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ワンストップ相談サービス付き高齢者住宅「フローレンスガーデンハイツ」の今

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交流1.jpg書籍「地域包括ケアの課題と未来」で取り上げられた、千葉県の亀田総合病院グループが取り組むワンストップ相談サービス付きの看護学生寮併設高齢者住宅「フローレンスガーデンハイツ」。担当者に現在の状況を聞いた。


ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵
 
 

■フローレンスガーデンハイツ~見守りシステム、バリアフリー設計、家具完備

現在5人の高齢者が入居しているフローレンスガーデンガーデンハイツは、独居の高齢者が抱える孤独感や様々な不安・悩みを解消するために考え出された斬新な取り組みだ。千葉県館山市にある安房医療福祉専門学校の看護学生寮「フローレンスガーデン」の1階部分13室を高齢者向けアパートとして改築。間取りは約20平方メートルのワンルーム、約6畳のフローリングにバス・暖房洗浄便座付きトイレ・IHキッチン、浴室暖房、乾燥機、ベッドや収納家具などを完備し、バリアフリー設計でスプリンクラーもついている。室内で一定時間動きがない場合に通報されるセンサーも設置。窓側から車いすやベッドでも出入りできるようバルコニーを低く改修しスロープを併設した。

多目的室や屋外にあるガーデンは、新入生歓迎会、夕涼み会やクリスマス会と年に3回の交流イベントでも使用し学生との交流を育んでいる。また、入居者は学生の招待を受けて、秋の学園祭にも訪れている。

費用は入居金30万円のほか、月々家賃5万円(家具、電化製品、高熱水道費、共益費込み)とワンストップ相談サービス費2万円。

交流2.jpg■あらゆる相談を一人が受け付ける「ワンストップ相談」
詳細は書籍をご覧いただきたいが、フローレンスガーデンハイツの大きな目玉が亀田メディカルグループの社会福祉法人太陽会のソーシャルワーカーによるワンストップ相談(ロハス・メディカル2015年2月号「タテ割りの福祉から脱却 有償ワンストップ相談を」参照)。入居者全員に担当の相談員が付き、日常生活の困りごとのほか、財産管理、看取りや家族に関することなど様々な相談に乗っている。入居開始後、実際に受けた相談は以下の内容など。

<ワンストップ相談で受けた内容>
  • ・家電の使い方
  • ・電球の交換
  • ・介護保険の認定調査への立ち会い
  • ・通院に関して
  • ・ごみの出し方
  • ・運転免許証の返納について
  • ・補聴器の使い方
  • ・市から来た書類の相談
  • ・悪徳業者からの電話の相談
  • ・終活(着物の整理、エンディングノ‐トの相談)
  • ・部屋でできる体操
  • ・資金、財産管理
  • ・フローレンスでの生活が難しくなった時の行き先(介護施設等)
  • ・学生や隣近所(同じ入居者の方)との付き合い方等

*ちょっとした相談から人付き合い、人生のしまい方など多岐にわたる。

フローレンスガーデンハイツに関わる作業療法士の大瀬律子さんは、
「入居者は70歳代後半から80歳代の方。自分らしい生き方を貫きながら、今まで大切にしてきた着物の処分や財産分与、エンディングノートの作製、今後の住まいの場所等、皆それぞれの形で少しずつ人生の終わり方についても考え、相談し始めています。私たちスタッフは、入居者の主体性を邪魔せず、先々のことも安心してもらえるよう、陰ながらサポートを続けていきます。入居者の方には、『自由でいつも見守ってもらえる』『看護学生と高齢者の自然な共生』というコンセプトを気に入ってもらえていると思っていますし、皆さんのお話を伺っていると、将来への不安や寂しさ、孤独感の解消へのお手伝いができていると感じているので、このフローレンスガーデンハイツの狙いは良かったと感じています。このような考え方が少しずつ浸透し、各地域のふさわしい形で応用、展開されたら嬉しいと思います」
と話す。


