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認知症リスクには食事構成が関係

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 日本の九州大学の研究チームが、福岡県の久山町の住民を対象に、食事構成と認知症リスクとの関連を調査しました。大豆および大豆製品・野菜・藻類・牛乳および乳製品の高摂取と米の低摂取が組み合わさると、認知症発症リスクが低下するとの結果が出ました。


Dietary patterns and risk of dementia in an elderly Japanese population: the Hisayama Study
Mio Ozawa, Toshiharu Ninomiya, Tomoyuki Ohara, Yasufumi Doi, Kazuhiro Uchida, Tomoko Shirota, Koji Yonemoto, Takanari Kitazono, and Yutaka Kiyohara
First published April 3, 2013, doi: 10.3945/ajcn.112.045575 Am J Clin Nutr May 2013 vol. 97 no. 5 1076-1082

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 知る限りにおいて、アジア人における食事構成と認知症リスクとの関連を評価した先行報告は存在しない。本研究グループでは、日本人の一般集団における、食事構成と認知症発症リスクとの潜在的関連を調査した。

 認知症ではない60~79歳の地域在住日本人1,006人が、中央値15年間の追跡調査を受けた。対象者の食事構成を効率的に測定するために、縮小ランク回帰が用いられた。特定の食事構成によって与えられる認知症発現に対する推定リスクが、比例ハザードモデルを用いて計算された。

 七つの食事構成が抽出され、これらのうち、食事構成1は、大豆および大豆製品・野菜・藻類・牛乳および乳製品の高摂取、および米の低摂取と相互関連があった。追跡調査期間中に、271人がいずれかの認知症を発現し、これらのうち、144人はアルツハイマー病で、88人は血管性認知症であった。潜在的交絡因子で補正を加えた後で、食事構成1に対する得点が最も高い四分位群を最も低い四分位群と比較すると、いずれかの認知症は0.66(信頼区間95% 0.46~0.95)、アルツハイマー病は0.65(信頼区間95% 0.40~1.06)、血管性認知症は0.45(信頼区間95% 0.22~0.91)、リスク低下となった。

 本研究結果は、大豆および大豆製品・野菜・藻類・牛乳および乳製品の高摂取、および米の低摂取によって特徴づけられる食事構成にこだわることが、日本人の一般集団における認知症リスクを低下させることと関連していることを示すものである。

●方法

(1)対象者
 久山町研究は、日本の九州、福岡県の大都市圏にある久山町で実施されている、集団ベースの前向きコホート研究である。研究は、1961年に、日本人の脳心血管系疾患の実態と危険因子を明らかにするために始まった。国勢調査と栄養調査からのデータは、久山町の人口の年齢・職業分布・栄養摂取量が、1961年から現在までの各年、全体として日本の人口のそれらとほぼ同一であることを示してきている。神経心理学的検査を含めた老齢者における認知機能障害と認知症の全調査は、1985年以来実施されてきている。1988年に、60~79歳の1,073人を対象に、食事調査を含めた本研究に対するスクリーニング検査が実施された。既に認知症を患っていた15人、血液標本のない1人、ベースライン時の食事調査票記入が完全ではなかった51人を除外し、男性443人、女性573人、合計1,007人が本研究に登録された。

(2)追跡調査
 対象者は、1988年12月から2005年11月まで追跡調査をされ、追跡調査期間中央値は15年となった。この期間中、1~2年ごとに健康診断が実施された。健診を受けなかったり、町から引っ越したりした対象者は、郵便または電話によって、健康情報を取集された。研究チーム・地域の医師・町の保健福祉事務所の中に日常監視システムも確立し、脳卒中・認知機能障害・認知症を含めた新たな事象確認を行った。追跡調査での認知機能スクリーニング調査は、神経心理学的検査・長谷川式認知症スケール・改訂版長谷川式簡易知能評価スケール・ミニメンタルステート検査を含み、1992年・1998年・2005年に実施された。認知機能障害を含め、新たな神経症状を有することが疑われた場合、対象者は、注意深く研究担当医と精神科医によって評価され、家族または主治医との面接、身体的・神経学的検査、カルテの調査を含め、包括的調査が行われた。さらに、対象者が死亡した場合、本研究グループでは、すべての入手可能な情報を調査し、死亡した対象者の主治医や家族に面接し、家族から検死解剖の許可を得ようとした。追跡調査期間中に、446人が亡くなり、73.1%にあたる326人が、検死解剖での脳検査を受けた。追跡調査から欠けた対象者はいなかった。

