全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

肥満予防に大事なのは、「だらだら食べ」などではない。むしろ逆!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『だらだら食べ』が肥満予防に? 九大研究」という報道がありました。タイトルからして、ちょっと違和感ありますよね? 「だらだら食べる」ことが、推奨されているなんて、どうにも納得がいきません。元の論文を読んでみたら、疑問は確信に変わりました。

堀米香奈子 ロハス・メディカル

まずタイトルを見て最初に思ったのは、「あれ? だらだらと食べ続けていたら、肥満につながるんじゃないの? 規則正しく決まった時間に3食とって、食事と食事の間には何も食べない方が、血糖値もきちんと下がり、インスリンの分泌も押さえられて、肥満予防になるでしょ」ということでした。

インスリンは、体にエネルギーを取り込むために分泌されるホルモン。血中に糖や脂肪がたくさんあると、インスリンが分泌されて体に取り込まれ、そこで使われたり蓄えられたりします。だから大量の糖分を一気に摂って血糖値を急上昇させたり、あるいは"だらだら"といつまでも食べ続けたりすれば、インスリンをドバドバ出させることになり、過剰に取り込まれたエネルギーは脂肪として体に蓄えられることになるのです。

なのに、「だらだら」食べで肥満予防とはどういうこと?

いぶかしく思いながら記事を読んでみると、どうやら問題は「だらだら」という表現の仕方にありました。
九大の研究チームは論文で、食事の速度は肥満や体格指数(BMI)の値、腹囲に影響すると指摘し、「食べる速度を遅くすることを目的とした治療介入は、肥満予防や肥満関連の健康リスクの低減に効果的とみられる」と結論づけた。
つまり、あくまで一定量を食べきるまでのスピードの話。いつまでも行儀悪く、延々と食べ続けるわけではなかったのです(それは、かつて友人と行ったケーキ食べ放題の戦略でした。恐ろしく健康にも悪いですね)。

だったら、「だらだら」という表現はちょっと違うのでは? ゆっくり食べることは、決して「だらだら」食べることではないですよね。そもそも記事中でも、「だらだら」なんていう表現はどこにも使われていないのです。

あるいは論文で、「だらだら」を意図するような表現が使われていたのでしょうか?

確認すべく、元になった九州大の研究チームの論文を探して読んでみました(こちら)。

すると、まず論文のタイトル(以下、和訳は全て私によるもの)は、
「糖尿病患者における食べるスピードの変化が肥満に与える影響:健康診断データの横断的二次的解析」

とあります。ここでようやく私は、「あら? これって糖尿病患者の話だったの」と気づいたのでした。中身を読んでみても、分析の対象は、2型糖尿病患者のデータだけだと分かります。実は、そのことは冒頭の記事にも、「研究チームは、肥満などがきっかけで主に成人期に発症する2型糖尿病と診断された患者ら5万9717人の医療保険データを分析」とちゃんと書いてあります。後半に出てくるこの一節だけなので、ともすると読み飛ばしがちですが......。

そして、筆者たちは「考察」の終段で、

この研究では(中略)、食習慣の変化と肥満、BMI(肥満指数)、そしてウエスト周りの長さには強い相関があることを示した。これらの分析結果は、食べる速度を落とし、就寝2時間前以降に夕食をとる回数を減らし、夕食後の間食を減らし、朝食を毎日とることが、減量の助けになると示唆している。

とし、最終的な「結論」としては
食習慣の変化が、肥満やBMI、ウエスト周りの長さに影響を与えうる。食べる速度を落とす教育構想やプログラムなど、食習慣を変えるための介入は、肥満予防や非感染性の疾患リスク低下に役立つかもしれない。

とまとめています。

というわけで、論文でも一切「だらだら」食べることを推奨してはいません。むしろ「食習慣を変えるための教育」が大事だとしています。食べる速度の問題はその一例として挙げられているだけなのです。2型糖尿病は食べ過ぎ運動不足から来る生活習慣病の典型とも言えますから、食習慣に問題がある人が多いのは想像に難くありません。教育によって導かれる「食習慣の変化」とはあくまで改善のことで、それを「だらだら食べ」というのは、ちょっと飛躍があり過ぎますよね。

記事では、ちょっと引っかかりのあるタイトルで、読者を引き付けようということだったのかもしれません。でも、タイトルのインパクトが強ければ、読み手に先入観を与え、読んでいてもそれに引きずられがちになります。

残念ながら、そうした「キャッチーだけど誤解を招くようなタイトル」の記事は、最近ますます増えているように見えます。「ちゃんと読めば正しいことが書いてある。タイトルだけ見て、中身を飛ばし読みする方が悪い」という考え方もあるのかもしれませんが、とっても不親切です。

今回の確認作業を通じて、自分自身も気をつけねばと肝に銘じたのでした。

ちなみに、肥満予防については以下の記事もぜひ参考にしてみてくださいね。
●肥満予防には ジム通いより掃除 (ロハス・メディカル2014年3月号)

  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
  • Google+
  • 首都圏・関西でおなじみ医療と健康のフリーマガジン ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索