以下は、大瀬さんたちが入居者や学生に話を聞いた感想など。

<入居者の話> 交流3.jpgエピソード1 ある方は、課題や試験で遅くまで勉強を頑張っている学生にちょっとした差し入れをしてあげるのが楽しいようです。高齢になっても、自らの色々な経験や知識を若い人たちに教えてあげることができるとおっしゃっていました。一方で、その方が居室内で転んで骨折をした際、学生がかけつけてとっさに対応してくれたことに感謝し、最初に知り合った学生が無事看護師となり、自分がその病院に受診した時に院内で会うと懐かしく声をかけてくれることが嬉しいとおっしゃっていました。人はいくつになっても人の役にたちたい、人の応援をしたいという感情をもちあわせ、それができるということの大切さをこの方から学んでいます。

エピソード2
ある方の入居のきっかけはフローレンスハイツの新聞記事でした。その記事をみてその方は「わたしにぴったりだわ!」って思ったそうです。親戚に相談したら、他の高齢者施設を検討するように言われたようですが「いいえ、私はここが良いの」と主張し、結果的には親戚も説得して入居を決められました。自由な生活だけは手放せなかったそうです。その方は腰が曲がり難聴もありますが、近くの店までシルバーカーを使って歩いて好きなお花を買いに行き、いつも見事に活けています。また、毎日健康維持のためにタオル体操を行い、新聞に目を通し色々な情報通でおられます。その方と話をする時には「年より扱いしないで、、、」という自尊心をとても感じます。ご高齢になっても、自分の望む自由な生活や自立した大人としての対応を望んでおられるのだと感じています。

●入居の決めては?
・一人暮らしが不安になる一方で自由な生活が手放せなかった
・年をとり(70代後半)病院に通院していて一人暮らしというだけで普通のアパートでの契約を断られた
・学生との生活がとても魅力的に感じた
・家との距離をおきたかった

●入居後の感想

・朝登校する学生に「行ってらっしゃい」の挨拶をすることの嬉しさ、励み
・部屋に遊びに来てくれたり、文化祭に直接誘って学内を案内してくれたりする仲良しになった学生さんの存在
・室内で転倒して骨折をした時の仲間の助けと学生のとっさの対応への感謝
・看護学校の勉強は大変、試験や国家試験の前は遅くまで勉強しているので、さりげない差し入れや応援したい気持ち
・防災訓練の時、部屋に来てくれたり、一緒に付き添ってくれたりする安心感
・学生を卒業してすでに看護学生になった方もいる。病院に受診して会うと懐かしく声をかけてくれる
・私達高齢者も学生に対してできることがある
・ここには他の高齢者住宅にはない自由がある。放っておいてくれるけど、見守っていてくれる。困ったことがあればいつでも相談にのってくれるのがありがたい。

<看護学生の話>
交流4.jpg●感想

・交流イベントがあるのは仲良くなるきっかけになる
・交流といっても、「挨拶する」「ただいま」「おかえりなさい」との挨拶程度の学生も多い
・病院実習で高齢者と何を話していいか最初はわからなかったし、地元でないから房州弁がわからなかったけど、ここで話すことで少し解決できた気もする
・高齢者と同じ敷地で暮らすことは特別なことではなく、ごくあたりまえの日常である
・多目的室に差し入れを持ってきてくれる人もいる
・入居者からの応援は「看護師の国家試験に合格しなきゃ!」といい意味で励みになる

●エピソード
学生の中には特定の高齢者と仲良くしている方もいますが、すべての学生がそうではありません。学生からは、交流イベントは高齢者と仲良くなるきっかけになる。交流といっても、「挨拶する」「ただいま」「おかえりなさい」程度だけど、もっと入居者の方を知りたいし、何かあったら手を貸してあげたい気持ちはある。という意見は多いです。病院実習では最初、高齢の患者さんと何を話していいかわからなかったし、地元でないからここの方言がわからなかった。でも、課題や試験のために多目的室で勉強していると、差し入れを持ってきて応援してくれる方もいる。入居者からの応援は「看護師の国家試験に合格しなきゃ!」といい意味で励みになる。ここで生活していると、高齢者と同じ敷地で暮らすことは特別なことではなくごく当たり前の日常であると思えてくるし、普段、挨拶だけでもしていると、実習の時とかで患者さんと話す時に緊張しなくなってきたように思える。等の意見も聞かれます。今後看護師として働く以前に、高齢者と同じ敷地で生活することで、人として当たり前の対応を自然と学んでいる学生も多いのではないかと感じています。


交流5.jpg

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