(3)認知症診断
 認知症の診断定義には、「精神障害の診断と統計の手引き-改訂第3版」の指針が用いられた。アルツハイマー病の患者定義には、「国立神経疾患・伝達障害研究所、および脳卒中/アルツハイマー疾患・関連疾病協会」の基準が用いられ、血管性認知症の診断決定には、National Institute of Neurological Disorders and Stroke-Association Internationale pour la Recherche et l'Enseignement en Neurosciences (NINDS‐AIREN)基準が用いられた。神経画像を含めた臨床情報が、認知症の可能性あり、および可能性大の亜型診断に用いられた。確定的な認知症の亜型は、検死解剖を受けた認知症対象者における、臨床的および神経病理的情報に基づいての決定もされた。確定的な血管性認知症の症例は、原因となる脳卒中または脳血管変化があり、認知症の形態以外に神経病理学的エビデンスがないことで確証された。認知症のいずれの症例も、脳卒中専門医および精神科医によって判断が下された。

 追跡調査期間中に、271の認知症発症例が見られた。これらのうち、47.2%にあたる128人は検死解剖を受け、114人はCTやMRIのような脳画像を用いて検査された。それ故に、認知症発症者全体の89.3%にあたる242人は、何らかの形態学的検査を受けたことになる。残りの29人は、臨床的特徴を用いて検査された。すべての認知症の症例中、19件のアルツハイマー病症例と15件の血管性認知症症例は、認知症の他の亜型を有しており、それらのうちで11件は、アルツハイマー病と血管性認知症の合併型であった。これらの症例は、それぞれの亜型分析での事象として数えられたため、最終的には、144人がアルツハイマー病、88人が血管性認知症、50人が認知症の他の亜型となった。

(4)栄養調査
 1988年のベースライン時スクリーニング検査において、食物摂取量に関する70項目からなる半定量的食物摂取頻度調査票を使用することで、食事調査が実施された。この質問票の有効性は、以前に報告されている。質問票は、前もって各参加者によって記入され、スクリーニング検査時に、訓練を受けた栄養士または栄養学者によって確認された。1日あたりの平均食物摂取量は、週単位の様々な食物の摂取頻度、およびそれぞれの食物量から算出された。栄養摂取量は、四訂日本食品標準成分表を用いて算出された。それぞれの栄養素は、栄養素密度法を用いて、エネルギー摂取量に調整された。

(5)危険因子測定
 ベースライン時に、各対象者は、病歴・抗糖尿病薬および抗高血圧薬治療・教育水準・喫煙習慣・身体活動にわたる自己記入式質問票への記入を行った。
1 脳卒中歴は、すべての入手可能な臨床的データに基づいて、24時間超持続する前から存在する非痙攣性の局所神経障害の突然発症として定義された。
2 教育水準は、7年未満の低水準・7~12年の中水準・13年以上の高水準の三つに分類された。
3 喫煙習慣は、現在喫煙しているか、いないかでの2分類とされた。
4 余暇時間における身体活動は、常に座っている・ウォーキングをする・週に1~2日運動またはスポーツをする・週に3日以上運動またはスポーツをする、の四つに分類された。
5 血圧は、5分間以上安静にした後に、座位で標準的水銀血圧計を用いて3回計測された。本研究分析には、3回の計測値の平均が用いられた。高血圧は、血圧値140/90mmHg以上、または現在降圧剤を使用していることと定義された。
6 身長と体重は、靴を履かず軽装にて測定され、BMI(kg/m²)が算出された。
7 糖尿病は、空腹時血糖値が7.0mmol/L以上、糖負荷後2時間血糖値または食後血糖値が11.1mmol/L以上、または現在インスリンないしは経口糖尿病薬を使用していることと定義された。

