"水"を捨てずに何か美味しく活用してくださいね!

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