(6)統計分析
 認知症リスクと関連のある食事構成は、縮小ランク回帰(reduced rank regression=RRR)分析を用いて評価された。通常、食事構成分析は、地中海式食事法のような、既知の理想的な食事構成を必要とする仮説志向研究法、または目標集団に対して特定の食事構成を決定する主成分分析かによって実施される。これらの分析と対照的に、RRRは、何も既知の食事構成を必要とはせず、食事から対象関連疾患への経路について予報することを可能にする。RRRは、対象関連疾患に対する危険因子または予防因子として選択された栄養素の変動を可能な限り多く説明する食事群、すなわち食事構成の線形関数を明らかにする。その結果として、このモデルによって算出される食事構成得点は、対象関連疾患のリスクと関連しそうである。認知症予防に対する理想的な食事構成を評価するためには、RRRが最も適切な方法となり得たのである。本研究グループでは、以下の7栄養素を、認知症に対する危険因子または予防因子として選択した。
1 飽和脂肪酸
2 一価不飽和脂肪酸
3 多価不飽和脂肪酸
4 ビタミンC
5 カリウム
6 カルシウム
7 マグネシウム

 これらの栄養素は、認知症に対しての危険性または保護を与えることが知られているか、疑われているかしており、それらの摂取と認知症発現リスクに関する単変量解析において、P<0.2となった変数であった。これらの7栄養素の摂取に関連する食事構成は、19の食品群に基づいて導かれた。栄養素・食品群・引き出された食事構成得点における、ピアソンの相関係数が算出された。食事構成得点は、四分位に分類された。平均値における傾向が一般線形モデルによって、食事構成得点にわたる危険因子頻度がロジスティック回帰分析によって調べられた。年齢と性別で補正を加えた場合、または多変量補正の場合での、比例ハザードモデルを用いたハザード比と信頼区間95%を推定した。

●結果

(1)対象者特性
 全体的な研究集団の平均年齢は68歳で、女性が57%を占めた。糖尿病有病率は15.0%で、高血圧有病率は51.7%となった。全対象者中、23.7%に喫煙習慣があり、70.5%は余暇時間を座って過ごしていた。

 本研究対象者においては、七つの食事構成がRRRを用いて引き出された。これら七つの食事構成は、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸・ビタミンC・カリウム・カルシウム・マグネシウムという応答変数として選択された、7栄養素摂取での全体変動の87.1%を説明するに至った。食事構成1に対する得点が、応答変数の総変動の54.3%を占め、食事構成2~7に対する得点は、ほとんど変動を説明するには至らなかった。それ故に、本研究グループでは、食事構成1に対する得点を、本研究における目標食事構成として選択した。食事構成1に対する得点は、それぞれの栄養素摂取と高い相関にあり、すべての栄養素でピアソンの相関係数0.50超となった。

 19食品群の因子負荷量は食事構成1に対する得点と関連があった。因子負荷量は、食事構成1得点に対する、それぞれの食品群の寄与の大きさと方向を表している。正の因子負荷量値は、より高い食事構成1得点が、その食品群摂取増大と関連することを示したことになる。因子負荷量が0.2以上の食品群は、大豆および大豆製品・緑色野菜・その他の野菜・藻類・牛乳および乳製品であった一方で、因子負荷量が-0.2超となった食品は米であった。

 ベースライン時での、食事構成1得点による研究対象者の臨床的特徴を見ると、より高い食事構成1得点は、女性であり、より糖尿病を有し、喫煙習慣はより低いようであった。また、食事構成1得点が高くなるほど、血清総コレステロール値およびBMIの平均値は増大した。

 本研究グループでは、食事構成1得点の四分位によって、認知症およびその亜型発現に対する、ハザード比と信頼区間95%を推定した。それぞれ、以下の通りとなった。

1 いずれかの認知症(年齢および性別で補正)P=0.01
第1四分位 1.0(比較対象基準)
第2四分位 0.84(0.60~1.18)
第3四分位 0.70(0.50~0.99)
第4四分位 0.66(0.47~0.94)

2 いずれかの認知症(年齢・性別・教育水準・糖尿病・高血圧・総コレステロール値・脳卒中歴・BMI・喫煙習慣・運動・エネルギー摂取量での多変量補正)P=0.02
第1四分位 1.0(比較対象基準)
第2四分位 0.85(0.61~1.19)
第3四分位 0.72(0.50~1.02)
第4四分位 0.66(0.46~0.95)

3 アルツハイマー病(年齢および性別で補正)P=0.096
第1四分位 1.0(比較対象基準)
第2四分位 0.64(0.39~1.03)
第3四分位 0.70(0.44~1.11)
第4四分位 0.62(0.39~0.99)

4 アルツハイマー病(年齢・性別・教育水準・糖尿病・高血圧・総コレステロール値・脳卒中歴・BMI・喫煙習慣・運動・エネルギー摂取量での多変量補正)P=0.17
第1四分位 1.0(比較対象基準)
第2四分位 0.64(0.39~1.04)
第3四分位 0.74(0.46~1.18)
第4四分位 0.65(0.40~1.06)

5 血管性認知症(年齢および性別で補正)P=0.02
第1四分位 1.0(比較対象基準)
第2四分位 0.93(0.54~1.60)
第3四分位 0.72(0.40~1.29)
第4四分位 0.48(0.24~0.93)

6 血管性認知症(年齢・性別・教育水準・糖尿病・高血圧・総コレステロール値・脳卒中歴・BMI・喫煙習慣・運動・エネルギー摂取量での多変量補正)P=0.02
第1四分位 1.0(比較対象基準)
第2四分位 0.97(0.56~1.68)
第3四分位 0.74(0.41~1.34)
第4四分位 0.45(0.22~0.91)

 食事構成1得点の最低四分位群との比較において、最高四分位群では、いずれかの認知症に対するリスクが3分の2に低下した。認知症の亜型に関しては、食事構成1得点の最高四分位群では、最低四分位群との比較において、アルツハイマー病でも血管性認知症でも、より低いリスクとなった。食事構成1得点と血管性認知症リスクとの間には、P=0.02という有意な線形関係が見られたが、アルツハイマー病との間ではP=0.17となり、有意な線形関係とはならなかった。参考として挙げると、食事構成2~7と認知症との間には、有意な関係を示すエビデンスは存在しなかった。

 最後に、本研究グループでは、糖尿病を抱える人が治療によって食事習慣を変更しやすいことから、糖尿病状況で層分けした感度分析を実施した。結果としては、いずれかの認知症および認知症亜型の多変量補正ハザード比は、糖尿病のない人においては、より高い食事構成1得点とともに線形に減少し、P<0.01と有意な結果となったが、糖尿病を有する人ではそのような結果とはならなかった。

●考察

 本研究は、日本人の一般的老齢集団において、認知症リスクがより低くなることと関連のある食事構成を識別した。この食事構成は、大豆および大豆製品・野菜・藻類・牛乳および乳製品の高摂取、および米の低摂取によって特徴づけられ、習慣的な日本の食事に概ね一致している。本研究結果は、一般的な日本人集団における、生活様式変更を通じての認知症予防戦略の確立に対して、価値ある情報を提供すると期待される。

 本研究では、米の摂取と食事構成1との間における負の相関が見られた。米は、日本の日々の食事の大部分を構成する要素であり、この負の相関関係は、米そのものの悪影響というよりは、米の高摂取が、認知症予防に好ましい食品の摂取をより低くすることになるかもしれないという、食品摂取における不均衡から生じているのかもしれない。それ故に、本研究結果が、米の摂取をやめることそれ自体が認知症に対して何か効果のあることを意味する、と受け取られてはならず、多くの栄養食品による釣り合いの取れた食事が、認知症リスク低下に対して推奨されることを強調するかもしれないということである。

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